第308話 雨……
なんだか温もりを感じて目が覚めた。周りを見ると年少組の娘たちが俺に張り付いて寝ていた。こりゃ温もりも感じるわけだよな……むしろ熱いね。これだけ団子みたいにくっついているとね。
とりあえず年少組を起こさないように、ソローリとどかして団子の中から抜け出す。みんなに抱き着かれていたからか、身動きが取れなくてすこし体がバキバキ言ってるよ。他の妻たちがどこにいるのか探そうとするが、食堂用の天幕から声が聞こえているからそっちにいるのだろう。
「あっ、ご主人様。起きてこられたんですね。おそらく二時間くらい眠っておられたと思いますよ。年少組も一緒に寝てましたけど、邪魔しませんでしたか?」
「あーベッドにもぐってきたことにも気付かないくらい寝てたよ。昔は少しでも体を触られたら目が覚めるくらい、眠りが浅いというかすぐ目が覚めたのにな。ここ最近は寝てる時に何されても気付かない気がする……」
「それは私たちにとってうれしい事ですね。それだけ受け入れられている証拠ってことですし。雨のうえ、ディストピアにいないのですることが無くて少し困ってたので、みんなでジ〇リの映画を見ていました。
絵を見て古い映画だとわかるのですが、何か引き込まれる魅力があしましたね。最後の方に出てきたビームを吐く魔物が実際にこっちにいたら倒せないですね。ワームも恐らくはがたたないのではないでしょうか?」
「映画に出てきてる怪物と戦闘を想定するのか。何というかこの世界の人間らしい発想だよね。向こうの世界では天地がひっくり返っても現れる事のないサイズの化け物だから、戦うと想定する事すらほとんどないしな」
映画の話や小説の話をしていると、目をこすって起きてきた年少組たちがお腹すいたと口々に言っていたので、年長組からは苦笑する声も聞こえてきてお昼の準備になった。一応明け方の夜番で朝食と昼食を作っているのでそこまで時間がかかるものではないが、なぜかみんなで準備することになった。
簡単に食べられるものという事で、パン系のものと米が多い。DPを使っていないのにパンの量が減らないのはどうしてかと思ったが、昼食が終わって外の様子を見た時に納得した。キッチン馬車が存在感を出して近くに居座っていたのだ。
ってことは小麦粉は大量に持ち込んでるんだろうな。
まぁパンという事で今日の昼食はわかるだろうが、パンに何かを挟んだものだ。ガッツリいきたいメンバーにはハンバーグやカツを挟んだボリューミーなもの、さっぱり食べたいメンバーには道中に購入した新鮮な野菜をたっぷり挟んだサンドイッチなどがある。
変わり種と言っていいのか、ホットドックやカレーパン等も用意している。飲み物はコーンポタージュだった。余は満足じゃ!
昼食が終わっても雨はやんでおらず、今日は本当に全く移動できない日になってしまったな。他の冒険者達はこういう風になったらどうしてるんだろう?
ミリーやカエデに聞いてもわかるわけもなく気になったので、ディストピアに連絡を取るついでにシングルの冒険者だった獣人たちに質問してみようという事になった。
その結果わかった事は、シングルと言わずCランク位からは報酬が高くなってくるので、一日二日の足止めは気にならないようだ。急ぎのクエストも多いが基本は、クエストの期限が長くなっているそうだ。
それに対してDランクより下のクエストは、期間が短いものが多かったり期間が無いが報酬が少なかったりするため、日銭とは言わないがお金を切り詰めていることもあり、雨の日も多少無理をしてクエストを進めるそうだ。
雨が降っていれば低ランクの魔物がいる場所も限られてくるので、むしろ稼ぎ時といってもいいかもしれないと言っていた。
ついでに聞いたディストピアの様子はすこぶる平常運転だったそうだ。どこからか俺がディストピアにいない事を聞きつけた帝国や王国、教皇にお灸をすえたばかりの聖国からも数人の貴族があらわれて、砦やミューズ、グレッグを自分の所へ引き抜こうとしていたらしい。
まぁ向こうにディストピアと切れても得するだけのものが提示できるなら、そっちについても構わないがそう判断する人間は皆無であろう。
取り込もうとしていた奴らは、街の資産を目当てにしているのだから、得するものを提示できるはずもないのだ。その大半が俺か俺に付随する組織の資産になるので、取り込めたところで大したお金が残るわけでもないのだけどね。
それ以上に街に住んでいる人間が、不便になると反乱を起こす可能性の方が高いと、グリエルが笑って言っていた。
受けた報告を妻たちにしていると、獣人たちの話を聞いて何かを納得している様子がみられた。
確かにわかりやすい理屈ではあるんだけど、苦労した期間が無いため納得できても、本気で理解ができているわけでは無いようだった。過保護と言えるほどの強化をしてたもんな~お金に関してはDPで出してたし苦労はさせてないもんな。
ディストピアの報告をしていると、ピーチから少しイラっとした雰囲気が伝わってきた。おそらく俺の街にちょっかいかけたやつらを、どう調理してくれようといった感じだろう、ブラックピーチが何かを計算している時の表情だ。
することがなくなり、いつもみたいに映画鑑賞の流れになっていたのだが、年少組が体を動かしたいという訴えがあった。
少し悩んだピーチは雨天の戦闘訓練をしたことが無かったという事で、まずは素手による格闘戦の模擬試合でもしようという流れになる。その後は、木剣等を使った模擬試合、最後に三対三くらいで行う集団戦の模擬試合を行う流れだ。
柵で囲われているエリアから出て少し離れた場所に移動していく。待機している人間が濡れないように運動会で見るような壁のないテントを準備する。俺も雨天の戦闘訓練ってしたことないから参加する予定だ。
まぁ雨が降っているという事で地面のコンディションは最悪だな。ぬかるんでいる所もあれば、地面が固くなっている所もありさらには水溜まりまで存在しているのだ。
みんながストレッチを始め、先ほどとは違う少しピリピリした様子になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます