第307話 二日目

 夜の間近づいてくるものは何もおらず、緊張感のない夜番が終わった。俺の夜番は初日の最後、明け方の時間の見張りだ。


 朝食も終わり天幕の片づけを行っている。今まで何度も出てきている天幕だが、少し珍しい形をしている。


 中心には支柱はなく中心から二メートル程離れた位置に正方形に支柱が存在しており、四本の支柱から各支柱の延長上……九十度の扇状に伸びて外周の壁になる位置にはにも支柱を立て、壁としている。


 その支柱からテントのようにロープで引っ張って、反対側をペグのようなもので地面に埋め込んでピーンとはっている。


 解体は建てるのよりかなり時間が短くなっている。テントの場合は意外に袋に詰めるのに時間がかかって、片づけるのも予定より時間がかかる事が多いが、収納の鞄にしまっていくのでかなりスピーディーに終わるのだ。


「片付け終わったの~ご主人様、出発できます」


 シェリル・イリア・ネルの三幼女組が片づけ終わったのを報告しに来る。終わったのは見てれば分かるんだけど、こういったところが可愛い奴らなのだ。しかもどこで覚えたのか、敬礼をしている所がさらに微笑ましくて可愛いのう。何となく三人に合わせてみた。


「報告ご苦労! 残りのメンバーを集めて来てくれ!」


 合わせた事を思ったより喜んでくれてよかった。しばらくすると全員が集まってきた。


 三幼女とは呼んでいるけど、十歳過ぎたんじゃなかったっけ? 幼女の定義ってどんなんだっけ? そもそも、元々呼んでいた七から八歳って幼女か? それにしても妻の歳を把握できてないとか、俺って最低だな。


 誕生日と呼べるものは、俺とみんなが出会った日に行っていて、今までに三回やっているので10歳過ぎたくらいだと思うんだよな。年相応なのかちょっと子供っぽいのか判断しにくい行動だが、普段のメイドのような生活をしている時は、しっかりしているのだからバランスがとれているのかな?


「みんないつもありがとね、何にもしない感じがいまだに慣れないけどね。じゃぁ二日目の探検に出発しようか」


 準備の終わったみんなを見ると、相変わらず森の中を進軍している人たちの装備ではない。


 ある程度食材は魔物を狩ったり、野生のものを採取すれば何とかなるが、テント無しで行軍するのはかなりの無理があるので、最低限の装備としてテントがあるのだが妻たちの装備からはそれを背負ってないから、普通の人たちが見たら異常な光景だろう。


「ご主人様、ここの柵はどうしますか?」


 ん? どうしますかってどういうことだ? もしかして壊していくつもりとか?


「んーそのままでいいんじゃないか? どうせ帰りも使う可能性あるかもしれないし、俺たち以外の誰かが利用できることも少ないだろうからいいんじゃね? 木の上で生活してる魔物なら、ここに住み着くことはない気がするから放置で行こう」


 話が決まったので出発することになった。二日目の道中は昨日より大分魔物の襲撃が少ない印象だ。


 ただ一回の襲撃に来る魔物の強さが上がっている。そりゃ奥に行けば強くなるのは当たり前か。昨日がFランクに対して、今日はDランク位だろうか? 見た事ないというか知識に無い魔物なので、強さが図り辛い。


 今日は昆虫系の魔物が多かった。見た目がとてもキショかったです。多分他の小説とかでは、ジャイアントセンチピートとか呼ばれる巨大ムカデ、約三メートル位の直視しづらい魔物だった。でも魔物を倒すとドロップ品になる仕様が初めて嬉しかった敵である。


 そういえば、ディストピアのダンジョンにいる蜘蛛とは別の種類のものだったらしく、ドロップした品が色付きのスパイダーシルクだったのだ。珍しい素材だったので少し集めたくなった俺は、近くにいた蜘蛛を狩ってみて気付いたことがある。


 クモのお腹の毛の中心の色と同じ色をドロップするようで、同じ色のスパイダーシルクを集めるのが難しかったので途中で倒すのをやめた。けど、DPで召喚できる魔物にレインボースパイダーがいたのでガッツポーズをしてしまった。


 でもさ落とすスパイダーシルクって確認できているだけでも、白、黒、赤、青、紫、黄色、緑、茶色、灰色の九色はドロップしてるんだよね。


 レインボーっていうと虹、虹っていうと七色っていうイメージだったから少し首をかしげてしまった。召喚するDPの量からして、Dランク上位あたりの魔物だと思う。普通の蜘蛛がE上位からD下位の強さなので、一応上位種となるのだろうか? この森に来てよかった!


 その後は魔物の強さも大きく変わる様子もなくのんびりと行軍していく。例のごとく陽が落ち始めてから野営の設営が開始され、昨日と全く同じ流れで柵と天幕が準備されていく。


 今日はキャンプといえばバーベキューという事で、途中で倒した魔物からドロップした肉も使ってのバーベキュー大会になった。外でやるとにおいの管理が大変なので、天幕の中でやる事になった。


 天幕に使っている布には、しっかりと汚れ防止と撥水のエンチャントを付与している。多分ゲームだったら何でこんな使えないエンチャントなんてあるんだろうな? とか思っただろうな。実際こういう世界に来なければ、ここまで便利な物だとは理解できなかっただろう。


 夕食も終わってのんびりしていると、牛乳で煮出してくれた紅茶を持ってきてくれた。普通の紅茶と違ってミルクの味の濃い紅茶だ。個人的にはこれもかなり好きな部類に入るのだ。


 一度シルキーたちに作らせて飲んだ時に美味しかったので、たまに作ってもらっているのを妻の誰かが知っていたのだろう。寝る前にみんなで飲んで、夜番の人間はそのまま周囲の警戒に当たって、休憩するメンバーはのんびりと天幕で過ごすことになった。


 初日と変わらず何も起こらずに夜が明けた。ただ夜が明けて問題が起きた。明るくなってきたと思ったら、突然の大雨が降ってきたのだ。


 雨は予想しておらず、地面を固く固めてしまっていたので水はけが異様に悪かった。なので中心をすこし盛り上げるように土魔法をかける。水はけは木に穴をあけてそっから水が出ていくように処置をとった。


 でも大雨になったので行動するのがめんどくさいという事になり、森突入三日目は移動することをやめた。今日も夜明けの夜番だったので少し眠かった。朝食をとってから昼くらいまで寝る事をみんなに告げて寝る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る