第305話 突入開始

 森の周辺は一応樹海と一緒で中立都市と言われてはいるが、実質聖国の属国……国ではないので、属都市っていう事になるのだろうか?


 見える範囲の木々たちを見渡してみるが、樹海よりは獣道の森に近い感じを受ける。魔物の領域の森は日本で言うところの森とはちょっと違うのだ。簡単な話森にはえている木の大きさが違うのだ。


 色々な木の高さもあるが、大きい物になると三十メートル程の高さになる木もたくさんあるため、日本の森とは比べ物にならないくらい巨大に感じるのだ。どうやってそこまで高くなったのか理解はできないが、そういう物だと思うようにした。


 見ていても仕方がないので、


「みんな、見てるだけじゃ何も話が進まないから準備しよっか。まずは食事をしよっか。食事を準備する人以外は装備の確認からするように! もちろん戦闘メイド服じゃない普通の方を着てくれよ」


 ちょっと残念そうな顔をする妻たちがいたが黙殺して、自分たちにあった装備をみんなで生産スキルを上げて作っているのだから、しっかり使ってあげないと装備達がかわいそうだ!


 みんなの装備が整って武器も大型の物を使っていない妻は、全員腰付近に鞘などを準備しいつでも臨戦態勢になる事ができる状態だ。


 収納の腕輪があれば任意で装備を取り出せるので、ほとんどタイムラグは無いのだが、それでも装備をしまっていないのは取り出してからふるより、出ているのを持ってからふる方がほんの少しだが早いようだ。


 それに対して大型の武器の場合は、武器を構えるのに時間がかかるため構えた状態で、取り出してふったほうが早いそうだ。


 ちなみに今日の俺は片手直剣の二刀流だ。某ダイブ型ゲームが突如デスゲームとしてログアウトをできなくなった、あの小説の主人公を真似て片手が黒、もう片手が薄い青っぽい片手直剣だ。ちなみにコートも黒にして装備だけ、黒の剣士を再現している。俺の外見については触れないでくれ!


「食事も終わったし、全員準備できたかな? 若干名準備しなくても大丈夫な奴らもいるけどな。じゃぁ基本的には歩いた道しか掌握しないから、どこにどんな敵がいるっていうのは全員で気配を探るんだぞ!」


 俺の『準備しなくても大丈夫な奴ら』という言葉に反応して、意味に気付いた従魔たちから盛大に、ブーイングという名の体当たりをくらっていた。スライムたちよ、いちいちぶつかる瞬間に体を固くしないでくれ、普通に痛いから!


 やっぱりここは男の俺が先頭で歩くべきだよな、っておい! 俺が歩き出す前にピーチの指示のもと先頭にシュリを置いて、シュリを頂点にリリーとシャルロットを三角形の頂点に置き、シュリとの間にメルフィとサーシャが配置される。


 タンク組が陣形の前面に配置される。殿にアリスが配置され、後衛職は陣形の中心に入り前衛職はタンクがいない後方やタンクの後方に控えている形だ。斥候やシーフは各自パーティーから離れずに索敵を行っている。


 見事に俺のいる位置がなくなった。いや正確にはいる場所を強制的に一番安全な場所に押し込められてしまった。せっかく二刀流にしたのに使う機会がなくなったので、久しぶりの出番となるP90をベースとしたピースを取り出した。


 進んでいくが俺の索敵の半分ほどの距離に斥候のみんながいるので俺って本当に役立たずなんだよな。嫁達も色々会話をしているがしっかりと索敵しているあたり、伊達にダンジョンに潜っているわけじゃないなと思う。自分たちの作ったダンジョンだけどな。


 散発的に魔物が襲ってくるがまだ森に入って浅いので強い魔物は出ないのだが、今までの森とは大分印象が違う。樹海も場所によってある程度魔物の分布が決まっているのだが、この森はどこの森とも樹海とも違うのだ。


 今さっきは獣系の魔物だと思ったら、急に亜人系の魔物が出て次に植物系が出たかと思えばまた獣系、ある程度固まって系統別にまとまっていた亜人の森や獣道の森とは違い、いる敵の種類が複数の上に共通点がほとんどない魔物が入り乱れているのだ。


 先ほど面白いというか珍しい魔物に遭遇した。この世界に来てDPで生み出したかニコから分裂したスライムしか見た事なかったが、はじめて野生のスライムに遭遇したのだ。ただ粘液系のスライムでがっかりしたけど、色が紫という希少種だったのは高評価だ!


 ただ基本的にこの世界のスライムは他の魔物に見向きもされず、冒険者も倒すのに装備が痛むので敬遠される魔物なのだ。それをいいことに、近くの動物や草や木等を食べてのんびり生活している。


 他にも土や石は食べないのだが、金属や生物由来の物は普通に溶かしてくるので迷惑な敵なのである。ちなみに魔物のランクとしてはFだ。


 ピースを持っているので、やっぱり撃ちたくなるのが人の心理だよね? 木の上にいるサル系の魔物にこっそりと標準を定めてパパパンッと三発ほど撃ち込んでみた。銃声はほとんどしないけど、雰囲気で銃声をつけてみました。風魔法付与で距離や速度だけではなく、音速を超える音もほとんどない。


 狙っているつもりだったが距離が五〇〇メートルも離れると、さすがに弾が五キロメートル直進する銃でも命中はしなかった。スキルによる補正があってもスコープなしでは、さすがに素人にはなかなか充てられる距離ではないな。


 そう考えると鬼崎深弥は弓で、五〇〇メートルの距離を狙い撃ったのは恐ろしい技量だな。


 不意に銃を撃ったためにピーチに注意されてしまった。『不用意に銃は打たないでください! いくら周りの敵が弱いとはいえ、魔物を引き寄せるかもしれないんですから! ピースは没収します』といって俺の銃を取りあげられてしまった。後で返してね。


 本格的にする事がなくなってしまい手持ち無沙汰になったので、ピーチに俺も戦闘に参加したいと訴えたら、思いの他すんなりと戦闘できる位置に配置してくれた。ちなみに配置された場所はシュリの後ろだ。


 あれ? これって戦闘できなくね? シュリがひきつけるだけ引き付けてくれれば何とかなるけど、サーチアンドデストロイをされたら、この場所って下手したら初めにいた所より安全なんじゃね?


 予想通りシュリが見事に殲滅していくので、右側ちょい後ろにいるサーシャが避けタンクなので、攻撃を交わした後の敵をいただければ少しは戦闘できるだろう。


 まぁ、魔物がそこまで強くないので、攻撃を避けるついでに弱点を攻撃して倒していたため、俺には魔物が回ってくることは無かった。もう少し奥に入ったら期待しておこう。


 陽が落ちてきたので野営の準備を始める事になった。普通の冒険者は森で野営をする際には陽が落ちる前に場所を決定して、陽が落ちる頃には野営が完成しているのだ。そんな常識は知らないため俺達は、普通の人たちとは違う野営の設営が開始された。

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