第304話 一路北へ!

 事情聴取は簡単に済んでしまった。やっぱりアホが勝手に仲間を連れてディストピアに来たそうだ。まぁきちんと監視して管理できてなかった罰として、前回と同じようにポーションを振りかけて苦しませて、インターバルを置いてからまたポーションをかけてを繰り返して、廃人のようになったところで再度念を押しておく。


 側近たちは今回は痛みによる罰ではなく、全身を拘束してから筆によるくすぐり地獄の刑に処された。マンガ好きの妻たちが機会があったらやってみたいと言っていたので、ちょうどいい機会なのでやって見る事にしたのだ。


 正直、骨折クラスの痛みを与えられて治されてを繰り返すのも嫌だけど、くすぐられるのが苦手なのでどっちをとると言われると、悩んでしまうくらいには俺にとってきつい罰だ。


 笑い声が汚かったので妻たちに聞かせるわけにはいかないと思い、日頃教皇と側近たちに苦労をさせられているであろうメイドや給仕、執事や部下に交代させながら三十分ほど続けさせてから解放した。いろいろ耐え切れなくなって失禁してる人がいるくらい地獄を味わったようだ。うむ、予想より効果があってよかった。


 ただここで終わってしまうとくすぐらせたメイドたちが、側近たちに何をされるか分からないので、数名に連絡用の魔道具を渡しておいた。もし理不尽な攻撃があった際や見つけた場合には報告できるように渡したのだ。それと魔道具が使えないように盗まれたり、連絡できないように監禁されたりしないように、定期的に連絡を入れるようにするシステムにした。


 これでアフターフォローも完璧だ!


 さてすることも終わったし帰るとするか!


「ご主人様、ちょっといいですか?」


「お? ライラがこういう時に色々言ってくるのは珍しいな、なんか気になる事でもあるんか?」


「ディストピアでも色々あるけど、ご主人様がいなくても問題ないのですからどこか遠くへ遊びに行きませんか?」


「ふむ、みんなもどこか遠くに遊びに行きたいのかな?」


 周りを見ると他の嫁達も頷いていた。これって俺がいない所で示し合わせてた感じだな。拒否する理由もないしみんなに任せてどこか行くのも悪くないな。


「みんな同意しているってことは、どこか行ってみたいところがあるんだよね?」


「行ってみたいところって言っていいのかな? ご主人様は三匹大国の配置はご存知ですよね。樹海を中心に北に王国、東南東に聖国、南西に帝国がありますよね。各大国の間に小さな国があるのも知ってますよね? それ以外の国ってどこにあるか知っていますか?」


「ん~それ以外に国ってあるのか? 話に出なかったから知らないんだけど」


「そうですよね。聖国の東に海があるのは知っていると思いますけど、北には森が広がってるの知っていますか? 樹海に似たようなところがあって、その先にも国があるんです。


 ただ移動できる人は戦闘力にしてAランク冒険者相当の実力者が複数いて何とかできる場所だそうです。王国側から回って行こうにも樹海のような場所か、標高一万メートルを超える山脈と凶悪な魔物のいる場所を超えて行かないとたどり着けないのです。


 海から行こうとしても海流や魔物のせいで、この世界の船ではたどり着けずに難破してしまうそうです」


「何かご都合主義的な何かが見え隠れしているけど、面白そうだな。そういえばカエデのいた国の極東ってどこにあるんだ? 聖国が俺の中で一番東なんだけど」


「ぷふっ。シュウ、極東っていう国の名前であって、本当に極東にあるわけじゃないんだよ。位置にすると、ヴローツマインの東側で聖国の南側ってところかな?」


「へ~そんなところにあったんだ。でだ、森を超えた先の国に行ってみたいってことかな? その国の情報ってどのくらいある?」


「こっちと違って戦争がほとんどなく平和らしいです。他にも道路がしっかり整備されているようですね。魔物を積極的に倒す部隊と、冒険者たちが多いそうで魔物被害は驚くほど少ないと聞いています。そのくらいかな?」


「思ったより情報があるようでない感じだな。こっちの国と比べるとインフラや魔物退治に力を入れているみたいで平和なんだな。昔か今現在かで日本からの召喚者がいるのかもしれないな。もしくは日本に似た国からの召喚者かもしれないな。歴史上の人物がこの世界にいたんだしありえない事じゃないよな」


 俺はこの世界に来てから、三大国を中心とした話しか聞いていないし、神が用意したダンジョンが三つあると聞いていたから、てっきりこの大陸? は樹海を中心としたエリアにしか人が集まっていないものだと、勝手に勘違いしていた。


 勇者の称号を持っている者とある程度の実力者が護衛についていれば、森を縦断することも不可能じゃないか? 異界から召喚された人間の持っている勇者の称号は、仲間にもその効果が伝播するので脱落者がある程度、出るかもしれないけど移住した人たちがいてもおかしくないか?


 聖国みたいな国は嫌な人間は多いだろうし。元々向こう側にも人が住んでいただろうし、可能性なんていくらでもあるか。


「とりあえず、聖国の今回拷問に参加してもらった、メイドたちのフォローできる人間をしっかりチョイスしてから、境界線にある森へ向かおうか。


 道中を楽しむためDPで出せる物や地下を掘らないみたいな感じで、縛りを設けようか? もちろん危険になればためらいなく解禁するけど、普通の冒険者たちが味わっているちょっとした苦労でも、楽しめるようにってのはどうかな?」


「ダンジョンマスターの能力を封じての行軍ですか? キャンプみたいでそれは面白そうですね。ドロップした魔物の肉や森の中にある食べれる物を採取するのも悪くないですね。


 聖国へのフォローですが、そろそろ人造ゴーレムを導入してみたらどうですか? あの子たちなら目に魔道具を埋めてあるから、スプリガンの皆さんに確認してもらう事は出来ますよね? 耳には通信機も仕込んであるので音も拾えるようにと、指示を遠方から出せるように改造していますし」


 作るだけ作ってすっかり忘れていた人造ゴーレムを有効活用する時が来たか! アリスが提案したそれを採用して人造ゴーレムを聖都に派遣しておこう、ついでに普段人造ゴーレム達が待機しておく場所も確保して、拷問に参加した人たちの駆け込みできる場所として準備しておくか。


 面倒くさい事が増えるのに嫁達は全員が同意をしてくれた。森の中での煮炊きはどうやって行おうかな~? だがシュウはこの時点で大きな間違いに気付いてなかった。


 普通の冒険者は樹海に似た森の中に入ろうとしない事、魔物の領域の森では煮炊きを基本しない事を知らないのだ。今までが今までなので思い至る事が無いとはいえ、色々ずれているのは間違いないだろう。


 今持っている食料以外は、DPで極力食料も出さないようにしたので道中に街によって食料を買うべきだろう。


 普通は大容量の収納の腕輪や鞄を一つの集団が複数確保していることも珍しいのだが、ここでもシュウはその事実に気付くことが無かった。調理器具や寝具、テントに関しては、もともと使っている物があったのでそこは問題ないだろう。


 話が一気に進み、色々な準備を整えていたが、人造ゴーレムがここに届くまでここに留まるか放置して後は任せるか悩んでいると、三幼女達が名案を出してくれたのだ。『キャスリングは人間を運べないけど魔物や物は運べるんだよね?』という一言で待つ時間がゼロになった。


 そして準備が整ったので王都を出発して一路北へ向かって行く。

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