第240話 教皇つかまる

 思い立ったら行動は早く、落とし穴の中の兵士たちが死ぬ前に連れてこなければならない。聖国の中央、聖都へ移動を開始しながら、マップ先生を開いてどう攻めるかを検討していく。


 城の真下には神が作ったダンジョンが存在しており、その中は俺にも見通せないのだ。不確定要素が多いのでどうにかしたいと思っていたのだが、なかなかいい方法が思いつかなかった。


 ダンジョン内に魔物以外の者がいるとダンジョンはいじれないのだ。城をダンジョン化してしまうと神のダンジョンの入口をふさぐこともできない。ん~さっさと侵入して入口のある部屋に土なり何かを詰め込んでおけば、問題ないだろうか? 時間もないので連れてくるメンバーをピックアップする。


「ご主人様! この国の一番偉いと言われている教皇が見つかりません!」


 まじか? 隠蔽系の魔道具をつけている可能性があるのか? それ以外の偉そうな人間は見つかったのだが、教皇だけは見つからなかったようだ。何か見落としているのかな? マップ先生に頼りすぎているため思考がどうしても遅れてしまうな。


「頭を切り替えよう。城には大した戦力は残っていないはずだ。ダンジョンの入口さえ塞いでしまえば援軍は来ないと考えていいだろう。


 なので、突入してから知ってそうな奴を片っ端から捕まえて聞き出そう。無力化した後に奴隷の首輪をつけておけば、攻撃をされる恐れはかなり減るから見張りをつけるだけで問題ないだろう。今回はスピードも大事だが安全第一だからな」


 敵軍を前に俺たちが離れて小細工されたら困るので、鬼人たちを呼んでいる。俺たちがいない間の監視役だ。もちろんタンクのスキルであるチェインを覚えているものも派遣している。


 殺されなければチェインで引き上げてから奴隷の首輪をつける予定だったのだ、いない間に直属兵が殺さなくなった際に、引き上げられなくなったら意味がなくなるからだ。


 聖都の地下に到着した。神のダンジョンの入口は、隔離区画のようになっているのでその区画の開始位置付近に地下通路の出口を作成する。


 侵入できたので城全体をダンジョン化すると、今までマップ先生の検索にかからなかった存在が検出される。どうやら魔物をテイムしているらしく、魔物の待機場所? とでもいうのだろうかそこにかなりの数の光点が確認された。神のダンジョンの入口の部屋に土や石を詰め込んでいると、


『ご主人様! 教皇の反応をとらえました。どうやら会議をしているらしく一か所に集まっている場所にいます。どうやら隠蔽の魔道具ではなく、教皇は人ではないようです。


 知性のある魔物といえばいいのでしょうか? ただ強い魔物かというとそうではなさそうです。種族がアンデッドバンパイアとなっています。バンパイアからアンデッドになった様です』


「ん? バンパイアって魔物じゃなかったのか?」


『魔物ではないですね。そもそも魔物はアンデッドにはなれないのです。倒されてすぐにドロップになってしまいますので。ただ、アンデッドの生まれやすい地域やダンジョンでは、アンデッドとして生まれてきます。ですがこのバンパイアは死んでアンデッドになったようです』


「報告ありがとさん。引き続きダンジョン内の監視お願いね」


 スプリガンからもたらされた情報を娘たちに伝えていく。聖国のトップがアンデッドとは、何たる皮肉だろうか。確かバンパイアの固有能力で魅了系の魔眼を持っているとか。その能力をつかってバリス神を作り出したのだろうか? まぁ見つかったんだ良しとしよう。


 聖国を信じている者たちが、こいつの正体を知ったらどうなるのだろうか? 簡単に考えられるのは、嘘をつくなと否定する者、別人を連れてきたという者、すべてを受け入れそのうえで崇める者くらいだろうか?


 行動は迅速にだ! 問題となる敵は、テイムされた魔物たち、詰所にいる兵士たちだろう。分かれて襲撃するには距離があるので全員で一気に詰所を制圧して、テイムされた魔物たちを放す前に待機場所を落とす!


「みんな、詰所を一気に落とすよ! ダンジョン化したから城の中なら、どこでも見る事ができるから、スライムたちは先行して敵が危険を知らせる道具の破壊を!」


 重要な任務を与えられたとわかったスライムたちは、高速でプルプルし始めた。イリア曰くスライムたちは自分に仕事が与えられて、張り切っている証拠だそうだ。


 それよりイリア、お前はスライムと意思疎通ができるのか? 俺だってイエス、ノー、位しかわからないのに、揺れ方や引っ付き方跳ね方で、なんとなくニュアンスがわかるっていうんだから末恐ろしい娘だ。


 スライムたちが敵兵の死角から、ササっと移動し道具を破壊している。基本的に使われることがないからだろうか? ほこりをかぶっていたり、明らかに壊れていたりする物も多くみられる。


 それに攻められたことがないのか危機意識が低すぎる。見た目だけはきっちりしているが、椅子に座って寝ていたり、だべっていたりして見張りをしっかり務めている者がいない状況なのだ。


 これほど楽な事はないだろう。スライムたちも遊んでいるかのように、だべったりしている敵兵の後ろでポンポン跳ねたりして、気付かれそうになったらササっと隠れる、なんて変な遊びを覚えた子供みたいに楽しんでいるな。


「よし、一気に制圧するぞ。まずは詰所の中にいる敵を無力化。続いて奥にある宿舎の無力化。レベル的には大したことがない。でも油断はしないように! 特に奥の宿舎ではイリアの精霊魔法に期待してるぞ!」


 頼られたイリアは、いつにもまして力の入って声で返事をしていた。力入れ過ぎて暴発しなければいいけどな。


 ピーチの合図に続いて一気に突入していく。危機意識のないこいつらには何が起こったかわからないうちに制圧されていた。目を覚まして騒がれるのはめんどくさいので、奴隷の首輪をつけて地下通路に放り込んでおいた。入口にリビングアーマーを四匹ほど配置しておいたので、逃げられることはないだろう。


 続いて突入した宿では、張り切って闇精霊の魔法を使ったイリアがやりすぎちゃったテヘペロ、みたいに舌をチョコンと出して笑っていた。うん、可愛いんだけど予想が的中したな。あ! ロリコンじゃないからな! もう嫁だからな! でも手は出してないからセーフだ!


 兵士の制圧は全部終わったので、テイムされていたと思われる魔物の所へ向かうと……クロやギンにひれ伏していた。何したんだ? と思ったが、すぐに説明があった。一回吠えたら大人しくなって伏せをしたらしい。ここは二匹に任せておこう。


 俺達は目標の教皇とその側近たちをとらえるべく行動を開始する。会議に出ているのは合計十一人、こいつらを全員とらえたいところだ。道中は奴隷やメイド、執事など戦力にならない者たちばかりだったため、声も出させずに無力化しておいた。


 しばらく進んでいくと会議を行っている部屋に到着する。魔法版スタングレネードで強襲をかける旨を説明し突入する。


 十人は何が起こったかわからない様子で呆けていたが、教皇は何かが起こっていることを理解して逃げようとしていた。あれ? まったく効いてない……ってアンデッドだから効かないのか? Lvも200は越していないので、俺たちに簡単にとらえれた。


 娘の何人かに魔眼を使っているが全く効果がなかった。ツィード君が付いてきていたので魔眼について聞いてみたら、俺にベタぼれしている娘たちには効果がない事と、レベル差もあって全くの無効になっていたようだ。


 押さえ込まれてギャーギャー騒いでいるが放置して、うるさいので口に布を詰めて猿轡をかませ手足の拘束に目隠しもした。教皇とその側近には簀巻きになってもらい戦場までご足労願おう。

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