第238話 進展の状況
現在俺らがいるのは、聖国の軍のいる約五キロメートル程ミューズ側に寄った場所である。ちょこまかと偵察の兵士たちが、こちらをうかがっているがそんなもの無視である。だってお腹が減ってるんだから仕方がないじゃない。
でも監視の手は緩めてないよ! 今この瞬間もスプリガンの方々が気を配ってくれているからね。それにメイを呼んで、結界を張ってもらっているから美味しく夕食がいただけるわけなのだ。ちなみにスプリガンの方々には、先日大量に作った手作りのお菓子をプレゼントしました。
シルキーたちの作るお菓子の方が絶対に美味しいのに、ご主人様(召喚者)から直々に手作りの物をいただける事が嬉しいらしい。でもな、ご主人様なのにクロやギン、ソウにコウは三幼女から餌をもらうほうが嬉しそうに尻尾を振るんだよな。
それはさておき、何でシルフのメイを呼んだかというと一つは結界のためだ。この結界に関しては四大精霊に色々レクチャーを受けたけど、使えるようにならなかったんだよな。疑似的な物は一応できるようになったが耐久力がほとんどなかった。宝珠にもそれらしいものは無かったし、才能がないのだろうか?
もう一つの理由は単なる嫌がらせだ。風の名手たるシルフの能力で今ここでバーベキューをしているにおいを五キロメートル先の敵陣に流れ込ませているのだ。
正確にはシルフの眷属たちが頑張ってくれているので、色々な料理やお菓子を準備してあげている。それを見た瞬間、眷属たちと一緒にメイも飛び込んできたのがなんとも言えない気分になった。
今日バーベキューをしたのには他にも理由があって、メイを呼び出した際にダンジョン農園で飼育していた牛や豚、鳥、羊などの肉類がいい感じに熟成されたようで、ソーセージ等の加工品と野菜も一緒に届いたのだ。
ドロップででる肉も美味しいけど、やっぱり食べる事を目的として飼育されている物は別格だった。タレ等はまだこの世界産の物が作れていないので、召喚した焼肉のタレだ。まぁ元の世界に数百種類のタレがあるのだから、違いを楽しむのも面白いよね!
そんな食欲をそそる焼けた肉とタレのにおいが、敵陣に風と共にふきこまれるのだ、携帯食や塩漬けの肉を食べている兵士たちにはたまらないだろう。暴走が起きてもおかしくないと俺は思っているくらいに凶悪なにおいを放っているからな。俺だったら絶対に攻め入る自信がある。
敵陣にもそういった傾向がみられたのはチビ神の報告で分かっていた。
『あなた、なかなかやるわね! こんな陰湿な嫌がらせ思いつくなんて、悪魔か何かかしら? それにしても、今天界でライブ中継されてるけどみんな爆笑して酒の肴にしているわよ』
との事だ。俺が悪魔なら、お前たちは邪神の類だろうに。
まぁ美味いは正義なのだ。この匂いに逆らえないのは仕方がないのである! あ、そういえば明日の夕食はカレーに決まりました。
ご飯が進むタイプとナンで食べるタイプを作る予定です! しかもにおいが伝わりやすくするために、わざわざ外に土魔法や魔道具を使って特設キッチンまで作りました。偵察兵には天国に近い匂いを味わいながら、地獄の苦しみを味わっていただこう。
次の日の夕食前に、暴走した敵部隊五〇〇人程が来たので食事の前の運動をしました。
なんていうかね、暴走しかけていたまとまりのない部隊は倒すのは楽だったね。見えているはずの罠にかかるし、フレンドリーファイアをするし、美人の獣人を見て発情するアホまでいた。
この国では人権を認められていないが、奴隷として可愛い獣人は慰み者にされるのが普通らしい。可愛いのは認めているのに、自分たちが優位にいないと気が済まない糞以下の連中だな。
ちなみに俺たちは一人も殺してないけど、死者がたくさん出た。フレンドリーファイアで一八〇人近くの敵兵が死んだのだ。どんだけ暴走してたんだよお前達! 捕虜にとっても飯食わせなきゃいけないので、死体は殺した奴に運ばせて持ち帰らせた。
一応手紙を持たせたが向こうさんが信じるとは思えないけどな。内容は簡単に言えば『襲い掛かってきたので撃退した。俺たちは一人も殺していない。全部お前たちの兵士が味方殺しをした結果だ』みたいなことを書いて生きている全員に同じものを持たせた。
あいにく次の日に使者がこちらにやってきて『この国の兵士がそんなことをするわけがない。嘘を言って我々を欺こうなどとは、やはりバリス様の神託は正しかったようだ』みたいな事を書かれた手紙を渡していった。
ちなみにこっちに攻めてきた兵士は、その日の内に処刑されたみたいだ。真実が語られたとして邪魔になるだけだと思い殺したのだろう。敵軍の中にバリスの重鎮がいるのだろう。漏れる前に命令違反とでも言って殺したのではないだろうか? まぁ俺にとってはどうでもいいんだけどな。
ちなみに本日の嫌がらせは、中華の刺激的で暴力的なまでに食欲を掻き立てるメニューを作っている。個人的にニンニクの炒めるにおいも好きだけど、中華の香辛料を使った刺激的なにおいも好きなんだよね。
麻婆豆腐に酢豚、チンジャオロース、回鍋肉、油淋鶏、焼き餃子に水餃子、シュウマイ、肉まん、本格中華ではないがエビチリ等々、もちろんご飯ものでチャーハンも準備しました。
みんなで色々料理できるのも楽しいよね。家にいるとなかなかキッチンに入れてもらえないから、趣味部屋の横にも俺が気まぐれで料理をする部屋を作った位だからな。
ちなみに餃子や肉まんは白菜派だ。白菜をみじん切りにして塩を振って揉み込む、しばらく放置して水分が出てきたら、布などに包んで絞ったものを使うのだ! 場所によってはキャベツの所もあるみたいだが、個人的には白菜の方が好きである。
肉まんには肉汁や味を吸ってくれる春雨を入れるのも悪くない! かさ増しの意味もあるけど、その春雨がないと物足りなく感じてしまうのも、好みの問題だろうか? もちろん皮も手作りでみんなで一生懸命作ったよ! 包むのは慣れるまで大変だけどね。
ここに来てみんなとコミュニケーションがたくさんとれている気がする。婚約者となって……いや違うな、みんなと出会ってここまで家族らしい事をしたのって初めてかな?
心の中でも言動としても大切な人たちとは言ってたけど、こういったコミュニケーションってあまりなかったよな。一度に嫁が二十六人も出来た事を除けば、普通家族ってこういう団欒みたいなのがあるんだよな。その一点においては聖国をほめてあげてもいいな。
本当の意味で家族になる以上危険な事はしてほしくないけど、俺がみんなを守りたいのと同様にみんなも俺を守りたいと思っているのだ。強くなったから尚更なのだろう。
一度は奴隷にもなったことある身だ、その価値観は俺とは違うものがあっても、守りたいものは変わらないだろう。力が無かった昔とは違うんだからな。
ここに到着してから一週間……宣戦布告があってから一ヶ月以上経ってるよな。聖国の面子にかかわるんじゃないか? 一応ヴローツマイン経由で各国に大国小国あてに、聖国が戦争というなの略奪行為をしようとしている旨とその開始日を知らせた。中立地域への進軍なのでこちらからの発言である。
敵軍は一番遠くの部隊の進軍状況を見るに、後十日程必要だろう。
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