第176話 住人獲得の思案

 住人が順調に増えてきたが、その半分以上が奴隷の状況は正直微妙な気がする。農奴やダンジョンに潜っている戦奴に関しては自分を買い戻せるように、農産で得られた野菜の販売やダンジョンから持ち帰ったドロップ品を他の街の相場で買い取っている。


 だけど、自分を買い取った後にこの街を出てく人が増えたらそれはそれでしょうがないかな。出来れば残ってほしいけどな。


 他の町へ派遣している子たちに関しては、自分を買い戻すことはできないがその分俺たちからの支援を強化している。戦奴たちに関しては、死ぬ確率を下げるために適正の高い人材に回復魔法を覚えさせているが、宝珠代の分だけ自分の値段が高くなっている。


 数年単位で稼ぐのにかかる金額ではあるがそれを受け入れて宝珠を使っている。パーティーで稼ぐか個人で稼ぐかは分からないが、ヒーラーのいるパーティーの便利さを覚えてしまったら抜けられないだろうけどね。


 せっかく広い海水の湖を作ったのに、そこで作業できる人材がおらんのはもったいないな。ダンジョンで海とつなげているし、メロウに頼んである程度の環境を整えてもらったのに、海水を作る以外今は活躍の場がないから活用したいのだ。


 といっても魔物がいる世界で漁業ができる人がそう多くはないと聞いている。遠浅の海なら魔物もほとんどいないがそうでないとそれなりの数がいるようだ。


 鉱山に戦闘鉱員がいるように、海には戦闘漁師がいるようだがダンジョンではないので安定した稼ぎにはならないし、不安定な船の上での戦闘であるため人気はないのだ。


 獣人がいるのだから魚人もいたりしないのかな? 疑問に思ったのでいろんな人に聞いてみたがそれらしい情報はあったが、実際に見たことのある人の情報は無かった。ん~何か知る方法ねえかな。チビ神なら知ってそうだけど都合よく覗いてたりしないよな……チラチラ……


『うざいわね! それにチビ神っていうんじゃないわよ! えっと、魚人だっけ? いるわよ、獣人みたいに陸に住んでるわけじゃないから接点が少ないだけで、それなりの数がいるわよ。


 大陸より外海の小島等に住処を作って生活しているわね。あんたが通した海底ダンジョン? って言ったかしら、それの出口から少し行ったところにある小島にも住んでいる魚人がいたはずよ』


 おぉ! 珍しくチビ神が役に立つ情報を出してくれたな。今より安全な生活の場を提供できるからこっちに移住してきてくんないかな?


『それは自分で交渉するしかないでしょ、私が知るわけないじゃない』


 人の思考を勝手に読んで、俺のせいみたいに言うのやめろや! でも、いい情報をくれたチビ神には礼を言おう! たすかったよ、ありがとさん。


『ちょ、ちょっと! な、何お礼なんかいっちゃってるわけ? 別にあんたに褒めてもらいたくて出てきたわけじゃないんだからね!』


 ここに来てツンデレか? ってデレたことなんてあったっけ? まぁそんなのはどうでもいいか、魚人とのコンタクト方法を考えよう。助かったよ!また何かあったら呼ぶわ。


『便利屋扱いしないでよね! 私が召喚したから面倒見てあげてるだけなんだからね!』


 いい情報を手に入れた、さっそく海に行く支度をしよう! ということで、娘たちを集合させる。


「皆さんにお知らせがあります。今度は海に行こうと思います!」


 また俺が何かを始めたよ、とちょっと白けた目で見る娘たち、ぞくぞくするからやめてくれ! そっち系の趣味はないんだ! 俺の事をいつもは全力で守ってくれるのに、最近は俺の発言に対してこういった態度をとることがあるんだよな。


「そんな冷たい目で見るのはやめてくれよ。きちんと理由があるから聞いてくれ。ちょっと前に聞いた魚人の話覚えてるか? どうやら本当にいることがわかって、恐らく住んでいる場所が分かったから会いに行こうと思っているんだ。できればここの湖の住人になってもらえたらと思ってね」


「そうでしたか。てっきり前みたいに開拓に飽きてきたとかそういう理由ではなくてよかったです。護衛する立場から勝手な行動をされると困りますが、きちんとした理由があり状況が判断できるのであれば問題はないですね。どういった装備を準備すればよろしいですか?」


 ちょっと棘のある言い方だけど俺の事をおもっての発言なんだろうな。もともと俺の護衛のために集めた娘達だもんな。この気遣いに感謝しよう。


「必要な装備か、とりあえず船と海中用の武器かな? 電撃を与えれるような魔道具を組み込んだものがあると効果的かもしれないな。アリス、ライム、この前俺が頼んでおいた魔導エンジンが形になったって言ってたけど、力の方はどんな感じだ?」


「そうですね、さすがにウォーホースほどの速度を出せるほど力はありませんが、がそりん? ですか? それを使う普通のエンジンよりは、かなりの小型化に成功していますので、複数積むことで力は何とかカバーできると思います」


 そっか、複数のエンジンを積んでカバーすればいいのか? どうやってつなげるんだ? そこらへんは後で考えればいいか。アリスたちができるっていうんだからできるのだろう。


「まさかこんな所で役に立つとは思わなかったけど、研究してもらっといてよかった。一から作ると時間もかかるので、どんな船を召喚するか考えようか」


 リブロフへ攻め入った時に天幕で使った二〇〇型の液晶テレビを使って、召喚できる船を眺めている。駆逐艦なども見たが戦闘が可能な船は運用が困難なので見向きもされなかった。


 最終的に選んだのは、スーパーメガヨットのアルティミスシリーズのヨーロッパモデルの全長二〇〇フィート(約六十一メートル)の船だった。


 そもそも数多くのヨットやクルーザーが召喚できるか意味不明だったが、オーダーメイドでも船内の内装は、ここまで自由にできるものではないだろうというレベルでいじれたので、激的な改造を施してみた。


 動力は魔石を使用するので燃料を入れる部分まで、丸々居住空間になり少し広くなっている。機関室もコンパクトになった魔導エンジンなので半分ほどのスペースで問題がなくなっていた。


 それにより本来は四階で構成されている船が五階になっている。見た目はそのままなのに、中身が別物に代わっていく。軽くなった分、錘を仕込んだりしている。


 一番下の階は寝室と浴室、二階はキッチンとトイレと食堂、三階はくつろぎスペースと迎撃用の通路がある、四階は操縦室、五階は空を見れる展望フロアのような作りにした。この船を召喚するのに使ったDPは、約一二〇〇万DP。今まで作ってきたダンジョンより余裕で高額になっている。


 シルクとツィードを中心として四大精霊たちには、俺の要望にこたえられる魔道具を組み込んだ武器を作ってもらうことにした。ハープーンを打ち出して直接電撃を伝えるものや、槍の穂先に爆裂の魔道具(使い捨て)を付けて投擲して使うものの2種類を準備してもらっている。


 とはいえ、今回は六人の精霊にもついてきてもらうので、水のエリアなら怖いものなしのアクアがいるから戦力的にも問題はないはずなのだ。


 アリスとライムには、魔導エンジンを取り付けてもらい、各種の調整をしてもらっている。どうやって覚えたのか不思議なほどの技術を見せつけて作業をしている。


 俺は防御面の担当だ。この大きな船にアダマンタイトコーティングを施していく。召喚する際に薄い板で出して、船体に沿わせてからコーティング作業に入る。それによってかなりの魔力の節約になったが、サイズがサイズだったので全体にコーティングを施すまでに五日もかかってしまった。


 準備も整ったので、海に向かうことにした。さてどうやって行こうか? こんな大きい物をしまえる収納アイテムなんてないぞ、どうしよう?

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