第167話 ディストピアに戻る準備

 ヴローツマインに来て困ったことが起きた拠点、というか支部に派遣する娘たちの数が圧倒的に足りてない! 今だって、新人組は二交代でジャルジャンに派遣してるんだよな。メインの娘たちは支部の管理とかさせるつもりはないからな。新しくメンバー増やすしかないかな?


 リンドが奴隷を買い集めてたって聞いたけど、どうなってるんだろう? そこらへん全然聞いてなかったな。リンドが奴隷を購入してるならほとんどめぼしいのは残っていないかな?


 それにしても、初めの娘たちは奴隷扱いしたりされたりするとムカッとするけど、奴隷の家族や二陣目の新人の娘たちにはあまりそれを感じない。何でだろう? 少しはイラッとするけど今のところ切れるほど、怒りゲージが高くなることはないな。


 それはさておき、リンドを探さないとな。マップ先生お願いしますよっと! 一階のフードコートにいるようだな。フードコートは、娘たち+ブラウニーたちの食事が人気を呼び連日連夜大賑わいだ。その人気を聞きつけた商売に聡い者たちが、貸し出し用の厨房を埋めていたのだ。


 完全に住み分けているようで、うちはメインの食事としての腹を満たすものとこの街にはないおつまみを、他にはお酒オンリー、串焼きオンリー、ソーセージオンリー、など等。まぁうちの食事をメインにおこぼれに与っているような感じではあるが、それでもきちんと利益を出してる辺り商売がうまいな。


 フードコートに入ると異様な光景を目にすることになった。オーナー席の看板を掲げた一角だ。俺こんなの準備した覚えないぞ?


 そこにリンドがいるのも分かってたし、リンドが連れてきたドワーフがいるのも分かってた。だから飲んだくれているかと思ったら、何やら紙を広げてわーわー言い合っていた。とにかくうるさい、何をしてるか聞くしかないか。


 簡単な話だった。リンドが広げていたのはディストピアの簡易的な図面のようなものだった。老ドワーフ達と意見を言い合っていた、俺の意見は無しなのか? と思わないでもないが、勝手にオーナー席なんて作って騒ぐのは迷惑なので、倉庫を簡単に改良してもらいそこを使うように言い含めた。


 食べ物や飲み物に関しては、フードコートまで買いに行ってここへもってくるようにさせた。


「シュウ、そういえば何か用事があったんじゃないの?」


「そういえばそうだった。お前たちが勝手にあんなことしてるから、リンドが奴隷購入したって言ってたから、今奴隷商に残っている奴隷にはめぼしいのがいるかどうか聞きたくてな。どうなんだ?」


「どういう意味でめぼしいって言ってるかわからないが、私が買ったのはシュウにも言ったように農奴と戦奴だけだよ、後は家族ごと買い取った人たちもいるよ。人数が重要だと思って、言葉が悪いけど頭の良くない人たちを選んだんだよ」


「じゃぁ、奴隷商に行ってみないとわからないか。つか買った奴隷はどこにいるんだ?」


「あれ? 話してなかった? 私の家にまとめて住まわせてるわ。えっと合わせて一〇〇人近くはいたんじゃないかしら? 一応、知り合いの審議官にスパイでないことを確認してもらっているから、連れて行く分には問題ないわ」


「一〇〇人か、ディストピアで住んでもらう家どうするか? 見てもらった時に学校って説明した建物あっただろ? あれにそれなりの人数が住めるし、その近くにあった家の一階にも人が住めるから一時的にそこに行ってもらうことはできるか。


 そうだリンド、馬車手配しておくから明日にはディストピアに行けるようにしておけ。ついでだし、ジャルジャンに残っている人たちもこの際だから連れてくるわ」


 リンドに予定を伝えて、準備をしてもらうことにした。最後にドワーフ同士で話し合いするのはいいけど、俺を置いて話を進めるなよ、と釘を打っておいた。


 一人で奴隷商に行くのも嫌だったので、カエデとアリスを連れていくことにしよう。幼女三人組を連れて行くと、そういった趣味かと思われるかもしれないので、かっこいい見た目のアリスを連れていくことにしたのだ。


 ちなみにアリスは、銀髪のショートカットで魔法剣士という事もあり凛々しい感じだ。向こうにいれば、下級生の女の子にお姉さま! と呼ばれるような感じだろうか? 何か偏見があるけどかっこいい娘である。


 奴隷商に到着すると、手もみした胡散臭い商人が出てきた。リンドに言われていなかったら見た目だけで引き返してしまいそうだ。こんな見た目でも優秀な商人であるから問題ないとのことだ。


 胡散臭い商人に希望の条件を伝え、それに合致する十八歳までの男女すべてと話し面接をしたいとお願いすると、結構な数がいるため時間がかかると言われた。時間がかかってもいいから全員と話したいとお願いし金貨一枚をにぎらせた。


 五人ずつの面接になるらしく部屋を移動した。連れて来てもらえる間に、その年代の奴隷の数がなんで多いのか興味本位で尋ねた。理由は、聖国から大量に獣人を多く含む奴隷が送られてきたとのことだ。


 聖国の南方で飢饉が発生して、聖国では高く売れない獣人を高く売れるヴローツマインに連れてきたそうだ。飢饉で連れてこられてきたこともあって、栄養状態は良くなかったらしい。ネルを連れてきた方がよかったかな?


 全員で一〇〇人程の奴隷の少年少女達と面談した。正直、アリスを連れてきてよかったと思う。面談した内95人が獣人で、聖国から来たためヒューマンに憎しみを抱いていることが分かった。


 シアンスロープのアリスがいなければまともに会話もできなかった可能性がある。会話はアリスに任せ、俺とカエデは嘘や奴隷の首輪があっても害意を向けてくる可能性がないかを見ていた。ほとんどカエデ任せだ。


 その結果、ヒューマンの男三人女四人、獣人の男十六人、女五十四人の七十七人と、一緒に売られてきた親四十七人、合わせて一二四人を購入した。値段は金貨六五〇枚だった。確かあの娘たちを買った時は二十三人で金貨二五〇枚ほどだったはず。半額以下位の値段だな。


 でも、フレデリクにいた奴隷って二〇〇人くらいだった気がする。マップ先生の情報見ると六〇〇人ほどここにいるんだよな。リーファスもそのくらいだった気がする、考えてもわからんから放置だ。


 明日の朝迎えに来るので、ちゃんとした食事をとらせるようにお願いする。金貨二十枚ほど追加して渡す際に、ちょろまかすなよ? と脅しておいた。


 思ったより人数が増えたので、まずスカーレットに追加でブラウニーを召喚した事を伝え監督してもらい、ディストピアからウォーホースを全部こっちに移動させ、馬車は全部つないで送り出すようにお願いしておく。


 合計二五〇人程の人数を連れ帰るから追加で馬車だしておかないとな。ジャルジャンに行っていない新人組に一緒に来るように命令しておく。


 これで明日の準備は問題ないだろう。まぁ忘れてても六時間もあれば来れる距離だ。自重しなければおそらく二時間はかからないと思うけどな。


 少年少女たちは、まず栄養バランスを考えた食事を食べさせて体調を整えなきゃな。体動かすのはそれからだから、それまでは座学や執事、メイドの修行をさせておこう。

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