第166話 変わらぬ日々にもどった

 宴会が朝に終わった。俺の肉体言語で語り合った人数は三十人にもおよんだ。いつも過保護になりがちな娘たちだが、酒の場であったり単なる俺へのやっかみで絡んでいたため、娘たちのフィルターに引っかかるものは少なかったようだ。


 でも、中にはガチでボコボコにしようととしていた不届き者がいたらしく、娘たちに引きずられて強制退場させられていた。それにしてもどうやって感知しているのだろう? シックスセンスでも持っているのだろうか?


 リンドが奴隷になり、俺がダンジョンマスターだと知っているため、時を見て色々な情報を開示していこう。


 さしあたってまずしなければいけないことは、ディストピアとヴローツマインの貿易に使う地下通路入口の旧鍛冶ギルド、俺の家ヴローツマイン出張所の扱いについてだ。


 リンドに許可をもらい通した地下通路だが、ダリアにもしっかり許可を取らないとな。と思い移動を開始しようとしたところ、ダリアはもう知っていて問題ないとのことだった。


 じゃぁ後しなきゃいけない事は、セキュリティー面だよな。ヴローツマインでも一部の人間にしか教えないつもりだが、いずればれるだろう。


 そうなればこの町にいる他国の人間に、ディストピアへ行こうとたくらむやつが出てくるだろう。そうなれば実力行使で通路に入ってくる人間がいるかもしれない。それに対応できるようにしておかないとな。


 一階はギルドのロビーだったので、かなりひらけているのだ。以前は一階に地下通路の入口を作っていたが、セキュリティーを考えると絶対にしてはいけないだろう。なので一階は予定してたように飲食できる店にしよう。


 貸し出しをしようと考えたが、あのキッチンを貸し出すのは拙いので、他にもキッチン……調理場をいくつか作りフードコートのような形にしようと考えた。土地も広いので屋根だけつけたオープンテラス方式にすれば、客席は稼げるしな。おっと、二階より上の部分の防音設備をしっかりしておかないとな。


 じゃぁ入口はどこに作るかといえば、軍の駐屯地に新たに厳重な建物を建て入口を監視する場所を作るとのことだ。


 内部構造は、いったん二階に上がって荷物などを検査する場所を通って、地下通路に行く道を作るようだ。地下にも広い空間を作りディストピア側の人間の検問所を設ける予定だ。俺たちにしか利用できない裏道も準備する予定だ。


 ディストピア側にも同じような仕組みの建物を準備してある。こっちはDPで全部作ったからか、建物型のダンジョン扱いになっていた……城壁につけた兵舎は、ダンジョンにならなかったのになんでだろう?


 数日で色々と計画が進んでいく、特に軍の駐屯地に作っている。便宜上【検問所】と呼ぼう。


 検問所の建設ペースが異様なのだ。日本で重機を使った建築より全然早いのだ。実力行使で来た時のために、石材で外装を作り砦のような堅牢さの建物が三日で形になっていたのだ。


 内装はあまり進んでいなかったがその理由が鉄板を内側に打ち付けていたから遅れているようだった。建築的に問題ないのかと思わなくもなかったが、ドワーフの工匠達が作っているのだ、万が一にも間違いはないのだろう。


 地上をドワーフの工匠達に任せている間、俺は地下の整備を行っていた。ヴローツマインの軍駐屯地にかなりのサイズの建物を作ってしまったため、兵士たちの訓練場所がなくなってしまったのだ。


 軍の人間には強くいてもらわないといけないとリンドが主張し、俺も娘たちの誰も反対しなかったので、ダンマスのスキルでかなり広い地下室、訓練所を作成した。


 リンドもダンジョンで訓練をするとスキルのLvが上がりやすい事や、成長速度が速い事を知っていたが、ヴローツマインでも知っているのは一部だけらしいので、問題にはならないだろうとのことだ。


 地下通路に入るための順路として


 軍の駐屯地⇒検問所の入口⇒一階から二階⇒検問所の兵士による検問⇒二階から地下へ⇒兵士の訓練所⇒ディストピア側の検問が用意されている。これらすべて越えないと地下通路に入ることができないようになっているのだ。


 これだけ厳重にしたのにはディストピアに地下通路を使って招かざる客を入れさせないためもあるが、それだけディストピアの価値があると判断されているからだ。


 まぁしばらくは、リンドに選んでもらった物を俺たちの馬車で運んで、検問所の入口で販売する形にする予定だ。この案は、ダリアから提案されそのまま採用した。この検問所が使われるようになるのは年単位で時間はかかるだろうけど。


 俺が地下の整備をしてた間にリンドは、飲んだくれの老ドワーフたちを集めたり、近くの中立都市の奴隷を買い集めていた。奴隷といっても知識奴隷ではなく、農奴や戦奴などの知識が高くない者を購入して、知識の高いものは買っていなかった。そういう奴隷の中にはスパイがいることがあるらしい。


 集まった老ドワーフたちは、俺の家の一階部分のフードコートに入り浸っている。理由は簡単、うまい飯とうまい酒が出てくるからだ。人手が足りなかったのでディストピアにいたブラウニーたちに慌てて援軍に来てもらった。


 俺の護衛は基本的に幼女三人組だ。この三人が選ばれたのは、この子たちが近くにいれば無茶をしないという理由からだ。くそ、よくわかってるな。シュリとかが護衛ならガンガン進んでいくんだけど、この子たちと一緒じゃ無茶はできん。するつもりもないけど、護衛というよりは監視の意味合いだな。


 地下の整備が終わってすることが無かったので、街の見学に出ている。ドワーフが多いせいかソーセージや内臓系の煮込み、筋の煮込み等の酒に合いそうな屋台がすこぶる多い。


 基本的には俺の好みの味が多い、特にソーセージの味は絶品だった。シルキーたちの作るソーセージより美味かった。俺の知らない技法で作られてるのだろう、って俺ソーセージの作り方知らなかった!


 シルキーたちが本で覚えた作り方では、本場の作り方には勝てなかったのだろう。他にも、調味料や香辛料の違いもあるのかな? という事で、シルキーたちへのお土産として色々なソーセージを大量に買い込んだ。


 鍛冶屋も多く様々な武器があった。中には連接剣なんて言うファンタジー武器もあった。でもさすがに鍛冶場までは見学させてくれる人はいなかった。


 でも、当たり前のような顔をしているカエデを見つけた。技術を盗んでいるようで、後で俺も教えてもらおう。これも運がいいからなのかな?なんてことを考えながら幼女三人組と街見学をつづけた。


 リンドの気の迷いといわれる日から、二週間が過ぎるころには検問所も完成していた。ヴローツマインはリンドと老ドワーフたちがいなくなったこと以外に特に変わった事もなく時が過ぎていた。

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