第152話 途中経過

 リブロフの街からジャルジャンへ奴隷にされた人達を連れ帰って10日程経った。その間に色々な報告が俺のもとに入ってきた。


 まず、リブロフの街の様子。


 あの街の領主とその関係者、兵士たちは、無残な死体になったそうだ。俺が頼んだ伝言を伝えてもらえなかったな。


 どういう状況だったか報告を受けてる時にやっぱりそんなことしてたのかとあきれるしかなかった。


 領主の最期は、屋敷から去る前に屋敷で働かされていた奴隷の娘たちを解放した直後に、娘たちによって殺されたらしい。相当雑な扱いをされた上に無理やりに犯されていたようだ。他にも虫の居所が悪く何もしていないのに鞭で叩かれたりもしていたとの事。


 領主の親衛隊と呼ばれている兵士たちも娘たちを犯していたらしく、一緒に殺されていたようだ。普通の人よりレベルが高くても所詮人である、両手を縛られつりさげられた上に鞭や剣でめった刺しにされれば耐えれるわけは無いか。


 街の兵士たちは同じような状況と内容で、街の娘たちとその親たちによって同じく殺されたようだ。


 その後は、ライチェル王国には従わないと一致団結したようだった。何度も状況を説明した手紙を出しても、何もしてくれなかった国には従いたくないとの事だ。


 それと一部の人間で俺たちの事を知っていた人が、俺たちの事を大々的に話したらしくリブロフの街からお礼と、この先の街についての相談を受ける事となった。俺にできる事はほとんどないので、そのままフェピーに丸投げした。


 フェピーとしても中立都市同盟としても、リブロフの街はライチェル王国からの防衛拠点としてはかなりいい立地条件であり、近くには魔物の出ない森があり食料生産にも向いているため、取り込みを決めたようだ。


 二日後には、飛竜隊の一個小隊と竜車(馬車のように引くのではなく足で荷車をつかみ運ぶ方法)が到着して、支援と要塞化が始まっていた。


 フェピーに以前お願いしていたこの家の周辺の買取について報告があがってきた。周りで空き家になっていたのが二件、ここは人の住んでいる家を挟んだ先だった。それでは困るので人の住んでいる家について聞くと、リブロフの街に移住予定との事だった。


 リブロフの街はジャルジャンの管理下におかれ、街の力の底上げをするために移住を推奨しており、そこに一家族が応募していたようだ。まぁ、早い段階で移住した人には特典が付くとの事だった。その上俺に家を売ってくれれば普段より高い値段で売りさばける、とささやいたようだ。フェピーちょっとゲスイな。


 今の家から西に二件分土地を増やせたことには感謝しよう。という事で、ばれない様に家を作る際の細工を行う。高い塀(もし何かあっても隣の家に被害を出さないようにするという建前)を建てて、中ではダンマスのスキルを使ってさくっと家を建てている。


 シビルにも教える事は今のところ出来ないので、地下でつなげている。


 一応倉庫兼工房と従業員の寮兼店舗となる建物を建てた。寮兼店舗は四階建て、元々あった倉庫よりちょっと高い建物に仕上がった。さすがに俺たちのメインの家というほどまではいかないが、お湯等は自由に使えるようにしてある。もちろんお風呂も入れるようにしてある。


 次に奴隷はというと、保護されているうちの半数は俺の作っている街に移住したいとすぐに申し出があった。その後一日毎に数が増えていき、一週間後には今回保護された六十八人の人たち全員が移住を決めた。俺たちにも準備があるという事で、しばらくはフェピー預かりで読み書きの勉強をしてもらっている。


 ジャルジャンで奴隷になった十八人を加え、九十二人の内訳、母親が二十八人、子供が六十四人だった。男親は盗賊モドキに殺されているため、いないのはやりきれない気持ちだ。子供の内三十四人が男の子、三十人が女の子だった。


 まだ家族で買ってもらえる時期でよかった。もしそうでなければ、男の子たちは確実に肉体労働の場所に買われていっただろう。年齢は六歳から十二歳で、十三歳過ぎている子はいなかった。


 十三歳過ぎている子たちは父親の仕事に付いて行って殺されたか、職人やメイドになるために住み込みで働いていたためいなかったようだ。五歳以下の子がいないのは、奴隷として価値がないため放置され亡くなっているようだ。


 俺が作っている街の俺の家の近くにとりあえずアパート風の建物を建てよう。でも集団生活ができるように工夫をこらしてっと、一家族に二部屋と小さめのキッチンを作りトイレと洗濯、お風呂は共有。食事は基本的に共有スペースのある厨房で自分たちで協力して作ってもらう予定でいこう。


 俺達が作っている街の状況は……


 とりあえず、海水の湖は約七割ほどが伐採されていた。切り倒した木はブラウニーたちがダンジョンに作った倉庫にどんどん運び込んでいる。収納のカバンでも預けているかと思ったが、どうやらメイドの嗜みを覚えたようで荷物運びはお手の物だったようだ。意外にハイスペックだな。


 農業用に地上げした土地は、召喚した魔物をとりあえず放し飼いにしてある。ワームを何匹も召喚して、適当に食料を与えている。そのうち良質な土ができるだろう。ある程度完成したらドリアードに頑張ってもらいいい状態になる様に持って行ってもらおう。


 居残り組の娘たちから報告で、夜が暗くて危ないと報告があった。メイン通りにも光を用意してなかった俺は、愕然とした。なんでそんなことも思いつけないのかと!


 なので、アリスたちと一緒に魔導具を開発する予定だ。コンセプトとしては、ある程度暗くなったら勝手に光がともり明るくなったら消える仕組みだ。


 一応ダンマスのスキルで建てコアから電力供給でもいいかなと思ったが、メンテナンスを考えると魔石で動かせるような仕組みにしておかないとまずいと言われハッとした。


 だけど一つ一つに魔石をはめ込むようにするのは手間がかかりすぎるので、魔導線を使って魔石の魔力を流せるようにするべきだとの事だった。王都やお金持ちな都市はこのシステムを導入しているので、それを見本に開発する。


 そしてシェリルとイリアと一緒にネルちゃんの様子を聞くと、ヒーラーとしての能力はほぼ開花したとみていいだろうが、恐ろしいのは戦闘能力の方だった。


 戦闘スタイルはシェリルと同じ素手で、さすがにシェリルみたいな常識はずれな成長は遂げていないがピーチと互角に打ち合えるところまで成長したようだった。うちのメンバーで後衛の指揮官的な立ち位置のピーチは戦闘能力はそこまで高くないが、一般的に見れば人外ともいえる戦闘能力である。


 どうやったらそんなに成長するのかと思ったら、ガルドとノーマンのせいだったようだ。


 孫のようにネルの事を可愛がり、一日中遊びながら戦闘訓練をしていたようで、グングンと成長するのが楽しくてさらに調子に乗って育て上げたようだ。


 ネルちゃんの希望でもあるので、文句は言わないが限度があるだろうに、シェリルとイリアの喜びようがはんぱなかったので、後でコッソリと説教しておこう。文句じゃなく説教だ。


 奴隷一家は順調に知識を蓄えていて、街の構想も一生懸命考えているようだった。特に言われたのは、住宅と工房はできるだけ離れた位置に作りたいとの事だった。


 一ヶ所に工房をまとめる事で効率化と騒音を防ぐ目的があるとの事、住宅街と工房の間に倉庫を挟むことで、子育ての環境もよくなるだろうとの事だ。そういう効果も考えているんだね。


 倉庫と工房、倉庫と商店が近いと荷物や商品の管理も楽だし、区画整理で壁を作れば警備の手間も省けるだろうとの事。うんうん、もっといろいろ考えてほしいところだ。


 今度連れていく人達の住居はキャスリングで一緒に移動させてきた学校の近くに建てる予定だと伝え、家ができても驚かないように言い含めておく。一気に子供の数が増え、学校を稼働させれるかな?お母さん方には縫製とかを学んでもらうか、服とかは素材があっても一朝一夕で出来るわけじゃないからな。


 ジャルジャンに来て予想以上の成果をあげれてよかったな。でもその分ムカつく事も多かったけどな。一番はライチェル王国の一都市を奪ったことかな。あの国王はいつか痛い目に合わせたるからな!

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