第151話 我が道をゆく

 俺は、戦闘が終わったのでパカラパカラとウォーホースに乗って領主邸に向っていく。


 到着すると、ヒキガエル夫婦は、息子と同様に臭くなっていた。髪の毛はブロンドだったはずだが、今は色が抜け落ちて真っ白になっている。恐怖で髪の毛が白くなるって迷信じゃなかったのか? ファンタジーだから何でもありって落ちな気がする。


 最近、穴から色々出すのが流行ってるのかな?


「みんな、お疲れ様。ライチェル王国への嫌がらせ成功だね。さて戦争で勝ったんだから、もらえる物もらっておこうか。金はあってもしょうがないから労働力をもらってくか? こんな腐ってる街占領してもしょうがねえしな。よし、こいつらは縛っておいておこう、別に死んだって俺たちは困らないしな。


 目的の一つ、ライチェル王国への報復は少し出来たし、今回はこの辺で引き上げよう。帰る途中に拾う物ひろってかえろう。おっと生きて伝言する機会があったら、国王に俺たちをおとしいれた報いを必ず受けさせてやるって、伝えておいてくれ。じゃぁ頑張って生きろよ」


 それっぽい事をヒキガエル夫婦に言葉として残して、俺達はその場を去っていく。


「よし、じゃぁ事前にマーキングしておいた、ジャルジャンで買われて連れてこられた人たちを回収しに行こう。じゃぁ、ピーチ・シュリ・ライムを隊のリーダーに三組にわかれて連れてきてくれ。集合場所は、天幕でいいかな? では、行動開始」


 俺は来た道をパカラパカラとウォーホースに乗って天幕に戻っていく。


 奴隷というと満足に食事をさせてもらえてないのが一般的らしいので、胃に負担にならない食事をシルキーたちに出してもらう事にしよう。


 ジャルジャンから連れてこられた奴隷の数は七十四人だったが、この街に残っていた数は六十八人、残りの六人はどうなったんだろうか? 女の子が三人、二十代の女性が一人、男性が二人が足りない数だった。


 女の子はおそらくそういう事なんだろう、他の街かもういないか。くそヒキガエル共が! 本当にろくなことしねえ奴らだな!


 街から集められたジャルジャンの人たちがどんどん集まってくる、大分やつれている印象を受ける。それ以上に引きつった顔をしている。それもわけもわからず戦争が始まって、終わったかと思えばここに連れてこられたわけだから当たり前か。


 まだ連れに行ったのが娘達だったからよかっただろう……これでここの兵士みたいなのに連れてこられたら、もっとひどい顔になってたと思う。


 お腹がいっぱいになれば気持ちも和らぐだろうから、とりあえず食事をしてもらおう。温かい食事に柔らかいパン付き、喜んで食べてくれている。お腹がいっぱいになり自分たちが理不尽な状況にならないとわかったようで、こちらの話を聞いてくれる状況が整った感じだ。


 俺が説明するより、娘達の統括役のピーチに説明してもらった。おれはその間にツィード君に奴隷の首輪の解除の準備をするようにお願いする。


 ピーチの説明を聞いていたジャルジャンの人たちは、喜んでいる顔と複雑な顔を混ぜたような表情になっていた。奴隷から解放されるのは嬉しいけど、解放されても元奴隷の人間に対して世間は冷たい事を知っているのだろう。


 だから俺はピーチに俺の街への移住の話をするように言ってある。俺としてはどちらでもいい、人が増えるのはいいことだが、不和が生まれるのは困るからそこら辺を理解してくれるといいんだけどね。


 ピーチの話が終わり、母親と思われる人達はどうしていいかわからず複雑な顔をしているが、子供たちは全員喜びを全身で表している。さてここで悩んでても仕方がない、次のステップに進もう。


 ツィードから奴隷の首輪の構造を聞いて事前に色々解除方法を検討していた、アリスとレミーのコンビがどんどん首輪を解除していく。ある一定以上の魔力を流し続けると回路が壊れるということが分かったらしい。


 ただ必要魔力は一般的なLv一〇〇以上の魔法系の冒険者や兵士の魔力が枯渇寸前まで使用しなければならないらしい。でもさそれじゃいくら君たちでも魔力枯渇するよね? って思ってたら、魔石を魔力の代用してサクサクと外していた。


 混乱している全員を放置して、次の準備を進めていく。


 人数は六十八人内子供が四十六人、体の小さい子がいるとはいえ六十八人もいるから、馬車を追加しないといけないな。といってもこれ以上多くなっても使う人がいないからな、馬車に連結できる馬車とかにするか。電車みたいにウォーホース一匹で馬車三台は軽く引けるだろうから、六台程召喚して馬車に連結しておいてもらう。


 ちゃっちゃとすること済ませてしまおう。夜だけど連結した馬車にジャルジャンの人たちに乗り込んでいってもらう。ジャルジャンに帰ってから改めて考えればいいことを伝えてもらい、馬車の中でゆっくりしていてもらう事にする。ただいまの時刻四時、早ければお昼過ぎ頃に着くだろう。


 日も高くなりジャルジャンの城壁が見えてくる。この人たちにとってどのくらいぶりの景色なのだろう、喜んでもらえるといいな。


 この先の生活もきちんと保証できる状態にできるといいな。という事で後の事は全部フェピーにいったん押し付けよう。もし考えた結果移住することを希望する人がいれば連れていけばいいだろう。


 移住してくれたらうれしいけど家とかどうしようかな? 近いうちに大工もほしいな、ドワーフとかいいよな。ヴローツマインに早いところ行って人材確保してえな。よくある小説の設定で酒とかで釣れないかな?


 見覚えのある門番が青い顔をしていた。


「え? もう帰ってこられたんですか? 戦争されてたんですよね? 早すぎませんか? 昨日の夕方に出発したのに、どんだけ移動早いんですか!!」


 ありえない速度で移動する俺たち、ありえない時間で戦争が終わる非常識で混乱に混乱をしている門番がそこにいた。とりあえず、フェピーに伝えてきてくれ、そのまま連れてく予定なんだから!


 意識が回復した兵士があわててフェピーに伝言を飛ばしていた。お前の方が指揮官の資質あるんじゃねえか?こっちの人、自分の常識を超えると停止しちゃうからな。


「昨日でてってもう戻ってくるってどういうことですか! 早すぎますよシュウ君!」


 領主の部屋に入ってすぐフェピーに怒鳴られた。こらこらシュリとピーチ、その位でいちいち殺気立つな。できれば樹海の周辺都市とは良好な関係を築きたいから抑えてくれ。二人の手を握り後ろへ引っ張った。


「君の所のお嬢さん方、ちょっと過敏じゃないかね?」


「気にするな、俺たちは俺たちのすることをしたのに、文句を言うから殺気を出されるんだよ。フェピー、この二人がいるところで冗談は止めてくれ。逆鱗に触れる事があったら俺もとめれる自信は無いから、よろしくたのむ」


 フェピーと護衛の兵士たちは終始引きつった顔をしていたが、俺は押し付ける事だけ押し付けて、我が家に帰ることにした。シビルに言って少し資金を領主に回すように言っておくか、六十八人も人が増えたんだ、負担がかからないようにしておかないとな。

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