第153話 ドワーフという存在

 今日は気になったので、ヴローツマインの飛竜隊を見にリブロフの街に来ている。何だろな……それなりにカッコいいと思うワイバーンを知ってたからあれなんだろうけど、期待してたのと違った。


 なんていえばいいんだ? ゲームとかの竜騎士ってかっこいいじゃん? でもさ目の前にいるのって、ズングリムックリした髭もじゃのドワーフが、ファ○ナ○ファ○タ○ー4に出てくるような竜騎士の装備して、ワイバーンに乗る姿……幻滅した。


 でも、ヴローツマインではあの姿がドワーフ戦士の最高の姿という事になっている。まぁ機動力のないドワーフが機動力の高いワイバーンを従えて戦うのは理に適ってはいるが、俺の中での竜騎士のイメージが崩れてしまった。


 だが気を取り直して、あいさつに行くことにした。一応この街を解放した人間なのでちょっとした手続きで会わせてもらえることになった。まぁ奥の手も使ったけどね。さすがドワーフ、小説でよく書かれるように酒好きでよかった!


 でもさ、本当はそういう意図で渡したわけじゃないんだ。最初は少し用事があったようで明日になると言われたので、用意(召喚)しておいたお酒の樽を三種類(大吟醸・芋焼酎・泡盛)を渡しておいてくださいと言おうとしたら、ドドドドドッと走る音が聞こえて酒樽と一緒に連れていかれました。


 テンプレ通りなドワーフさんに囲まれて今は料理を出しています。携帯魔導コンロを取り出して唐揚げやフライドポテトを作っているけど、うまいうまいと作る端からドワーフたちの腹の中に納まっていく。


 塩コショウやレモン等色々試したが、人気が高かったのはタルタルソースとチキン南蛮風の味付けが気に入ったらしい。他にも、ドワーフと聞いていたのでもつ鍋とかも作っておいて正解だった。レシピを教えてくれとまで泣きつかれることになったのだ。


 このおかげで俺が考えていた土木系に特化したドワーフさんの紹介状を書いてもらえることになった。ただ紹介状よりも酒と唐揚げにもつ鍋をもってけば紹介状より効果が高いと言われた。


 竜騎士のステータスを覗いてわかったことは、テイムや調教等のスキルが全くない事だった。ワイバーンの方にもそれらしいスキルは無かった。どういう理由でワイバーンを操っているかがよくわからなかった。ただ分かったことは、ワイバーンは誰にでも懐くものではないという事だけだった。


 リブロフで世話をしようとしていた、リブロフの発着場の職員がワイバーンに威嚇されたらしい、俺は近付いても何ともなかった。何か基準でもあるのだろうか? DPで召喚した魔物は基本絶対服従だし、野生の魔物より数倍かわいい。よくわからないが竜騎士のドワーフに会いに来てよかった。


 ジャルジャンに帰ってくる時にふと思ったのが、カエデって半分ドワーフの血が流れているはずなのにお酒飲んでる姿あまり見ないよな。たまには飲んでるから嫌いってわけでも、飲めないわけでもないはずだからな、遠慮してるとかかな? とても気になる事だったので帰ってから聞いてみる事にした。


「カエデ、いるか~ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「シュウじゃない。どうしたの? あ! 分かった! やっとその気になってくれたのね、他の娘たちばっか気にかけるんだから! あぁ、ちょっと待って、それはやめてほしいかなと思うんだ。頭の中身がでちゃからお願い……私の体好きにしていいから。あっ、本当にごめんなさい」


 このノリ久しぶりだったな。見た目はど真ん中のストライクで性格だって悪くない。正直二人っきりで押し倒されたら、理性がいつまで持つかわからん。それは年長組の娘たちにも言えるんだけどな。


 このやり取りしてると二人で冒険者してた時を思い出すな。そんなに長い期間じゃなかったけどな。そういえばいつ頃からこのやり取り減ったっけ?カエデ専用の工房作ったあたりからかな?


「カエデ、小さい子だっているのにそういった発言は止めてくれ。聞きたい事っていうのは、お前ってお酒好きなのか?」


「前にも言ったことあると思うけど、女の子が奴隷になった際には早めに夜の勉強をさせられるのよ! すいませんでした。でお酒だっけ? 私も半分ドワーフだからね好きだよ。飲むとさ……ね。シュウが近くにいたら抑えがきかなくなりそうだから、一緒に行動するようになってからは控えてるわね」


「襲われるのは困るが、酒は無理に控えなくてもいいぞ? 四大精霊も飲み食いは必要ないけど、嗜好としてお酒とか飲んでるしな。それにカエデには迷惑かけてるからな、ご褒美っていうと変だけど気にせず飲んでいいぞ。シルキーたちが色々管理してるから言えば軽く食べる物と一緒にだしてくれるぞ」


「ご褒美なら、シュウからのチッスがほしいな……え? やだ、恥ずかしい! 本当にしてくれるなんて思わなかったから心の準備ができてなかったじゃない! たとえ頬でもいきなりは駄目よ!」


「いきなりって、ほしいっていったからしただけじゃんか。俺だって恥ずかしいんだぞ、でもそれだけ感謝してるから頬ならと思ってしたのに」


「嬉しいけど、不意打ちだけは止めて! お願いだから! もう、ドキドキが止まらないじゃない。で、お酒本当に飲んでもいいの? 飲みだしたら毎日飲んじゃうよ?」


「カエデにも言ってるだろ、DPが勝手に増えるんだからカエデの貢献を考えたら、お酒を毎日樽で飲んだって安いよ。シルキー特製おつまみだってつけてやるさ! 他の娘や俺に迷惑かけないように飲んでくれるならだけどな。ドワーフの中から引き抜けそうな人も連れてくるから、飲み仲間もできるぞ」


 鍛冶の聖地の名前を聞いたカエデは目の色を変えて俺の肩をつかんできた。あまりの早業に俺が反応すらできないとは……怖いからその目は止めてくれ。


「シュウ! もちろん私も連れてってくれるのよね?」


「もちろんだよ、ジャルジャンと同じように地下道でつなげる予定だから、そのうち自由に出入りできるようになるさ」


 その喜びようはすごかった。ちょっとびっくりしたよ。そんなにヴローツマインにいきたのかったのかな? それで喜んでくれるならいくらでも連れていこう。

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