第141話 良い事をした後は気分がいい
ミドリが時間になったと起こしに来てくれた。
「みんな~起床、これから深夜のお仕事に行くよ。ジャルジャンの人たちが被害にあった分の慰謝料を取り立てよう」
「ご主人様、その設定続けるんですか?」
「シュリ君、設定とは何かね? リブロフの商人と領主がジャルジャンを相手に、卑劣な事を行っていたのは純然たる事実だよ。だから慰謝料をもらうのは当然のことだ」
何となく納得のいかない様子のシュリだが、俺がそういったからどうでもよくなったようだ。
「ミドリ、地下に作る通路にお風呂もつけておくから準備してもらっていいかな? 今日は温泉の素を入れて入りたい気分だからよろしく。娘たちの方は好きなようにしてもらっていいから、準備お願いね。終わったらお風呂入って寝ててもいいよ、ミドリの好きな専用の寝床用意してあるから」
「っ!! ハンモックですか!? さすがご主人様です! 完璧に準備してから眠らせていただくのであります!」
「ハンモックにミドリが好きな、アンゴラウサギの毛から作った毛布もあるから使っていいよ」
感激に打ちひしがれているミドリを放置して、ダンジョン地下通路の準備を始める。
「みんなタブレット見てね。今回ターゲットとなる所は八ヵ所と領主館の計九ヵ所だね。そのうち領主館と後四ヵ所からは、商品以外の金品も慰謝料として徴収する予定です。マップ先生にはマークをしてあるので確認してね」
娘たちに盗みをさせると思うと心が痛むが、慰謝料の徴収なので気にする必要もないだろう。何しろジャルジャンの人を殺して奪った荷物で稼いで、塩でさらに荒稼ぎしてるやつらなんだから遠慮する必要もないしな。
小説でよく見るセリフだけど、命が軽い世界だ。それだけに自分勝手なことをしているやつらが許せんな。日本の価値観を押し付けるわけじゃないけど、一度知り合った嫌いじゃない相手に、酷い事をしてきた連中に遠慮する気はない。
この国の王に刺客を送り込まれてから、特に娘たちの事を最優先に考えているが、余裕がある状況であればライチェル王国のクソ共は、どうにか始末したいと考えている。今回の事はちょうどいいだろう。
死んで償え! とは言わない、死なずに苦しめ! 命の軽い世界で殺すことは救いでしかない、この世界で金のない人間がどうなるかなんて明らかだ。奴隷に落とされて、生きる気力を失う人間が多いくらいだ、荒稼ぎして周りの人間に迷惑かけている可能性が高いからいい気味だろうな。
生活水準の上がってしまった人間は、それをなかなか落とすことができない、そんな人間が奴隷になる。うん面白そうだ。その姿が見れないのが残念だけどね。リブロフで奴隷になっても、ん? 待てよ、リブロフで必ず買われるわけじゃないか? 国が管理してる奴隷商だからジャルジャンに来ることもないか?
「じゃぁ出発するよ。手順は昨日のやり方と同じだから、イリアには頑張ってもらわないとな。他のメンバーはイリアの魔法が効いたことを確認したら慰謝料にする商品を徴収いたしましょう」
娘たちがそろって、は~いっという声をあげて出発する。
ちゃっちゃと仕事を澄ましてお風呂につかりたいものだ。
はじめの家に着く。ここでは、商品と隠し部屋にある財産を慰謝料としていただきましょう。イリアの精霊魔法で家の中で寝ていた人達がさらに深い眠りについた。
えっと、隠し部屋への行き方は、この本棚を動かせばいいのかな? おぉ、正解ということで持っていきましょうかね。回収したから入口を消してからっと、次の家に行こうか。
淡々と残りの七件の慰謝料を回収していく。
さて最後、メインターゲットのヒキガエルの家だな。ここには羽振りの良かったリーファスの領主の館より、明らかに金目の物が多かったのだ。
リーファスより活気のない街でまともな特産も無さそうで、人口も少ない。明らかに不釣り合いな資産の量、どれだけジャルジャンの人や、この街の人から搾り取ったんだよ。無くなった時の顔が見てみたいけどさすがに無理だよな。
無駄に広い屋敷の中を歩いていく、ん? 起きてるやつがいるだと! イリアの魔法が効かなかったのか? 可能性としては耐性スキルか装備で無効になってるか? 可能性が高いのは、耐性スキルを持ってる方かな? でも今見つかるわけにはいかないからな。
隠密と忍び足で様子をうかがうために近付く……マップ先生でわかってる限り同じ部屋には人がいない。この屋敷の異変に気付いている様子は無い、ならば隙を見て気絶させるべきだな。
ということで、抜き足、差し足、忍び足っと、ノンビリとしている夜番の兵士っぽい人に近付いてっと、気絶させると言えばこれだよな【スタンガン】。部屋にバチンッと音が響き渡り、兵士っぽい人が気絶する。若干煙出てるけど死んでないよな? よしっ脈も問題ないし死んでない。
隠し部屋は、どうやって入んだこれ? 立体マップ先生見てもそれらしい場所がない? 無駄に金かけてギミック作ったんだろうな。しょうがない裏技で行こうか。【クリエイトゴーレム】で、隠し部屋への道を潜り抜けれるサイズで作ってから、残骸を収納の腕輪にしまっておく。
シェリルを呼んで中の物を根こそぎ回収してもらった。シェリルが出てきたところで新しく【クリエイトゴーレム】をつかって、壁全体にかけて、穴をあけたところを塞いでいく。これで密室完成!? という事でこの屋敷にもう用は無い。みんなに撤収の指示を出して拠点へと戻っていく。
ミドリは、しっかりとお風呂の準備をしてくれていた。しかも上がった後に飲むための、コーヒー牛乳も用意してくれている。抜かりなく準備してくれているあたり、シルキーの技量と気遣いの高さを感じる。グッジョブだミドリ!
俺は、乳白色の温泉の素を入れて、存分にお風呂を楽しんだ。寝てたニコとハクも起こして一緒に入ったよ。起こされて若干不機嫌だったが、お風呂で洗ってやると言ったら、ニコはちぎれるんじゃないかと思うほど伸び縮みして、ハクはその場でクルクル回りだしたのだ。飼い主に似たのだろうか?
お風呂が好きになってくれて俺たちには嬉しい。ギンとクロもお風呂好きである。俺がいない間も残っている娘たちに毎日お風呂に入れてもらい、綺麗にしてもらっているようだ。
毎日入って肌の調子が悪くなったりしないか心配だったが、魔物にはそういう事は関係ないようだった。まぁ魔物が皮膚病で戦力ダウンなんて話聞いた事ねえしな。
今日するべきことはもう終わった。明日も早く起きなきゃいけないからな! おっとあぶねえ、きちんとダンジョン地下通路潰しておかないとな。ピッポッパ、これで完璧! いいことした後は気分がいいね、これでぐっすり寝れる。おやすみ!
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