第140話 悪事を働けば跳ね返ってくる(無理やり跳ね返しているともいえる)

「リブロフに到着、まぁ来たくて来たわけじゃないけどな。そう考えると新しい街に来たのに全然感動しないな」


「落ち着いてくださいご主人様。ヒキガエルの父親が治めてる街ですし、期待しても仕方がないと思います。それより、門番たちがジャルジャンから来たことをかなり驚いてましたね。あの盗賊モドキは門番クラスにも、知られている事実なのでしょうか?」


「多分違うんじゃないか? しばらく来てなかったジャルジャンからの商人、ってことで驚いてたんじゃないか? 話を聞く限りでは、盗賊モドキに狙われてたのは、ジャルジャンとを往復してた商隊だけだって話だしな」


「この街はいささか活気がないように思われますね。その割にヒキガエルの金遣いは荒かったかと思います。私が商人でしたらこの街の領主には、お金を貸したくないですね。使われていたお金は、ジャルジャンの商人たちから巻き上げた商品と、ジャルジャンで塩を暴利で売って稼いだものでしょうか?」


「まぁここまで状況証拠が揃ってたら間違いなく黒だよな。まぁ黒じゃなくても人が生きる上で必要な塩を足元見て高値で売るとか、さすがにやり過ぎてるよな。


 今日中にやることやって明日の朝には出発するから、キリキリとやることこなしていこう。シュリ、マップ先生にフェピーの言っていた場所をマークしておいたから向かってくれ」


 シュリに指示を出してフェピーの言っていた場所へ向かってもらう。マップ先生で見る限りかなり大きな家に倉庫が並んでるんだよな。あそこに持って帰る荷物が入れてあるのかな? 一応四人分の収納のカバンを用意してるから問題なく全部持ってけれるだろうけど。


「すんません! ここにシビルさんっていらっしゃいますか?」


「……どちら様ですか?」


「あ~これ見てもらったら分かると思いますので、読んでみてください」


 フェピーに渡された書類を出てきた女性に渡す。


「そういう事でしたか、私がシビルです。ジェルジャンに荷物を運んでくださるそうでとても助かります」


「明日の朝には出ていくつもりですので、今からでも荷物を見せてもらっていいですか? 後、ヒキガエル男爵の息のかかってる商人や、最近羽振りのいい商人がいたら教えてもらいたい」


「荷物の方は、今すぐにでもお見せできますが、商人に関してはどういう事でしょうか?」


 フェピーから聞いた話をして、拡大解釈を使い今まで盗まれたものを返してもらう、という流れでシビルさんにお話しすると、シビルは悪い笑顔になり今まで調べていたリブロフの悪を洗いざらい話してくれた。


「あなたも結構黒い事考えていますね」


「いえいえ、あなたほどではありませんよ」


 どっかの時代劇で出てきそうなセリフをお互いに言い合っていた。


 それにしても、ここまですんなりと情報が手に入れられたのは、仕組まれてる? 本当に領主が恨まれているのか? どう考えても後者だな。ヒキガエルを見れば明らかに、質の悪い貴族の部類だってわかるもんな。


 あのヒキガエルに、無理やり連れてかれた女の子も多いんだろうな。あの顔を思いだしたらイラついてきた。せめてイケメンなら……いいのか? あんな出来の悪い両生類に抱かれるのは可哀そうだよな……いや、これだと両生類に失礼か。


「じゃぁここの荷物全部収めますね。みんな任せたよ。俺たちが休める場所を用意してくれるって聞いてたんですが、どこに行けばいいですか?」


「いくつか候補を用意してあります。母屋の部屋、離れの部屋、倉庫の上にあるフリースペースなんかも使えますが、希望があれば宿を借り上げますがどうなさいますか?」


「ちょっと倉庫の上のフリースペースってのが気になるな。キッチンは自前であるから食事の準備はしなくていいよ。ベッドも持ってきてるし気を使わなくていいから、ゆっくりできる場所の方が助かる」


 まさか部屋や宿以外にも場所を考えてくれているとは、この人かなり有能じゃないか? こんな人を俺たちの街に呼んでこれれば、俺の街の管理もしやすくなるんじゃないだろうか?


 娘たちが荷物をしまっている倉庫の上へあがっていく。フリースペースというから、部屋になってないと思っていたが、きちんと部屋になっている。というかこの倉庫は、住居兼倉庫として使える程の物だった。思っていたよりいいものだな。


 さて、教えてもらった商人の家や倉庫をマークして、ついでにヒキガエルの家も倉庫もマークしておくか。どういう順に攻めていこっかな? ってどの道全部をダンジョン地下通路でつなげるんだから一緒か。それよりそいつらの家にある物をしっかりと調べとかないとな。


 どんだけ荒稼ぎしてんだ? 他の商家に比べても明らかにおかしい資産がある。商人の家には塩もかなりの量が置いてある。他に積んである商品を見ても、塩を中心に商っている者ではないと思われる。


 リブロフの街で塩を商っている商家すべて、商品の八割以上を塩で占めているのだ。ジャルジャンで売れば稼げることを知ってるから、怪しまれない範囲で購入でもしてんのか? やり方がゲスイな。


 ミドリの用意してくれた夕食を食べてから、ミーティングをはじめる。


 マップ先生にマークをしておいたので、タブレットで確認をするようにいう。来る途中に商隊の馬車から荷物を返してもらった時と同じように、イリアの魔法から開始して家にある金目の物は、盗賊モドキに殺されたり、盗まれたりした者の家族の慰謝料として返してもらおうか。


 もちろん、領主の家にある明らかに隠し部屋、と言わんばかりの部屋にある金品も慰謝料にさせてもらおう。この世界の人間は隠し部屋が好きなんだろうか? 確か地球ではかつて、税金逃れとかで像の中に金品を隠したとか隠してないとか。


 みんなに説明も終わり、行動を開始する深夜になるまで寝る事にした。ベッドを出すとみんなが集まってきて一緒に横になるようだ。ミドリは明日の朝食の仕込みをするらしいので、時間になったら起こしてもらう事にした。

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