第139話 リブロフの街に到着

 朝起きると胃がもたれている事もなく、快調だった。みんなはもう起きておりいつも通り俺が最後の起床だった。そういえば今日は誰に起こされることもなく自分で起きたな。まぁ早く寝たしたまにはそういう日もあるよな。


 娘たちが寝不足になってないといいけど……食堂へ行くといつも通りビュッフェ形式の食事が準備されている。


「そだミドリ、今日は一緒についてってもらうけど問題ないか? 早ければ明日の夕方には帰ってくることになるんだけど、もしものために食事は自分たちで用意しておきたいからお願いしてもいいかな?」


「了解しました。準備しておいたものはキッチン馬車に積んでおけばよろしいですか?」


「そうだな、娘たちにも手伝ってもらって、一緒に乗せておいてくれ。後で収納のカバンにしまうから。マップ先生で人の確認をしながら行くから、今回はドッキングさせて移動するつもりだ。お茶とかおかし作るのに使わせてもらうけどよろしく」


「そんなことでしたら私がやりますのに」


「ミドリには美味しい食事を用意してもらいたいから、専念してもらえたら嬉しいなって思ってるんだよ。どうしても譲れないなら頼むけど」


「わかりました。ご主人様のお口に合うお食事を作らせていただきます。馬車での移動という事ですので、お昼はポタージュ系に各種サンドイッチやハンバーガーでよろしいでしょうか?」


「もちろんOKだよ。照り焼きチキンとツナマヨはお願いしたい」


「大丈夫です。きちんとメニューに入れてありますよ。ハムたっぷりのレタスサンドも準備する予定です。他は、みんなと相談して決めますね」


「さすがミドリ! 移動中は、リブロフの街の情報でも手に入れとくか。食事終わった人から準備始めてくれ。この家はダンマスの力を使って、入りにくくしておけばいっか?


 えっと、トラップ方式の扉に変えて、条件付けをすれば、これで問題なし! 鍵を使って開けないと設置したリビングアーマーに襲われるっとこれでいいだろう」


 フェピーにもらった書類を確認して、準備の終わった馬車へと乗り込む。


 昨日盗賊を退治したから、今日は何もないよな。移動は早いけどのんびりとした道中になりそうだな。とりあえず、ライチェル王国に入った先、盗賊(笑)を捕らえたところよりちょっと先に五台ほど馬車がいる?


 これがフェピーの言っていたリブロフの商隊だろう。ジャルジャンの商隊が例の盗賊(笑)に襲われるようになってから、来る回数が増えて塩等生きていくうえで大切なものを運んできてくれるのだが、毎回暴利を貪っていくとの事だ。


 もっと分かりにくくやればいいのにな、おそらくリブロフの商隊が売った塩は、ジャルジャンの商隊から奪ったものなんだろうな。ん? それなら俺らも奪っちまうか? 収納のカバンもあるし、確か隠密や忍び足みたいなニンジャ的なのが使うスキルもあったからちょっと覚えてみるか。


「ご主人様~何かスキル覚えるの?」


「そうだね、リブロフの悪徳商人を懲らしめるために、ちょっと覚えようと思ってね」


「悪徳商人?」


「シェリル、うちで出されてる料理は美味しいよね? 栄養のバランスも考えて作られているよね? その中で一番大事だと言ってもいい、塩を昨日捕まえた盗賊たちが盗んでたんだよ。リブロフの領主が盗んだ塩を、そのままリブロフの商会の人間を使ってジャルジャンまで運んでたのね。


 殺して盗むのも問題だけど、大切な塩をジャルジャンの街で高く売って、暴利を貪ってた悪いやつらなんだよ。だから制裁を加えるためにな」


「悪いやつなんだね、懲らしめちゃおう!」


「そうだな、悪者は懲らしめよう。みんな話は聞いてたと思うけど、こいつらはおそらくこの地点で野営をすると思うから、俺たちは見つからない様にこの森の近くに移動して、そこで野営をしようと思います。


 今日の野営は、獣道の森の時みたいに地下に部屋を作ってそこで過ごそうと思う。キッチンは収納のカバンに入れて来た馬車を使う予定だから、みんなと過ごす部屋と寝る部屋、お風呂位かな今回は、夜までは時間あるからゲームでもしてあそぼっか」


 野営のポイントまで到着して、ミドリの準備してくれたお昼を食べると、ゲーム大会が始まった。


 今回は【GO BEYOND DEATH~絶望を焚べよ~】の売り文句で発売された、死に覚えゲー第二作目を二チームに分かれて、どっちが多くBOSSを倒せるかを対決してもらう。わざと二チームを並べて、お互いの攻略法とかを研究させながら進めていくスタイルにした。


 もうね、すごかった。娘たちの口が悪くなってどうしようかと思ったけど、全体的にゲームを楽しんでくれたみたいでよかった。みんなの所に戻ったらあっちでもゲーム大会するか、RPGの初見タイムアタックとか悪くないかな。


 今回の勝負は、引き分けで終わった。まぁ対決という形をとったが、優劣をつけないためにわざと並べてゲームさせたかいがあったな。


 夕食も食べ終わってリブロフの商隊の様子をマップ先生で確認する。予想通りの位置にいて、もう就寝かな? 十人の内二人がテントの外だと思われるとこにいる、見張りだろう。二つのテントの中には四人ずつに分かれて人が入っているから、おそらく寝ているだろう。


「さて、向こうの方はどうやら寝たみたいなので、向こうの野営地近くまでダンジョンで穴を掘って行こう。向こうに着いたらイリアの魔法で追加で眠らせてから荷物を返してもらおうか」


 さくっと通路を作って、静かに接近してからイリアに精霊魔法を使ってもらい、リブロフの商隊には深い眠りについてもらう。


「さて、盗賊の仲間たちが寝ているみたいなので盗まれた荷物を取り返しておこう。馬車が五台あるから手分けしてくれ。全部なくなってるとさすがにバレると思うので、来る前に言ったように中身だけすり替えてやるぞ。


 入れとくのはさっき掘っておいた土でいいからな。塩は用意しておいた壺に移しておいてね。じゃぁさくっと行動開始だよ」


 俺も娘たちの作業に加わって、ジャルジャンの商隊から奪った塩やら荷物やらを返していただく。その時に奪った商品ではない物もあるだろうけど、そこは誤差のうちだろう。


 こいつらが商売を始める時にどんな顔をするか見てみたいけど、今回はあきらめよう。その代り、フェピーにその時の様子を聞き出してもらって、一緒に笑うのもいいかな?


 ついでにヒキガエル男爵の家の金目の物も、今までの慰謝料ってことで返してもらおう。俺のダンマスのスキルとイリアの精霊魔法があれば、強い種族やレベルの高い人間、抵抗力の上がる装備をつけている者以外は完封できるだろう。


 そんな相手はライチェル王国でも王都にしかいないだろう。後は、シングル以上の冒険者も、油断をしてない限りは眠らせるのは無理かな?


 まぁ、リブロフに着いたらフェピーの手配してくれた所で街の情報を教えてもらうか。ジャルジャンに対してあくどい商売をしてるところは、慰謝料の一部として潰しておきたいものだ。


「よし、全部返してもらったね。じゃあ撤収。帰って風呂入って寝よっか、明日は朝早く出発して、そのままリブロフの街に入るからね」


 は~い、という返事が聞こえたので娘達を連れて部屋へと戻る。戻った後は、通路を潰して終わりっと。


 次の日は宣言通り朝早く出発し、リブロフの街へは日が落ちる前に到着できた。

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