第128話 敵襲

 昨日は娘たちと食堂で騒いでから、趣味部屋で日付がかわる時間まで遊び倒した。朝目覚めるとモフモフに包まれているのは分かるのだが、なぜ顔までモフモフに包まれているのかわからなかった。夢の中で目が覚めたとかじゃねえよな?


 体を起こして周りを確認すると、俺の顔のあった両側にコウとソウが陣取っており、長い尻尾のモフモフが俺の顔にのっかっていたようで、顔までモフモフに包まれていたようだ。


 まわりには、コウとソウ以外にも、ニコ、ハク、クロ、ギン、ニャンコズまでわらわらと集まっていた。ニャンコズはコウとソウのいる場所に集中しており、俺の頭付近には天国が広がっていたようだ。


 一匹一匹モフり倒しながら英気を養っていく。クロとギンは大きかったのでモフるというよりは、わしゃわしゃ撫でまわした感じだが、久しぶりにやったためか非常に喜んでおり、二匹に押し倒されて顔をペロペロされてしまった。


 そしてニャンコよ、さりげなく俺の足の間やわきの下、お腹の上で二度寝の体制に入らないの。


 舐められて顔がベタベタになってしまったので、トイレの前にある洗面所に向かい顔を洗っていると足元にモフモフがいる事に気が付いた。俺の足を嗅ぐんじゃない! しっかり毎日お風呂入ってるし、体も洗ってる! その上、水虫になるであろう病原菌は回復魔法で除去しているので完璧だ!


 あっ、でも間違えないでね、向こうの世界で水虫だったわけじゃないよ。こっちに来た当初蒸れる革靴しかなかったから、気にかけてたら回復魔法は効果があるって教えてもらって、こまめにかけるようにしてるだけだからね。でも今は、自重しないでオレンジ色の運動靴っぽい物をはいてるけどな。


 足元にいたニャンコをかまっていると、アマレロが俺を探しに来た。お部屋にいなかったので手分けして探していたようだ。確かにトイレにいますかーなんていきなり来ないもんな。おかげで、いくら綺麗なトイレでもペットで時間を潰さないでください、と怒られてしまった。


 時間潰してたんじゃなくて有効利用していただけだよ。アマレロに引っ張られる形で食堂に到着すると、探しに行っていたみんなが集まってきた。朝食が冷めないうちに食べてしまおう。


 いつもと同じビュッフェ形式だけど、日によって微妙にメニューが違うから嬉しいな。別に種類が同じでもビュッフェ形式なら、気にする必要ない気がするんだけどね。ちなみにミリーや奴隷一家に新人たちも食堂で食べているので、かなり狭く感じている。


 先輩の娘たち以外は、朝からこんなにいいものを食べていいのか、恐縮している形だがスカーレット曰く、「シュリの分も合わせて六十人分くらい毎日作ってたので、十人や二十人増えたところで大した手間ではない」とのこと。


 問題があるとすれば、キッチンのシステムが人数にあっていない事だと。よし、増設しよう。娘たちには根っこ掘りをさせ、新人たちや奴隷一家、ミリーたちには修行をさせている間に、シルキーたちの意見を取り入れて改装してしまおう。


「みんなには、引き続き開拓の続きと修行をしてもらって、シルキーたちには新しいというか、キッチンの増設と新しい食堂を考えてもらう。どのくらいのサイズで、どのくらいの設備がほしいか後で教えてね。根っこ掘りの魔法使い組は、地面に直接干渉して地形の変わるの方法で魔法を使うのは避けてね。


 イメージ的には、畑を作った時の土を柔らかくする、空気を入れる感じで魔法を使ってほしい。そうしないと後で地面とかに、魔法の行使が上手くできなくなるから注意して。物理組は掘り返す形になるだろうから頑張って。ノーマンとドリアードたちも手伝いに回すからお願い。じゃぁ今日もがんばろ~」


 おー!! と掛け声を聞きながら十一日目がスタートする。


 まず初めに、シルキーたちの意見を聞かないとな。単純に今あるキッチンの規模を大きくしてほしいというのが、シルキーたちの希望だった。


 可能なら新しい調理器具も入れてほしいとのことで、大型のオーブンを四個、窯を三個、パンを焼く大型の機械を二個設置し、汁物用に大きな鍋を置けるコンロを追加で六個、合わせて十個になった。


 汁物のコンロが何でこんなに必要か聞いたら、調理に時間のかかるものが多いので、最近は単調になりがちだったのです……と、いろんなものが出てきてたはずだけど、あれで単調なのだろうか?


 そういえば、人も増えてきたしシルキーを増やそうか? ここは新しい種族にするべきかな。家精霊といえば、ブラウニーも確かいたし、そっちを召喚してみようかな? シルキーたちに聞くと、性質は違うけど家に住み着く精霊として付き合ってたとの事。


 精霊たちってどこにすんでるんだろ? そもそもどこから召喚されてるんだ? シルクちゃんとツィード君を呼んだ時にも思ったけど、召喚した相手がたまたま知り合いってわけじゃねえよな? 今度聞いてみるか。ただ今はまだ落ち着いてないから召喚しないでほしいとのことだった。


 何かあるのかな? まぁいいや、キッチンを作り替えたので、今日のお昼はバーベキューにでもしようかと話したら、シルキーたちもノリノリだったので食材調達を命じた。


 俺はバーベキューの準備をしていると、午前の作業が終わった娘たちが帰ってきた。外で何かしている俺を見つけると、今日のお昼の予想がついたようではしゃぎだしている。この世界でもバーベキューには、人を熱くする何かがあるのだろう。


 俺も河原でバーベキューとかするの好きだったしな。荷物は親たちに運んでもらって、みんなで自転車とかでいったな。シルキーたちが食材の処理を終えたようで、バーベキューが開始となる。


 庭には、バーベキューの暴力的なまでにいい匂いが漂っている。河原でのバーベキューじゃないけど、わいわい食べるのは楽しいね。


 匂いを嗅ぎつけた従魔たちや猫たちもぞろぞろやってきて、食事をねだっていた。シルキーたちはこれも予想していたようで、ちゃんと猫用の食材も準備していた。さすがっす、シルキーパイセン!


 バーベキューの中盤? 中頃になると、猫たちが何かに怯えだした。急にギンやクロのそばに行って、身を寄せ合っていた。どうしたんだ?


「ご主人様、山の方から何か飛んできますよ?」


 誰の発言だったのだろう? 慌てて山の方を見ると確かに何か飛んでいる。あえて表現するなら、プテラノドン? あたりが一番近いだろうか? 多分だけどあいつはワイバーンだろう。マップ先生で確認すれば一発だ。


 あれ? 映ってないんですけど? あいつらってそんなに隠密性が高かったりするのか? そういえば、奴隷兵の特別チームの装備どうしたっけ? イカンイカン、なんでマップに映ってないのか考えてワイバーンと思われる飛行物をみる。


 あれ? そういえば、獣道の森にも何匹か鳥型の魔物から奇襲を受けたな、あれって早いだけじゃなくてマップ先生に映ってなかっただけか? となると、掌握しているエリアの上空でも感知はできないって線が濃厚か?


「え~っと、無粋にも俺たちの昼を邪魔しに来た飛行物を殲滅しましょう。慈悲はありません、全力で行きます。戦闘準備」


 俺の掛け声で武器を取り出し始めた娘たち。


「ちょ、ちょっとシュウ君!? あれワイバーンよ? ランクでいったらAの最上位、Sランクでもおかしくないって人がいるくらいの強敵よ? いったんダンジョンに逃げましょ?」


「お? あれってやっぱりワイバーンなんだ。Sランクってどうせ、飛行してて倒しにくい上に尻尾の毒針やブレスで一方的にやられるからの評価じゃないの? 俺たちの戦場に引きずり込めば、良くてもAランクにひっかかる位の戦闘力だと思いますよ」


 ミリーがさらに何かを言っているが、ワイバーンが戦闘距離に入ったので何かをさせれる前に攻撃を開始する。


「魔法組、ワイバーンの上から圧縮した空気を叩きつける感じで魔法を使用、カウント〇で発動。前衛は、ワイバーンが落ちてきたところに接近して可能なら首を落とせ、尻尾に注意しろよ。三・二・一・〇」


 魔法が発動すると、ワイバーンが体勢を崩して落下していく。表情は分からないがかなり焦っている様子だった。


 ドゴッ


 鈍い着地音とともに動かなくなった……え? 不時着して打ちどころ悪くて死んだ?


「ご主人様~、死んでる~。初めての敵だったから、シェリルの攻撃が効くか試したかったのにな~」


 うん、落下死したらしい。羽を広げれば八m以上あるだろう、結構デカかったな。ドロップ品を収納のカバンにぶち込んでバーベキューを再開する。ミリーは唖然とした表情で、しばらく固まったままだった。早く戻ってこないと飯が無くなるぞ。

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