第118話 忍び寄る影

 娘達の準備は終わっており、後は三家族とミリーを待つ感じか。


 とりあえず、馬車は後二つは用意しておいた方がいいだろうか? もし使わなかったらダンジョンに突っ込んだままにしておけば、キャスリングでそのまま移動できるしそれでいいだろう。同じ仕様の馬車を二台召喚して、それに合わせるウォーホースも召喚する。


 同行するのは、ニコ・ハク・クロ・ギンと四大精霊のノーマン・ガルド・アクア・メイでいいかな? おっと食事の準備のシルキーたちを忘れてた、あぶねえ。他の精霊や魔獣はキャスリングで一緒に移動してもらおう。ダンジョン農園や牧場、生け簀は召喚しておいた精霊たちには引き続き管理しておいてもらおう。


 収穫などの作業は精霊たちに全部やらせるのは難しいので、以前から使っていたクリエイトゴーレムで作り、クレイゴーレムに魔核を埋め込んである程度の行動パターンを書き込み、精霊たちの命令をきくようにしておく。


 それにしてもミリーさんは、あんなに簡単に仕事を辞めて、俺たちについて来るって言ったのだろうか?ギルドの受付がどのくらいの給料をもらっているかわからないが、俺たちが上級貴族よりいい生活ができている事を考えれば、そういう面でミリーさんには損はないだろうけど……


 色んな付き合いもあるだろうになんでだろ? ミリーさんは可愛いから俺的には大歓迎ではあるが、また女子が増えちゃったな。


 どこまで教えておこうかな? 地下に通路を作って進む予定だし、樹海の中心に近いところに街を作る予定だから道中に説明しようか?


 危険に巻き込んじゃうだろうな、一応いくつか隠し玉は用意してあるけど……あまり使いたくないんだよな、ファンタジーの世界に現代兵器だもんな。


 俺も準備を始めようかと思ったが、服以外持ち運ぶものがなかった。だってゲームは電気がないから到着するまでできないし、本は基本ぶっ君とかぶる物しかないからキャスリングでそのまま運べばいいし、本当に武器防具と身の回りの物くらいだな。


 念のため、もう一つ考えておいた隠し玉も召喚しておこう。おそらく使う機会は無いだろうが念のため、対策なしにくらえばまず間違いなく死ぬだろう。DPでカスタムして小型化しているとはいえ、密室空間で使えば間違いなく倒せる。


 対策としては、魔法で壁を作ってあれをつけておけば大丈夫なはずだ。使うためにはシュリに協力してもらわないと無理だから、シュリに話をしておこう。後ライムの支援もないと一手遅れるからそこらへんも話しておかないとな。


 奴隷の三家族はどうするんだろうな? いずれ街を作る事を考えれば、農家の一家も元貴族の家臣の一家もいてもらえた方が助かるんだよな。危険が付きまとうのは解ってるはずだから、子供がいるし付いてこない可能性の方が高いかな?


「ご主人様、食材は何日分くらい準備しておきましょうか?」


「ん? スカーレットか、とりあえず二週間分くらいなら問題なくもっていけるか?」


「持っていくのであれば、一ヶ月分でも問題ありませんよ」


「そっか、ダンマスだと知られる分にはいいんだけど、DPでの召喚はできれば知られたくないから、多めにお願いしてもいいかな?」


「了解であります。食材を入れるカバンに限界まで入れておきます。今から熟成肉と加工肉、通常の肉も含めて色々な食材を仕入れておきます」


 スカーレット、なぜ肉の種類を地味に分けて発言したんだ? 他のシルキーたちを連れて世界樹のダンジョンに突入していった。


 まぁ健康な食生活を送るのには確かに肉は必要だよな。あ! 調味料も各種準備しておこうか、ついでに粒状の出汁やコンソメ、鶏ガラなんかも出しておこう。さすがに移動中は料理はできないだろうから。


 待てよ、移動用の車キッチンみたいに馬車キッチンを作ればいいんじゃね? 少し大きめの箱馬車に魔導キッチンを召喚すれば、思う存分シルキーたちが料理できるな。いいこと思いついた! という事でシルキーたちが食材を調達してきたら、魔導システムキッチンの仕様を決めよう。


 戻ってきたシルキーたちに魔導システムキッチンの話をしたら、キラキラした目で俺のことを見つめてきた。嬉しいのは分かったけど、近い! 近い! ちょっと離れてくれ! 体にくっついて俺を見上げてる状態だ。


 準備した箱馬車は貴族とかが使うようなきらびやかなものじゃない、魔導システムキッチンをつむことを前提にカスタムしたものだ。


 俺たちの持っている馬車より大分重くなっているため、足回り等はかなり強化している。振動も可能な限り抑えられるようにショック吸収機構に、タイヤには魔物の革でタイヤのすり減りとショックの軽減している。


 シルキーたちはウキウキしながらキッチン用品を馬車の中に入れて、今日は何にしようかと微笑ましく話していた。


 ノンビリその様子を眺めていると、奴隷一家の父親たちが俺への返事をしに来たと呼ばれ、ほとんど使ったことのない応接間に通してもらって俺も向かう事にした。


 予想を裏切るように、全部の家族がついてくるとのことだった。理由は、農家の一家は娘を治してくれた俺に一生ついていきますと。その娘が危険にさらされるかもしれないんだけどな。


 貴族の家臣だった二家族は、俺について行けば思いもよらない体験ができる、とのことでついてくることになった。娘、息子たちはある程度の自活ができる状態になって、どこかに行きたいと思うのなら送り出してあげようと思っているけどな。


 それにしても全家族がついてきてくれるとは、非常に知識的に助かることがあるので嬉しいな。


 三家族にも準備をするように伝え、三家族の荷物で馬車一つ分は持っていけることを伝える。奴隷であるため、大した荷物はないので特に問題はなさそうだった。


 馬車に荷物を積み終わると、まわりはもう暗くなっていた。


 夕食の時間になる頃にミリーさんが俺の家についた。荷物をまとめるのは、収納の腕輪ですぐにおわったけど、部屋の解約や周囲の人へのあいさつに時間がかかって、この時間になったみたいだ。


「本当についてくるんですね、もしかしたら来ないんじゃないかと思ってたりしましたが、そんなことはなかったみたいですね。そろそろ夕食になるので食堂へ行きましょうか」


 奴隷家族も呼んで食堂でみんなで食事をとることにしたが、その時に精霊のシルキーや四大精霊を見て、目を見開いて口をパクパクする一幕があった。この家では普通の事だけど精霊って、やっぱり普通の人には刺激が強いのかな?


 食事も終わったので、明日の朝一で出発することを伝えた。


 街も寝静まり満月が空で輝いている中、俺の家の周囲に怪しく動く影が近づいていた。

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