第116話 色々準備

 理由は分からないが国王に狙われていると知った俺は、すたこら逃げる準備をはじめていた。フレデリクの街にも愛着はあるが、国家反逆罪で捕まれば娘たちともお別れになるし、何より娘たちにも国家反逆罪が適応されてしまうとのことだ。それなら愛着がある街など捨ててしまおう。


 リーファスにいた新人たちも、こちらへ戻ってきている。みんなを食堂に集めて会議を始める。


「みんな、ケープマインで俺たちを襲撃した奴隷兵の言葉では、おそらく俺は国家反逆罪が適用されるらしいとのことだ。という事で、夜逃げじゃないけどフレデリクというかライチェル王国から逃げようと思います。それでなんだけど、もしついてきたくない人がいたら、言ってほしいんだけど誰かいるかな?」


 誰も返事をしない……無言でなんとも言えない空気が漂っている。


「えっと、遠慮しなくていいんだけど?」


 カエデが手を上げて発言をしたいと。娘たちに向かって何か言ってくれるのだろう。


「シュウ、発言の許可ありがと。でも、あんた馬鹿ね。正直に言うけど、ここの生活って上級貴族の生活より上の可能性があるんだよ? 貴族よりいい生活をして、その上に自分のしたいことをさせてもらって、戦闘訓練もさせてもらえているの。


 これがどれだけこの娘たちにとって素晴らしい事か分かるかしら? まぁ分からないから、こういう事いちいち聞いてるのよね……ここにいる人間全員、国家反逆罪になったとしてもシュウに付いていくわよ」


「あ……そうなんだ。みんなついてくるってことでいいのかな? 何かあったら後でこっそり教えてね。じゃぁ、次の議題! ライチェル王国から逃げるのはいいんだけど何処へ行こうか迷ってます。


 一応候補としては、魔物の住む森の中にDPで街らしきものを作っちゃおうかと考えています。一番の候補が、三大国の中心にある樹海を考えていますが、他に候補地みたいなのありますか?」


「は~ぃ。樹海はいいと思うの! でも、強い魔物が沢山いるって聞いてるけど危なくないの?」


「あ~そこは心配だよね。樹海の真ん中にリーファス位のサイズのエリアで、土地を持ち上げてさらに塀で囲んで簡単に侵入できない様にする予定。後は可能な限りエリア掌握して魔物の位置を把握する予定だよ」


 みんながなる程、といった感じでうんうんと頷いている。


「あれ? ご主人様~そこまではどうやって移動するの?」


「それはね、獣道の森の時の様にDPで地下に道を掘っていくつもりだね。ある程度は埋めなおすけどね」


 みんなもあの方法か! と思い出していた。思い出した感じからすると、普通に進んでいくつもりだったのかな? 新人組は話についていけていないが。


 ピーチが他の国に行っても、同じことに巻き込まれる可能性があるので、手の届かない場所に行くのは理にかなっていると思います! と硬い発言をしていた。


「街を作る予定だけど移住したい人が多いわけもないし、樹海の真ん中だしね。街がある程度完成したら、ある程度常識のある奴隷をいろんな国から買い集めようかと思ってる。この前買ったあの家族たちと同じ境遇の人たちをさ」


 一応頭の中で考えていることを、つらつらとみんなに説明していく。計画の一部として、俺達が開拓したって街の近くにたまたまダンジョンがあったって流れにするつもりだと説明する。


 街の下にはフレデリクみたいに下水を作る予定だし、この家の地下にあるダンジョンINダンジョンやダンジョン農園・牧場なども作る予定なので街の外になる位置に見つけたダンジョンを。


 色々と足りないものや考えもしない事が起こるだろうけど、しばらくはDPで解決してもいいわけで特に問題はないだろう。


 色々説明をした後にピーチが、


「この家を捨てていかなくてはならないんですね」


 と、しみじみつぶやいたのを聞いて、他の娘たちもしょんぼりとして肩を落としてしまった。確かに思い入れのある家だけど、持ち運べるわけもなくあきらめるしかないだろう。こういった時にダンマスの力の発揮しどころだろ! チビ神何とかしやがれ!


『ちょっと今度は何よ? それとチビじゃないって何度言えばわかるのかしら?」


 おっと、普通にチビ神が召喚できたな。


 お前らの作ったダンジョンで、強化された奴隷兵に狙われて大変なんだよな。注意するのがシングル以上の冒険者みたいなこと言ってたくせに、人外がゴロゴロいるじゃねえか! そいつらを返り討ちにしたら今度は国家反逆罪になるっぽいし、この家に愛着があるのにどうにもならねえから愚痴こぼしてんだよ。


『うわ……完全にとばっちり受けた感じね。あんたレベル二〇〇超えてたわよね? 私もしっかりとは覚えてないんだけど、ダンマスのメニューか特殊アイテム的なもので、キャスリングってのがあってダンジョンを作った時に使ったDPの、十分の一を消費すれば任意の場所に移せるわよ』


「はぁ? そんなコマンド無かったから、アイテム召喚になんかあるのか?」


 チビ神に言われたので、それっぽい条件検索したら普通に【キャスリング】ってあったし、ってかチェスのキャスリングって王を移動させる何かだったよな? うん、向こうの世界での常識は通じないんだった、忘れよう。


 確かにキャスリングってアイテムあったよ。でもきちんとした効果が分からないんだが? DP払う以外の条件はなんだ?


『そうね、正確には入れ替える物だから入れ替える先が、自分以外にエリア掌握されてたら無理ね。他には、人間種がダンジョン内にいると、キャスリングは使えなかったはずね。全部入れ替えるから、中にいる魔物や人間種以外の動物も一緒に移動になるわ。そのくらいだったはずよ』


 予想以上に俺にはリスクの少ないシステムだな。キャスリングのアイテム自体が若干高いが、DPに余裕のある俺には問題は無い! ちなみに十万DPもするようだ。


 チビ神にしては珍しく役に立ったな! お前の事少し好きになれそうかも。


『ちょ! 何言ってるのよ! あなたなんか私は興味ないんだからね! でも、感謝しなさいよ!』


 この家を移動させることはできるようだ。相変わらず俺に都合のいいように、色々できるもんだな! これも運三セットがいい効果を発揮してんのかな? イージーモードバンザーイ!


「皆さん聞いてください! 俺をダンマスにした奴から連絡が来て、この家をそのまま移動させることができる方法をゲットしました。俺たちは自分の足で現地まで行かないといけないですが、地下を掘ってウォーホースに走らせればいいだけなので問題ありません。行ってからが大変だと思いますが、頑張ろう」


 俺の言葉を聞いて娘達の顔が明るくなり、花が咲いたようにキラキラしていた。みんなにいつでも出発できるように準備をするように指示する。


 新人たちとは別に購入した奴隷一家はどうしよっか、本人達に話を聞いて残りたいというなら、いくらか金置いて奴隷から解放するか?


 後は、冒険者・農業・商人ギルドに行っていなくなることを知らせておくか。


 国家反逆罪で権利が取り上げられるかもしれないわけだし、せっかくいい感じだったのにな。


 広げた農地はギルドの物にしておいて、下水は冒険者ギルドにそのまま管理してもらって、領主になるやつから金巻き上げてもらうか。米についてもきちんと説明しておかないといけないよな。やること結構あるな。

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