第112話 救出

 乱入者を排除してから坑道の開通作業へ戻る。とはいっても、開通作業はしばらくみんなに任せて、俺は国からの刺客を警戒するためにマップ先生を使って、フレデリクとリーファスの街の半径一〇〇キロメートルの範囲を掌握した。


 更に、DPの8割ほどを消費して警戒網を作成する。念のためマップ先生で掌握している範囲のレベル検索をかける。以前検索した時よりレベル二〇〇を越している人物が二十人程多かった。


 冒険者を除いた数が二十四人、騎士・兵士を抜くと十二人。こいつらのうち十人が先ほど襲ってきた奴隷兵と同じ、国王直属と表記されていた。


 残りの二人は奴隷兵と同じ国王直属だが奴隷ではなく、奴隷たちよりレベルが高い。おそらくこの二人は、奴隷兵の直属の上司もしくは指揮官に当たるのではないだろうか?


 にしても、人外とも呼べるシングルランクに近いレベルの人間がこんなにも多いとは。かつて俺と同じ発想を持った人物がダンジョンを発見してその上に国を建てた可能性があるな。


 もしかしてこのダンジョンの上に城を作るのも、あのチビ神共の同僚が画策して作らせてることもあるか? 神共が関わってると考えると疑心暗鬼にならざるを得ないな。久々にチビ神の事を思い出したら何かイライラしてきた!!


『久々に思い出したかと思えばなんて罰当たりな子かしら』


 …………


『ちょっと、聞こえてるんでしょ?』


 …………


『ちょっと勘弁してよ、私がバカみたいじゃない!!』


 いや、お前バカだろ?


『え! 言葉を発したかと思えばひどいんじゃないの!?』


 俺を問答無用でこの世界に拉致した奴に、ひどいとは言われたくないな。というか俺には用事がないんだから出てくんじゃねえよ! 邪魔だから帰れ!


『久々に来てあげたのにほんと失礼しちゃうわね! あなたの疑問に答えてあげに来てあげたのに!』


 あっそ、クソ神共が作った国だろうがそうじゃなかろうが俺には関係ないな。もしこれ以上何かしてくるなら、どうにかしていずれ潰すだけだ。


『あら? 過激になったものね。これは凶悪なダンジョンを期待できるのかしら?』


 はぁ? 国潰すのにしてもダンジョン作ったからって潰れるわけねえだろが、ちょっと考えて話せってチビ神、だからバカって俺に言われるんだよ。


『バカじゃないもん! チビじゃないもん! もうちょっとしたら大きくなるんだからね!』


 だから何度も言ってるだろ。大きいよりスリムの方がいいって言ってるだろ? 大きさより形だ。


『あなたの性癖なんて聞いてないわよ! 私はおっきくなりたいの!』


 お? ちっちゃい事認めたな。殊勝なことだ。


『うぐっ! やっぱりあなたに口で勝てないわ、まぁいいわ。一応あなたの疑問に答えておいてあげるわ。この大陸で大国と呼ばれる国は三つ、私たちが介入して作らせた国よ。あなたも気付いているようだから言うけど、王のいる城の地下には私たちが作った特別なダンジョンが配置されてるのよ』


 やっぱりお前らのせいかよ、これから先が思いやられるな。一応聞いとくが、そのダンジョンの管理はどうなってるんだ?


『え? どういう事かしら?』


 誰が管理してて、俺たちのダンジョンとの違いはあるのかって所かな?


『そういう事ね、管理している人はいないわ。あなたの言葉を使えば、野良のダンジョンとか自然発生型ダンジョンって感じかしら?』


 ん? 野良のダンジョン? 自然発生型? って事は、ダンマスが作った以外のダンジョンも多くあるって事か?


『ふひひ、気付いてなかったのね。何か優越感だわ! 基本的に鉱山型ダンジョンは自然発生型のダンジョンよ。そういうところに人が集まって、私たちが作った国以外の国が発達してるわ。あと、自然発生にもコアは存在してるわね』


 ふむふむ、って事は三つの国以外は自然発生した国で、自然発生型のダンジョンや何らかの理由で人が集まって国ができたって事か。


 まぁいっか、とりあえず大国の三つは神の先兵って事だな。勇者とシングル以上の冒険者の他にも気をつけないといけないのか、情報が手に入っただけでも良しとするか。情報助かったよチビ神様。


『ムキー!! いずれ見返してあげるんだからね!』


 ムキーとか本当に言う奴がいるんだな~。


「……人様! ご主人様!」


「ん? ピーチかどうかしたか?」


「えっと、発掘作業が終わりそうなのでお声をかけたのですが、反応が悪かったので大きな声を出してしまいました。申し訳ございません」


「え? もう終わるのか、補強の方はどうなってる?」


 チビ神とそんなに長い時間交信してたのか。


「ご主人様のアドバイスをもとに私たちなりに強化してます。発掘作業が終わった」


「じゃぁ、冒険者ギルドに伝言をしてもらおうか。外で待ってるメンバーに三から四人で、下の街まで行くように。それと、食事をいつでも食べれるようにしといてくれと一緒に伝えてくれ」


「かしこまりました。指示してまいります」


 よし、発掘作業も終わったみたいだし、中に残った人の様子を確認しに行くか。


 しばらく進んでいくと、人の声が聞こえてきた。お? 声も結構出てるみたいだし、思っている以上に元気そうだな。空気清浄の魔導具もあるし、食材もそれなりにはあったから問題がなかったのだろうか?声の雰囲気からして言い争ってる感じでもないし安心した。


 広い空間に入ると五十人程の人間が、イスに座ったりしてくつろいでいる。ただ奴隷と思われる身なりの人物たちは、若干やつれているような印象をうける。奴隷だけに食事が減らされていたのだろうか? お? 見覚えのある人間がいるな、俺たちを襲って返り討ちにされたクズがいた。


 ここの管理者らしき人間に声をかけて、助けに来たことを伝えると、奴隷たちからも歓声が上がる。鉱山の入り口で暖かい食事を準備していることを伝えると、さらに大きな歓声が上がった。


 準備させたこの世界での一般的な食事でも、娘たちの技量にかかれば一ランク以上の食事に成り上がった。よくわからんが泣きながら食べている奴隷たちに若干ひき気味である。


 おいしい食事は正義ではあるけど、落盤が起きてから一週間ちょい位しか経ってないはずだけど。あぁ、この世界の奴隷の扱いを考えれば娘たちの作った食事なら泣くほど美味くて当たり前か。


 下の街からギルドの職員と街の管理者がきて、どういった状況だったかの確認として色々聞かれた。今回の事故の直接的な原因は、坑道のハードニングの効果がなくなっていた事ではないかと伝える。


 本当の原因は国王かその周辺が起こしたことだというのは伏せておいた。下手したら何かの罪に問われてそのままって可能性もあるので、何もなかったことにしておく。


 聞き取りが終わった後に、ギルドの職員と街の管理者は俺たちにお礼を言い後処理をするとのことで立ち去っていく。他の魔法使いによる坑道の調査があるので、何かあった時のために滞在をしてほしいとのことで、しばらくは街に滞在してほしいとのことだった。

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