第108話 冬のある日

 リーファスやフレデリクは、地域的には内陸になると思うのだが、何故かがっつりと雪が降る地域だった。あのチビ神の同類が作った世界なら、地球と同じ法則で雪の降る地域が決まらない可能性が高い。大量の雨が降るんだから、雪も大量に降ってもおかしくない的な発想でもおかしくない。


 リーファスから帰ってきて一ヶ月が経っている。その間に大雪が降って、街全体につもっていた。リーファスもほとんど同じ状況で雪が積もっているようだった。


 フレデリクの街から戻ってきて変わったことと言えば、隣接している家が空き家になったので商人ギルドから買わないかと打診があり、金にものを言わせて元の敷地の六倍、今の家を中心に西側に五件の家を買いあさった。


 二ヵ所には人がまだ住んでいたが、必要以上にお金をつんだところ喜んで引っ越しをしてくれた。どうも引っ越そうとは考えていたようだが、お金の問題があってしていなかったようだ。


 まず俺らが取り掛かったのは、隣接した家の解体だ。周りに被害が出ない様に塀を高くしてから解体にうつった。みんな戦闘能力が高いので、見る見るうちに解体は終わっていく。


 まるまる壊して廃材にするのも勿体ないと思ったので、切れ味抜群の刀を準備して使える素材と廃材をしっかりと分けて解体していく。木材は八割以上が再利用可能だったため、商人ギルドに持ち込んで買い取ってもらった。


 更地になった土地を見渡して、利用方法を再度検討する。家の南側の土地の北半分、俺の家の近くに校舎を建てる予定だ。冬の間や子供が仕事を手伝えない作業の時に、留守番や畑の近くで遊んでもらっているらしいので、その時間がもったいないから教育してみようと考えたのだ。


 南半分には、商店の様な建物と飲食店を左右に分けて作ってみることにした。その間を通ると校舎にたどり着けるという感じだ。


 ちなみに商店と飲食店を作ったのは、西側の空き地に畑を作る予定でそこで作った物を、商店で売ったり飲食店で料理にして、街の人に食べてもらう計画だ。そこで稼いだお金は、土地の使用料と授業代分を引いた額を、協力してくれた子供たちに給金として渡すつもりだ。


 赤字になるようなら、俺が補填すれば何の問題もないだろう。大人たちも希望すれば読み書き四則計算、農業の授業もしていこうと考えている。もちろん冷暖房完備の完全な校舎にする予定だ。


 冬の間の憩いの場としても使えるように、一階は正面入り口から入って左右に休息所のような場所を設けている。二~四階が授業に使える教室を作る予定だ。校舎や商店、飲食店の作成は、シートの様なもので周りを囲って、DPでこの街にあった建物を建てていく。


 畑はあまり手を加えすぎても勉強にならないので、一度掘り返して土を柔らかくするだけにする。春になったら一角に腐葉土を持ってくる予定だ。その先の作業は子供たちにしてもらう予定だ。


 ただ娘たちに指導させるのもどうかと考え、あたらしく奴隷を購入することに決めた。リーファスの街を検索したところ、数名ネルビ男爵の家に雇われていた者が奴隷に落とされていたので、その中の目をつけていた二人とその家族を購入するように新人組に無線で伝える。


 この人物はおそらく能力が高すぎて、男爵に不興を買ってしまい権力で奴隷に落とされたのだろう。能力の高い人材を手に入れれたのは嬉しい限りだが、この件は問い詰めないといけないな。購入してもらった二家族は、今度フレデリクに来る時に一緒に連れてきてもらう予定だ。


 雪が降ってるのに来れるのか疑問に思うだろうが、そこはファンタジーの世界。火魔法や水魔法を使い雪をどけて移動することが可能なのだ。火魔法だと後で凍ってしまうため、基本的には水魔法で雪をコントロールして左右に寄せる方法がとられている。


 魔法の使える人間の冬の稼ぎになる重要な仕事らしい。なので問題なく道は通れるようになっている。一部積もり始めたところも見られるが問題なく踏破できる馬車なので気にするだけ無駄だろう。


 読み書き四則計算は、リーファスの街で購入した二人で問題ないだろう。この二人の家族は、商店と飲食店の二階に住んでもらえるようにしよう。


 いわゆる店の管理を任せる形でいいだろう。地下には保存庫を作って収穫した野菜なんかを、保存できるようにしてあるしこれでいいだろう。


 後は、農業を直接教える人材がいればいいんだが、奴隷商にいる元農家は失敗して奴隷落ちしてるわけで能力が高いとは、口が裂けても言えないだろうからどうしようか悩んでいる。ある程度の知識のある人を育てるか?


 まてよ? 農業に失敗して奴隷になった人以外にも、家族に不幸があってお金が工面できなかった人もいるかもしれないな。農業ギルドにそういった家族がいないか問い合わせてみるか、ついでに街中で子供たちの教育や実験する許可も、商人ギルド等にも取り付けておこう。


 ついでに冒険者希望の子たちがいれば、戦闘訓練してもいいかな? 校舎の地下をダンジョン化すれば覚えもよくなって、質のいい冒険者がフレデリクに増える、悪くないと思う。


 農業・商人・冒険者ギルドへ行き確認と許可を取りに行くと、問題もなくむしろ喜ばれる結果となり後押しをしてくれることになった。


 農業ギルドでは、腕のいい農家の家族が娘の病気を治すために、薬師や錬金術師に薬を作ってもらったが治らず借金だけが残ってしまった……という事情を抱え奴隷落ちしてしまった一家を紹介してくれた。もちろん借金は即金で全部返し、娘さんの病気はピーチの回復魔法で後遺症も残らず治療できた。


 どういった病気かは分からなかったが、年にこの街でも数十人は亡くなってしまう病気だとの事だった。治せる人間もおらず薬師や錬金術師が作っている治療薬を使って、三割ほどの人がなんとか助かっているみたいだった。この薬が法外に高いようで、治っても奴隷に落とされてしまう事が多いらしい。


 ピーチに聞いたところ、回復魔法のLv三程度のスキルがあれば治せるだろうとのことだった。


 個人で色々やると面倒なことになりそうだったので、魔法治療院(回復魔法師たちのギルドの様なもの)を巻き込んで治療法を確立させてしまおう。という事で、今回の治療結果をもって治療院へいき、同じ病気の人を集めて魔法の効果を確認することにした。


 治療院には高くてLv五の回復魔法が使える人間がいた。次にLv四が二名、Lv三は四名と、そこそこLvのある人がいた。ある程度の年齢がいっている人達が多かった。というより、若い人材がほとんどいないと言っていいのだろう。


 話を言いてみると、冒険者を廃業して治療院に身を置くことになった人だった。そういう背景もあるんだなと思った。


 ピーチが治療に使った魔法を教えていくと、首をかしげる治療師たち。どうやら、体の中に病原菌がいる事はわかっているが、それに働きかける魔法というのはうまく理解できていないようだった。


 細胞や細菌の概念がないため、うちの回復魔法と治療師のそれとは、効果が全く違っていたのだ。ただLvの高い人はそれを知識でなく、感覚で使いこなせているためある程度の効果が期待できている状況だった。


 人体の構造をしっかりと理解してもらうために、治療院の方に勉強してもらう事にした。そこから冒険者をしているヒーラーに向かって技術を発信していってもらおう。

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