第109話 真冬の指名依頼

 リーファスからの二家族六人が到着し奴隷落ちした農家の家族の三人、合わせて九人が新しく身を寄せる事になった。


 リーファスからの家族は、商店と飲食店の二階に住んでもらうための空間を用意していたが、農家の方には家を準備していなかったので、畑の一角にそこそこ使い勝手のいい家を建てたので住んでもらう。設備は商店や飲食店、校舎と同じレベルの物を用意している。


 レイリーとカエデに奴隷には、過ぎたものだと何度も注意を受けたが、そこは譲らず強引に押し通した。この生活に慣れて他に移動したくない様に仕向けるため、結構生活レベルを上げているのだ。ここまでしなくても条件がいいから、逃げることも訴えられることもないと言われたけどね。


 とりあえず、新しく身を寄せることになった三家族にも、教育を施すことにした。勉強を教えてもらう予定の二人は、グリエルとガリアという名前らしい。


 奥さんと子供には好きなことをしてもらう予定だ。冒険者でもいいし、商人でもいいし農家でもいいし教師でもいい、なんでもしたいこともしてもらう予定だ。農家の奥さんと子供も同じだ。だが、父親たちには頑張ってもらう予定だ。


 最低限の知識を叩きこむ教師役はレイリーと俺とピーチでやる。まぁ冬の間に覚えてもらえばいいので、ゆっくりやっていこう。空いてる時間で近くから集めた子供たちに、読み書き四則計算を教えさせて様子も見ていく。


 俺は暇な時間ができれば軽く運動の意味も込めて、従魔たちと一緒にダンジョンで一狩りしてから、お風呂やサウナに入ってブッ君で読書をしている。冬になってからかなりブッ君の蔵書を読んでいるが、まだ全体の一割も読めていない。


 どれだけ買ってんだ俺! いくらDPでお金使わずに買えるとはいえ、やりすぎたかな? シリーズを読み終わった後に、次を選ぶのにも時間がかかってしまうくらいだ。


 娘たちは、メイドの修行とダンジョンでのレベル上げ、生産系スキル上げ、勉強と充実した日々を送っているようだ。ノンビリだけど充実した日々だと思う。平和で平穏な日々が続くといいな……


 二日続けての大雪が続いた冬のある日、不意な訪問客が家を訪れる。


「すいません、シュウ君いますか? 急ぎの依頼をしたいのですが、いませんか?」


 門の前で大きな声で叫ぶミリーさんだ。その声を聴いた娘たちがどうなさいますか? みたいな感じで俺に問いかけてきたので応接間に通すように指示し、レイリーとカエデとピーチにも来てもらうように伝言を頼む。


「お久しぶりです、ミリーさん。急ぎの用事みたいですが何かありましたか?」


「初めに、急な訪問でしたが対応してくださりありがとうございます。早速ですが要件に入らせていただきます。ギルドからの正式な指名依頼をさせていただきたくまいりました。三日前に鉱山で落盤事故がありました。シュウ君が捕らえた犯罪奴隷達を送った鉱山ですね。


 この時期でなければ王都から魔法使いを呼び寄せて対応するのですが、冬のこの時期だと移動だけで夏場の倍は時間がかかることがあります。近くの街で一番の土魔法が使えるシュウ君たちのパーティーに、鉱山へ行っていただきたくお願いに来ました」


「ふ~ん、落盤事故なのに夏場は時間がかかっても王都から人を呼ぶんだ? そんな悠長なことをしてて中の人大丈夫なの?」


「鉱山の中には、空気清浄の魔導具が設置してあるので、閉じ込められて死ぬことは基本ありません。食料も基本一ヶ月程の貯えがあるので問題は無いのですが、今回は冬という時期とちょうど食材の補給をするタイミングで、事故が起こってしまったのです。王都の魔法使いを呼ぶ時間を待っていられないんです」


 地球では空気清浄機って空気をキレイにする装置だけど、この世界の空気清浄の魔導具は本当の意味で清浄してる感じか?


 空気の循環がない場所は空気がよどむが、そのよどみまで清浄しているようだな。ファンタジーすげーな、酸素や二酸化炭素の概念がないのに、魔導具でそういった物を作れるんだもんな。


「一応聞いておきますが、落盤事故の原因はなんですか? 魔法で強化してる部分が落盤したとか、そういった不自然なことはありませんか?」


「すいませんが、なにぶん時間が無かったので、落盤事故の原因については分かっていません。ですが! 故意に落盤を起こす人物はいないと考えています。


 国の大切な資源ですし、これが一時とはいえ採れなくなることはこの地域にとっては特に致命的になることもあるのです。前ギルドマスターの件もあるので疑い深くなるのも分りますが、冒険者ギルドは一切かかわっていない事は断言いたします」


「ん~、疑いたくはないんだけどね。冒険者ギルド以外でも関与できる組織はいくらでもありますからね。特に貴族とか貴族とか貴族、自分の利益しか考えないやつだっているからな。俺が管理してる二つの街以外の人間が、何らかの理由でちょっかいかけるってこともあるんじゃないかな?」


「可能性は無いとは言いませんが、もし落盤を人為的に起こした貴族がいたとして、もしバレたら家が取り潰しになる上に血縁や家臣、使用人全員が処刑される程の重罪なので、企んでいた貴族がいたら誰かが止めるか国に報告が行くはずです」


 おぉ、そんなに重い罪になるのか、国家反逆罪的なあれかな? 止められなかった家臣や使用人、血縁まで死罪か、よっぽどなんだな。それだけ鉱山が重要になるなら、鉱山型のダンジョンは需要が高そうだな。


 この国には鉱山型のダンジョンは無さそうだよな。 鉱石やインゴットや金属系の武具や道具の出荷が多い国がありそうだな……分かったからって何だって話だけどな。


 その国って鉱夫や鍛冶屋が多いだろうから、ドワーフとかいねえかな? 鍛冶技術とか高そうだからカエデ連れてくのは、いいかもしれないなって話がそれてる。


「それなら企むやつはまずいないか? 何か忘れてる気がするけどとりあえずは、人命救助ってことで行動しますか。年長組と年少組の二パーティーで行こうか、馬車の準備してくれ。鉱山に着いたらこっちの方法で対処していいですよね?」


「方法は任せます。鉱山で働いている人たちの救助をしてください。犯罪奴隷はともかく、監視員や食事管理をしてる人員は助けてください。先にギルドに戻って準備しておきますので行く前に寄って行ってください」


 伝えることを伝えてミリーさんは帰って行った。シルキーたちに持っていける食事を簡単でいいので準備してもらう。四大精霊のノーマンには付いてきてもらい、残りの三精霊は家に結界をはっていてもらおう。


 しばらく勉強はグリエルとガリアにまかせて、年中組にはリーファスの新人組と俺たちと連絡を取りながら街の様子を見てもらう事にした。


 準備が整い冒険者ギルドで説明を受けた後、鉱山へ向かって出発する。

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