第107話 それぞれの道

 俺がダンジョンで遊んでいた一ヶ月の間、新人達の教育は一通り終わったようだった。


 戦闘訓練と調理は力を入れて教えたらしい。元々新人達は全員読み書きは問題なかったようなので、その時間は簡単な算術と戦術を覚える時間にあてていたようだ。


 そのかいもあってピーチが思う最低限までは教育できたようだった。


 ちなみにレベルは全員一〇〇まで上がっていた……上げすぎじゃね? ってかよくあげられたな。スキルは宝珠を使って覚えさせたが、能力向上と体術のLv十以外は自力で上げたようでLv四まで大体上がっていた。どれだけ濃い訓練をしていたんだか。


 一応新人達の活用方法を伝えていたが、そこらへんはどうなったのか聞いてみると、一方が冒険者活動している時は、一方がメイドの特訓をする形になったようだ。って俺が聞きたいのはそこじゃない!


 二週間に一回くらいはフレデリクの街に来るようにしており、その時に収支報告書などを持ってくるようになっているとの事。その時に一緒に食材をこっちから向こうへ運ぶようにして、向こうでは一切購入する必要がないようにするようだ。


 冒険者活動で得たお金は自由に使っていいようにして、追加でほしい食材があったら自分たちで購入するようにした。ネルビ男爵の監視もあることを忘れない様に伝えた。


 ちなみに新人たちは先輩たちと一緒で、俺を見る目が時々崇拝者のごとくキラキラと輝いている目をしている。ぴ、どんな教育をしたんだ!


 ちょっと聞いてみたいが藪蛇になりそうなので怖いな。本来の役目で、数字の監視って意味ではちょっと心配になるが、自分たちの身を守るすべは手に入れてるからそれはそれでいいか。


 俺は新人たちが教育を受けている間に、ダンジョンで遊んでいたがその合間に、専用の馬車とウォーホースを準備している。先輩たちと同じような振動吸収のシステムと、タイヤは弾力が程よくある魔物の皮を加工して、何重にも巻き付けたタイヤを採用している。


 パーティーに一つずつ収納のカバンと指輪のセットを渡している。パーティーのリーダーは、ピーチと同じヒーラーが担当することになり、その娘に合わせたカバンのデザインと固定のエンチャントがつけている。


 ちなみに防具に関してはカエデのお手製で、全員にお揃いのレザー装備一式だ。要所要所はアダマンタイトの薄いプレートを仕込んであり、防御力的にはフルプレートでガチガチの前衛より高い。特にタンクの娘に関しては、カエデの作った盾に俺がアダマンタイトのコーティングをほどこしている。


 武器に関しては、タンクは壁メインに大きめの片手斧・避けの方は片手長剣・双剣には幅広の片刃の剣・薙刀には俺と同じ型の物を・魔法アタッカーには打撃系にも使えるバトルロッド・ヒーラーにはメイスと小型のカイトシールド(とがった部分で殴れる仕様)で統一している。


 リーファスの街の兵士の倍の数が反乱起こしても、この十四人がいれば問題なく鎮圧できるだろう。


 ピーチは、二週間に一回フレデリクに戻ってくるので、その時に追加で教育していくつもりだそうだ。他にもこっちから娘たちを派遣して、教育を考えているとも言っていた。


 一応、連絡用に骨伝導スピーカー仕様の無線を渡しているので、すぐに相談できる体制にもしている。この世界には電気の概念はまだ無いので、バッテリー替わりの物を魔石を使って作成してはめている。ちなみに、これを作ったのはアリスとライムである。


 この二人は錬金術と魔導具作成のスキルを取って、鍛えていたので任せてみたらすんなりと作ってしまったのだ。その際に活躍したのが、理科の教科書だった。


 魔石の魔力を電力に変えると、いう工程なだけでさほど難しくなかったと。魔石電池とでも言えばいいのかな? この魔導具はおそらく色々な事に代用できるだろう。


 リーファスにも拠点を確保するために、年少組と新人組を連れてリーファスに向かう事にした。道中何もなく……と言っても半日の行程なのだが。


 その日は適当な宿に泊まってから、次の日に家を探すことにした。お金はいくらでもあるので値段にこだわらずにいいものを買おう。


 次の日、商人ギルドを訪れて現状のネルビ男爵の収支報告の状況を聞いて、拠点を探していることを伝える。


 ネルビ男爵は今のところ怪しい報告はしていない。活動資金はきちんと自分の資産から、ひねり出しているようだった。自分のお金なので慎重に使っているのでは? とのギルドマスターは言っていた。


 人の物だったら何も考えずに使うのか? あれだけグダグダな内情だったのに。矯正されたとはいえ、一ヶ月足らずでここまで更生するもんなんだな。


 ただこの状況に慣れてきたら、怪しい動きをする可能性が高いとギルドマスターは考えているようだった。俺もそこは同意せざるを得ないので、監視を弱めない様に伝えておく。


 ついでに新人の娘たちをこの街の拠点に置いておくので、収支報告書や俺に伝えたいことはこの娘たちに頼むようにお願いしておく。


 拠点の方はお金に糸目をつけないから、ある程度の大きさのある建物をいくつか見繕ってもらった。


 一つ目は、外壁に近い位置の何に使われていたかわからない結構頑丈な建物。家の大きさは、今のフレデリクの家の五割増しの大きさではないだろうか? かなり大きかった。


 二つ目は、貴族街に近い屋敷だった。大商人が建てたらしいその建物は、大体フレデリクの家と同じくらいの大きさだろうか?


 三つ目は、商人ギルドの近くにある半倉庫の様な、フレデリクの家と同じくらいで、敷地は結構な広さだった。家部分もそれなりに広く使い勝手がよさそうであった。


 家の内装はDPで簡単に変更できることは確認しているので、三つ目の半倉庫の家を改装して拠点として使うことを決めた。


 広い敷地には、ハーブや香辛料を育てれるようにビニールハウスならぬ、強化ガラスでできているハウスをいくつか作成している。難しいかもしれないがそこらへんは、色々試行錯誤して頑張ってもらおう。うまくいけば香辛料などの量産を考えて、街の食事の質を上げられるだろう。


 半倉庫は規模を狭くして、馬車が二台とウォーホースの寝床程のサイズにして、ウォーホースが自由に動けるように、高い塀で少し動ける場所を確保する。


 その場所は娘たちのトレーニングにも使えるように、一回掘り起こしてもらってクリエイトゴーレムを使って地面を平らにして強化して、ある程度の再生機能を魔核を使用して付与しておいた。


 部屋は、誰か訪ねてきた時に使う場所としての部屋以外は、俺たちが来ても大丈夫な程度の部屋の数、食堂とキッチンにはアリスとライムが作った魔導具、コンロやオーブンなどを設置している。


 フレデリクの家とは違い余分な部屋がないので、思っていたより半倉庫の家は余裕がある感じだ。必要なものが増えたら、この余裕のある場所を使えばいいか。


 新人に色々な指示をしながら内装を整えていった。二日後には何の問題もない程度には使用できる状態になった。後は足りないものを街の店で購入して終わりだな。


 一応拠点の守りとしてアダマンタイト製のリビングアーマーを四体配置している。LvもDPで上げていてスキルも充実している。盾と剣持ちが一体、双剣が一体、弓が一体、槍が一体の四体だ。


 拠点の整備も程よく終わり、後は任せても問題ないと判断したので、俺はフレデリクに帰ることにする。何かあった時は無線で連絡するように言い含める。


 新人たちの巣立ちを見送り? して帰路につく。帰り道で雪にふられたが、少量だったので問題なく家に帰れた。すこし冷えた体にサウナと温泉は最強の癒しだった。

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