第53話 意外なご褒美の内容

 一個目のベースから直線で二個目のベース予定地までエリア掌握する。直線で掌握しているのはDPの節約のためと、冒険できる場所は自力で開拓したいと思っているからだ。いくらでも稼げる状況になってはいるが、エリア掌握で無駄遣いするつもりは今のところない。


 現在の時刻は、十六時三十分頃である。ウォーホースを使って移動しながら、遭遇した魔物と戦闘をしていただけなのでかなりの距離を進んでいることになる。エリア掌握した際のDP消費量から見て、おそらく四十キロメートル程進んでいると思われる。


 徒歩で移動していたら流石に二時間三十分でここにはたどり着けないだろう。悪路を索敵しながらフルマラソン選手と同じスピードで走るくらいして可能になる速度だ。その点ウォーホースの機動性は素晴らしいな。モフモフたちの索敵能力があるから可能な移動方法ではあるのだが。


 予定地も決定したので、ベースに戻ることにした。戻る最中にもバーサクベアーやワイルドウルフに襲われるが、モフモフたちが危なげなく倒していた。ギンとクロが一気に近付き後ろ脚に思いっきり噛み付き移動できない様にしたところ、ハクのブレス各種でとどめをさしていた。


 動けない魔物相手に焼き尽くしたり切り刻んだり色々な方法を試しているようだった。バーサクベアーは魔法系の攻撃に弱いのだろうか? ただ単にハクの魔法攻撃力が高いだけなのだろうか?


 そういえば、全然戦闘に参加していなかったニコにバーサクベアーと一回戦ってもらったが、バーサクベアが可哀そうになる程の圧勝ぶりだった。


 素早い動きでバーサクベアーの頭に取り付いて、ニコは体から五本の棒状の物が生えてきて、次の瞬間消えたかと思ったら、バーサクベアーの頭を中心にして反対側に五本の棒状の物が表れていた。


 そのままバーサクベアーが倒れる。頭に棒が五本も貫通すれば生きてられないよな。攻撃すらさせてもらえない哀れな死に際だった。


 ベースにつくと、リビングアーマー(ミスリル)が出迎えてくれた。全く動いてないけどな。ダンジョンの中で料理してもらってるから、匂いが外に出てない。外でBBQとかしたら魔物が集まってくるのかな?


 魔物ホイホイ、なんてな。夜戦の練習にしたら流石にハードか。危なくなったらダンジョンの中に入れば問題ないんだけど。


 シルキーたちが料理をしているキッチンに入ると、ホワイトソースの濃厚なにおいが充満していた。小麦粉・牛乳・バター・塩コショウが主な材料だが、他にもいろいろ入っているようなにおいがする。コンソメは何となくわかるが他のものはよく分からないな。


「あ! ご主人様、お帰りなさいませ。今日の夕食のメインは、グラタンとドリアを準備しています。グラタンやドリアですが、数種類ずつ準備していますので楽しみにしていてください」


「グラタンとドリアか~ファミレス思い出すな、ハンバーグとかピザとかも一緒に頼みたくなるな。友達と昼食ついでにフリードリンクとかで長々と話してたの思い出す」


「ピザも用意いたしましょうか?」


「まじ? 間に合うなら、野菜たっぷりのピザを準備してほしいな」


「了解です。夕食を楽しみにしていてください」


 今日の夕食は久しぶりに食べる物ばかりだな、日本の事思い出すけど今はカエデやシルキーたちにニコ・ハク・ギン・クロ、娘たち、四大精霊やドリアードたちと大切な家族ができたしこれはこれで楽しいしからいいよね。


 学生だった俺は、そこまでお金を持ってなかったけど、この世界なら日本のものだって取り寄せし放題だしむしろ得してるな。


 とりあえず、風呂に入るべさ。湯船に熱めのお湯を準備して、洗面器ですくいながら体にかけていく。体を洗って湯船につかるのだが、カエデがごく自然に一緒に入っている。もちろん浴着をつけているが、胸の先っぽのポッチが気になってしまうのは男の性だよな。DTだからとか関係ないと思うんだ!


 ゆっくりお風呂に入っていると、娘たちが帰ってきた声がした。お湯を抜いて、生活魔法のクリーンを使用して湯船をキレイにして再度お湯を召喚する。


 お風呂から出て戻ってきた娘たちにお風呂に入ってくるように話すと、喜びの声を上げてお風呂場へ向かっていった。俺は食堂に向かいこっそり持ってきていたファンタジー小説を読み始めた。


 この世界だとweb小説が読めないのが残念なんだが、DPでお金を気にせずに市販の小説は読めるからイーブンってとこだろう。


 娘たちがお風呂から上がってきて、食事が始まる。娘たちが初めて食べる食事だったが、気に入った様子ですごい勢いでグラタン・ドリア・ピザが消費されていった。


「さて発表があります。今日のゲームの成果を発表します。年少組一〇二匹・年中組九十五匹・年長組一〇一匹で年少組が一番です。みんな頑張ったね、ここまで僅差の討伐数になると思わなかったよ。初めに約束していたご褒美が決まってたら教えてほしいけど、何かあるかな?」


「はぃ! シェリルね、この森にいる間だけでいいから、ご主人様に添い寝をしてほしいの! 勝ったのは私たちだけど、お姉ちゃんたちもみんなで寝たいの!」


 年少組以外の娘たちが、「本当にいいの?」「私たちも添い寝できるの?」と、ちょっと黄色い声を上げていた。


「へ? 添い寝?」


「うん、添い寝! 一緒に寝てほしいの。お兄ちゃんみたいで優しいし、安心するから一緒に寝てほしいの」


「俺のベッドだと頑張っても一組ずつしか寝れないから順番でいこうか。平等にすると今日のゲームの意味がなくなるから、年少組、年中組、年少組、年長組のローテーションでいこうか。森にどのくらいいるかわからないけどこれでいこう」


 ご飯の後は、今日の狩りの敵の種類やある程度の分布を資料にまとめて報告書の代わりにできるように作成してから、みんなでベッドに潜り込んで寝たのだった。

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