第45話 ダンジョン内の変化
娘たちが冒険者登録をして三週間が過ぎた。三日毎のローテーションにして、メイド修行三日⇒冒険者活動三日⇒農園・畜産活動が二日と休日一日の九日間で一巡するような流れにした。
休日は三日間もいらないと娘たちに言われ、休日を一日と農園・畜産活動を二日にすることで娘たちがやっと納得してくれた。夜に十分ゆっくりできる時間があるので、休日はいらないと言われたがそれは俺が絶対に認めなかったので、休日一日というとこに落ち着いた。
「ご主人様、この木は何ですか?」
今日が農園・畜産活動の年少組と一緒にドリアードたちの手入れしている農園へ来ていた。シェリルが何を作っているのか気になった様子で俺に尋ねてきた。
「香辛料の一つで、胡椒の木だよ。昨日のお肉の味付けに使われてたよ」
「え? 昨日のお肉美味しかった! あれに使ってたんだ! どうやって使ってたかわからないけど、食べ物を美味しくしてくれるすごいものなんだよね」
ここ農園は基本的に調味料や香辛料を作っている。近くに醤油やお酒を作る蔵まで建てられていた。さすがに自分たちで建てられなかったので、DPの操作権限を与えていたノーマンに家を建ててもらったらしい。農園とは別に畑をかなりの規模で作っていた。
こんなにダンジョンが広かったっけ? と思うほどに広い空間になっていた。
さらに奥に進んでいくと、色んな香辛料が育てられていた。
ターメリック・カルダモン・シナモン・クローブ・ショウガ・ニンニク・レッドペッパー・ローリエ・ナツメグ・オールスパイス等々、育つ気候が違うはずなのにスクスクと育っている。すべてドリアードとノームの特殊能力で育てているため、成長も早く味も高品質になるようだ。
こんな大量に作って消費しきれるのだろうか? 時間を止められる収納の腕輪があるから保存は問題にならないか。あれ? そういえば時間加速する機能拡張もあったな。あれを醤油や酒蔵にエンチャントをつけられないだろうか? 今度試してみよう。
農園を過ぎると畑が見えてきた。何種類作っているのかわからないほど、沢山作っている様子だった。近くで目につくもので葉野菜のレタスやキャベツ、白菜は分かったが、それ以外にもそこそこの種類が育っている。これからはここの畑の食材を使ってさらに食卓が豊かになるだろう。
年少組はここに来るまで、イリア以外はこういった畑で育っている野菜を見たことなかったようで、初めて見る食材に目を輝かせていた。農園や畑の手入れはドリアードとノームの特殊能力で手入れがほとんど必要がなかった。娘たちは畜産の方で動物たちの管理をすることが主になっていたようだ。
「ここらへんのはそのまま食べれるから、みんな採れたての野菜を食べてみるか?」
「「「「「たべたーい」」」」」
近くにあったキュウリをとって半分に割ったものを渡していく。
「みんな食べてみるといいよ、それはキュウリって言っていつもサラダにして出てくるやつだよ」
娘たちはそれを聞いてかじりついていた。「味は薄いけど、おいしいね」「みずみずしい!」など声を出して初めての体験を楽しんでいる様子だった。
「じゃぁ、みんながいつも面倒を見てくれてる動物たちの所へ行こうか」
しばらく歩くと、牛がのんびり歩いたり牧草を食べている姿が見えてきた。繁殖用に今はメスオス各20匹ずつ育てているようだ。その隣と言っていいか分からない位広い放牧場を過ぎると、小屋が見えてきた。そこでは豚が育てられているよみたいだな。豚舎か。
DPで呼び出せる古古米などは重さに対して、消費量が少ない。古いためか圧倒的にコストが安かったので、畑で育てているトウモロコシなどと合わせて餌として与えている。
ちなみに畜産関係の人材がいないと思っていたが、ノーマンがクレイゴーレムを召喚してDPで知識や能力を強化して、家畜たちの面倒を見させているようだ。ゴーレムって食料が必要ないから最高の労働力ではないだろうか?
途中で合流したノーマンに聞いてみたところ、鈍重で細かい作業が難しいため野菜の栽培などには向いていないようだ。
「あれ? 何か潮の香りがするな? ダンジョンの中でなんでだ?」
「ご主人様は、シルキーさんやウンディーネさんに聞いていないんですか? ご主人様が魚介類を最近食べてないと言っていたので、DPで海を作ってます」
ダンジョンの中に海? 海水に含まれてるミネラル分とかはどうなっているんだろうか? 家を建てた時にコンセントを作ると、ダンジョンコアが電気を供給してくれるのと同じで、海も同じ感じで補給されるんだろうか? ダンジョンコアには謎が多いな。
ダンジョン内にある海へ向かってみると、大きさ的には湖だろうか? かなりの広さがあるようだ。水をなめてみると塩っ辛い。
所々に生け簀のようなものがあり、湖の上には橋のようなものがかかっている。あれはなんだ? どういう理由で浮いているのだろうか? 橋の上をゆっくり歩いている人影が見えた。ここにもゴーレムを採用しているようだ。
ノーマンに聞いてみると、餌を生け簀にまくためのゴーレムだとのこと。単純作業なら万能すぎるゴーレムだな。もっと複雑なこともできるようになったら、労働力に人がいらなくなってしまうな。
生け簀を見学していると、アマレロがふよふよと飛んできた。
「あ~。ご主人様~。ここに~何か~用でしたか~?」
「いや、ダンジョン農園や畜産がどうなってるか見に来たらいつの間にか海ができてたから見学してただけだよ」
「そうなんですか~、ご主人様が食べたいと言われてたので~、ノーマンとアクアに相談したら~海を作ってみては~? とのことで~、海を作ってもらいました~。一応魚の育て方を調べるために~、本も取り寄せてもらいました~」
「知らないとこで苦労かけてるんだな、ありがとな。ところでアマレロは何でここに来たんだ?」
「気にしないでください~、それが私たちの~存在意義ですから~。ここに来たのは~、今日の夕食に使う~予定のマグロを取りに来たのです~」
「っ!! もしかして、刺身か!?」
「正解であります~。生の魚を食べる習慣は~、この世界にはないので~、ご主人様用に刺身と~三色海鮮丼を準備する予定です~。他の人たちには~、マグロステーキやマグロカツと~骨の近くや頭はオーブン焼きに~してみようと思います~。
一応この娘たちにも~、刺身を出してはみようと思います~。食べられなさそうでしたら~、そのままカツにしてしまおうと思っています~。もちろんワサビもありますので~、楽しみにしていてください~」
「楽しみにしてるよ! みんな戻ろっか!」
帰り道にメルフィが刺身について聞いてきたので、魚を生で食べやすい大きさに切った魚の身を刺身っていう事を説明すると、生で? と驚いていたが、俺が好きな食べ物だと知って期待を膨らましていた。
期待をしている娘たちをよそに、密かに俺は寄生虫とか大丈夫なのか心配していた。
夕食には、もちろんマグロのフルコースが出てきた。刺身は予想外にも全員が問題なく食べれたのだ。刺身は、調理する前に氷魔法で凍らせてから解凍していたようで、寄生虫の心配は問題ないとアマレロが説明してくれた。
マグロはとれたては美味しくないのだが、それでも美味しかったのは、時間を加速させる収納の腕輪を使ったからだそうだ。
この世界って都合がよくできてるな、運三セットのおかげかな?
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