第46話 面倒くさいテンプレ

 娘たちも冒険者活動に慣れてきたようで、全員がEランクまでになっていた。


 最近では、お揃いの装備をしている女性冒険者として名前が売れてきたようで、色々なパーティーから声をかけられるようになってきているそうだ。だが娘たちは「仕える主がいるので」とすべての勧誘を断っている。ギルドでは【鉄壁のレギオン】と呼ばれるようになっているようだ。


 今日は年長組が冒険者活動の日である。Dランクになったら俺もみんなと一緒に冒険者活動を始めるかな? 最近はずっとダンジョンの中に作ったダンジョンで、のんびりとレベル上げしている以外は特に何もしてないのが現状だったり。


 昨日もカエデが俺専用に作ってくれていた薙刀のバージョンアップが済んだので、受け取ってダンジョンへに潜っていた。


「付与魔法をしてなくても斬撃の威力が上がってるな~。スンスン切り裂けるもんな、確かにカエデのお手製で作ってくれた専用武器の性能は半端ない。金を払ってでもほしくなる貴族がいるのもうなずけるが、技量が伴わないやつが持っててもな。武器の感覚をつかむためにもうちょい戦っておくか」


 二時間ほどダンジョンに籠ってから、昼食を食べに食堂へ戻る。途中で冒険者活動に出ているはずの年長組が俺を見つけて呼びに来た。


「ご主人様、申し訳ありません。この街の領主であるメルビン男爵の遣いがご主人様に用があると、私たちに道案内をさせてこの家に押しかけてきました。お会いしていただいてもよろしいですか?」


「はぁ、とうとう貴族が来たのか、めんどくせえことこの上ないな。放置するわけにもいかねえし会うだけ会っとくか」


 辟易する気持ちを抑え込んで玄関へ向かう。


「遅い! メルビン様に仕える私をこんなに長く待たせるとは礼儀がなっていない!」


 イラッ


「お前がこの娘たちの主だな? よし、ついてこい」


 イラッ


「何で俺がお前についてかねばならんのだ?」


「はぁ? お前、わかっているのか。メルビン様が用事があるから、お前を連れて来いって言っているんだ。ならお前が来るのが当たり前であろう。早くついてこい」


 イライラ


「俺には用事がないのでお話したいことがあれば、どうぞ自分でお越しくださいとお伝えください」


「何を言っておる? 何でメルビン様がここへわざわざこねばならぬのだ? お前が来るのが当たり前であろう。つべこべ言わず来い!」


「だから用事があるなら自分で来るように伝えろって、自分で来る気がないなら俺への用事もたいしたことがないんだろ? じゃぁそれでいいじゃねえか」


「口の利き方と礼儀の知らないガキが、お前らこいつを連行してでも連れて行くぞ」


 後ろで待機していた騎士六人が前に出てきて、俺を捕らえようと行動を開始していた。剣を鞘付きのままでかまえ、俺を殺さずに無力化しようとしているのは明らかであった。


「大人しくついてくるなら痛い目を見ないで済むぞ。女たちは後でたっぷりと可愛がってやるから大人しくしてろよ」


 騎士たちのリーダーと思われる人物がゲスな声で俺と娘たちに警告を発していた。


「攻撃してくるというのであれば全力で抵抗させてもらう。俺たちは冒険者だ、貴族であれ王族であれ誰の命令も聞く必要がない! 冒険者ギルドが各国と契約をかわしているのに、こんな行いをしていいとでも思っているのか?」


「何を言っている? 私はただついてこいと言っているだけだ。それに、メルビン様の騎士に手を上げるということがどういうことか分かっているのか? お前たちとりあえず捕らえろ」


 騎士達が俺を捕らえようとするが、年長組のみんなが騎士達を無力化していた。ある騎士は腕をとられ地面とキスをしているような状態、ある騎士は首根っこを押さえられ地面とキスをしているような状況。全員が組み伏せられていた。


「き、貴様ら! こんなことをしてただで済むと思うなよ! メルビン様に楯突いた事を後悔させてやるからな! お前ら何をしている戻るぞ!」


 組み伏せられた騎士たちを娘たちが解放すると、慌てて豚の様な変なおっさんについて戻っていった。


「ん~何か言い方がイラッとしたからあんな対応とってしまったけど、絶対また絡んでくるよなあれって。どうすっかな~、騎士のリーダーみたいなやつは、娘たちをスケベな目で見てたしまたくるよな」


「ご主人様、申し訳ございません。私たちがあのような者たちを連れてきたために、こんなことになってしまいました」


「あ~気にしないでいいよ、何となく俺には理由がわかってるし、おそらく遅いか早いかの違いでしかない。しばらくは冒険者活動は中止にしよう。俺がいないところで絡まれたら助けてあげられないしな」


 お昼になり食堂に娘達が集まったので、食事の後に今さっきの出来事をみんなに伝えて、しばらく冒険者活動は中止にした。ダンジョンINダンジョンでレベル上げをするように伝えた。


 シルフのメイを呼んで、この敷地全体に結界をはるようにお願いする。


 貴族の遣いが帰ってから三日が過ぎた。お昼過ぎにメイから敷地に入ろうとしている人がいる、と報告を受ける。また来たか、今回はどんな手をつかうのだろう。あ、一応冒険者ギルドには前回の事を報告している。


 できれば貴族についていってほしかったが、強制はできないし過ぎてしまったことなのでしょうがない、強引な方法で連れ出そうとした貴族には冒険者ギルドから苦情を入れておくと話していたのに、やっぱりまた来たのか。


 とりあえず、様子でも見に行くか。


 俺の家の前に騎士たちが一〇〇人程いるようだった。


「そこの奴ら、人の家の前で邪魔だぞさっさと家に帰れ」


「やっと出てきたか忌まわしいガキが、この前騎士たちに手を上げた罪でお前を連行する」


「は? あなたたちが強引に俺を連れて行こうとして、自己防衛したにすぎませんよ? 勝手に責任を俺にかぶせないでください。冒険者ギルドからも苦情が行っているはずですよ」


「苦情? あれの事か、あんなものは事実ではないのだ無効に決まっておろう。とりあえず、ここを通すか早く出て来い、お前の罪を裁いてやるから早く来い!」


「どうしても俺を犯罪者にしたいわけか、目的はこの家にいる娘たちか? この世界の貴族ってのはweb小説に出てくるゲスが多いのか? 一つ言っておく、俺はここから出るつもりも、お前たちを入れるつもりもないからな」


「クソガキが! ふざけおって、ただで済むと思うなよ。魔法騎士たちこの結界をどうにかしろ!」


 杖を持った騎士たちが前に出てきて何やら儀式を始めた。


「メイ~これって大丈夫か?」


「ん~どうでしょうかね? 解呪は問答無用で解除することがありますので、何ともいえませんね。ですが、他の四大精霊に結界を重ね掛けしてもらえば問題ないかと」


「じゃぁガルドに結界頼むか、あいつのは確か反射だったよな」


 ガルドに伝言を頼み結界を張ってもらう。


「あのさ、いくら貴族だからって横暴がすぎんだろ? 後、結界の種類増やしたから下手にこっちくんなよ死ぬぞ。一応警告はしてやったからな」


 杖を持った騎士たちの儀式が終わり、メイの結界は運悪く解除されてしまったようだ。無害な結界を解除して、危険なガルドの結界に挑むつもりなのだろうか?

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