第4話新たな拠点と依頼
銀行の強盗事件が終わり、僕とソーカは無事にその場を切り抜けた。しかし、事件を解決したとはいえ、僕たちにはまだ大きな問題が残っていた。それは、今晩の宿と食事をどうするかということだ。
強盗事件の後、銀行員の女性、霧島雫は何度も僕たちに感謝の言葉を述べていた。彼女の焦りはもちろん、事件の状況を把握していたからであり、彼女の落ち度ではない。それでも、彼女の言葉にはどこか困惑した様子が感じられた。
「本当に、ありがとうございました。皆さんが助かりました……」
雫は頭を下げながら、深い感謝を示してくれた。しかし、そんなことよりも、僕たちは今夜の宿を確保する必要がある。
「気にしなくていいよ、僕たちはただやるべきことをやっただけだ」
僕は冷静に応じたが、内心では宿代の心配が頭をよぎっていた。ソーカもまた、彼女のクールな態度を崩さずにそばに立っていたが、さっきからお腹の音が鳴っているのが聞こえる。
「ところで、シャーロさん……」
雫が何かを決心したように僕に話しかけてきた。
「どうしました?」
「実は、あなた方が今どこに泊まっているのか気になりまして……もし、もしもお困りであれば、私の家に泊まっていただいても構いません」
その提案を聞いた瞬間、僕とソーカは一瞬驚きの表情を見せた。まさか、この女性が僕たちに寝泊まりを提供してくれるとは。
「本当にいいのですか? 僕たちは何も持っていないし、あまりお邪魔したくはないのですが……」
「もちろんです。お二人がいなければ、私はどうなっていたか分かりませんし、何かお力になれればと思いまして。家は広いですし、使っていない部屋もありますので」
雫の言葉に、僕は彼女の申し出を受け入れることにした。今は彼女の助けを借りるのが最善だろう。
雫の家に到着すると、その立派さに僕は少し驚いた。彼女が一人で住むには少し大きすぎるほどの広さで、家具や内装も上品で整っていた。
「ここが私の家です。お好きな部屋を使ってください」
雫は案内しながら言った。僕とソーカはそれぞれの部屋を選び、荷物を置いた(といっても、ほとんど荷物らしい荷物はなかったが)。
「ところで、雫さん」
夕食を共にした後、僕は彼女に尋ねた。
「何かお困りのことがあれば、私たちが力になれるかもしれませんが……」
雫は少し驚いた表情を見せたが、すぐに深く考え込むような仕草を見せた。何か心に引っかかることがあるのだろうか。
「実は……」
彼女は言葉を選ぶように慎重に話し始めた。
「友達が最近、ストーカーに悩まされているんです。彼女は警察に相談したのですが、証拠がなくて取り合ってもらえなくて……。それで、もしお二人にお願いできるなら、彼女を助けていただけないでしょうか?」
ストーカー被害。確かに、それは放っておけない問題だ。
「もちろんです。僕たちにできることなら、全力で協力しますよ」
僕はすぐに彼女の依頼を受けることに決めた。これは、僕たちがこの家を拠点にするための対価としても相応しいだろう。
翌日、雫の友人である佐伯美咲と名乗る女性が、僕たちの前に現れた。彼女は落ち着いた雰囲気の美しい女性だったが、その表情には明らかな不安が漂っていた。話を聞くと、彼女は数週間前から誰かに尾行されていることに気づき、家の周りや職場の近くでもその影を感じているという。
「その人の姿をはっきりと見たことはないのですか?」
僕は問いかけたが、美咲は首を横に振った。
「いいえ。いつも遠くから見ているような気がして、こちらを直視したことはありません。でも、何か不気味な視線を感じるんです」
ソーカは彼女の話を静かに聞きながら、すでに次の行動を考えている様子だった。
「分かりました。それでは、まず彼の行動パターンを探る必要があります。ソーカ、君の異能を使って、この周辺を見張ってみよう」
僕が指示を出すと、ソーカは頷き、すぐに動き出した。彼女の異能「音」と超高速の移動は、相手の不意を突くのに最適だ。彼女が周囲を調査する間、僕は美咲の情報を整理し、ストーカーの可能性がある人物を絞り込むことに集中した。
「おそらく、この人物はあなたの行動をかなり把握していますね。普通のストーカーとは異なるかもしれません」
「どういうことですか?」
美咲は不安そうに尋ねた。
「彼はただあなたを追いかけているわけではなく、何かしらの計画を持っている可能性があります。そのため、慎重に動かねばならないのです」
ソーカが戻ってきた時、彼女は何か手がかりを掴んだようだった。
「シャーロ、後ろに不審な動きがあった。追跡できるかもしれない」
「分かった、ソーカ。僕たちはこの人物の正体を暴き、彼の目的を明らかにしよう」
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