第3話 異能の力
目の前に広がる状況が一瞬で明らかになった今、僕が考えるべきは、どうやってこの事態を切り抜けるかということだ。もちろん、ソーカの異能「音」を駆使すれば、一瞬で解決できるかもしれないが、彼女の能力はそれだけに留まらない。ソーカは、音の力を利用して超高速で動くことができるのだ。それが、シャーロである僕にとって、事件解決の最も強力な武器となる。
「シャーロ、どうする?」
ソーカが静かに問いかけてきた。彼女の声は落ち着いていて、まるで周囲の状況など全く気にしていないかのようだった。
「まずは、彼らの意図を探ることだ。焦ることはない、彼らはまだこちらに危害を加えるつもりはなさそうだ」
僕はそう答えながら、周囲を観察した。男たちの動きには一貫性がなく、ただの強盗とは思えなかった。何か別の目的があるに違いない。そして、その時、僕は気づいた。男たちのリーダー格と思われる人物、彼の肌が異様に硬質化していることに。
「そこのお前、動くな!」
突然、背後の男が大声を上げた。僕が少しでも動こうとすれば、彼は即座に引き金を引くだろう。しかし、僕は冷静さを保ち続けていた。
「なるほど、君たちはただの強盗じゃない。何か、もっと大きな目的があるんだろう?」
僕は敢えて挑発的に問いかけた。男たちは一瞬戸惑ったが、すぐに顔を引き締め、口を閉ざした。だが、その一瞬の表情の変化が、僕にとっては大きな手がかりだった。
「シャーロ、時間がない」
ソーカの声が再び耳に届いた。彼女はすでに状況を把握しており、僕の次の指示を待っていた。
「分かった、ソーカ。君の異能を使う時が来たようだ」
僕はそう告げ、彼女に一つの指示を出した。ソーカは静かに頷き、次の瞬間、目に見えないほどの速さで動き始めた。
ソーカの異能「音」には、音波を操作するだけでなく、その音の振動を利用して自身を超高速で動かす力もある。彼女がその能力を発動する時、周囲の空気が振動し、彼女の姿が消えるほどの速度で移動する。今も、ソーカはその力を駆使して動き出した。
男たちが何が起こったのか理解する間もなく、ソーカはすでに一人目の男を無力化していた。次の瞬間、二人目の男も同様に倒され、彼らは何も抵抗することなくその場に崩れ落ちた。
「これで終わりだ」
僕は静かにそう呟きながら、男たちのリーダー格に近づいた。彼の硬化した肌は、普通の攻撃ではびくともしないだろう。しかし、僕はすでに彼の弱点に気づいていた。硬化は強力だが、限界がある。特に、超高速での連続攻撃には耐えられないはずだ。
「ソーカ、最後だ」
僕の指示を受け、ソーカは再び動き出した。彼女の姿がほとんど見えない速度で、男のリーダーに連続攻撃を浴びせる。硬化した肌に無数の振動が走り、やがて亀裂が入った。
「ぐっ……!」
リーダー格の男が呻き声を上げ、その場に膝をついた。彼の硬化が解け、ついに無力化されたのだ。
「君たちが何を企んでいたかは知らないが、これで全て終わりだ」
僕はそう告げ、男たちが完全に無力化されたことを確認した。彼らが何を目論んでいたのかは後でじっくり聞き出せばいい。今は、ソーカの力と僕の推理力がまた一つの難事件を解決したことに満足していた。
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