第6話 ひかげは変わり始める
起きていつもの通学路。なんだかいつも歩いている通学路より…少し明るくなったような気がする。別にいつもの道だ、寄り道とか、裏道とか、近道を通っているわけではない。そもそも近道なんてあったらみんな行くだろう。…どうして明るく見えるんだろう。そんなことはどうでもいい、今は。教室に学校に着いたら職員室で担任の先生と顧問の先生に会わなければ…。
「え!?君が部活動!?」
さり気なく馬鹿にされた。でも確かに、何もかも平凡で部活動なんて一年間やっていない人がいきなり部活動をやるって…どういう風の吹き回しなんだと思っているのだろう。だけど僕は…一応本気だ。心晴さんに言われたことなんだがな。…誰かから勧められた事だから完全に「本気」というわけではない。でもやるつもりではあるから少し本気ではある。
「いきなりどうしたの…文芸部に入りたいって…」
「…少しやりたくなりまして」
知っていると思うが本当の理由は心晴さんに入ったら僕の悩みが解決されると言われたからだ。カウンセリングの人に僕は従っているに過ぎないのだ。だけどせっかく解決方法を提示してくれたのだからやらないと考えてくれた心晴さんに失礼だ。…僕は文芸部に入る。何を言われても。
「気分が変わったなんて…いいけど。…顧問の先生の許可も必要だよね。呼んでくる」
「…ありがとう…ございます」
先生の目は驚きしか宿っていなかった。喜びとか、安堵とか、安心とか…祝福してくれる感情はなかった。多分、入っても足手まといにしかならないのだと思っているのだろう。…でもそう思われても頑張ろう。文芸部…
「終わったよ。で、今日が文芸部の活動日だから放課後活動場所に行ってね」
「分かりました…」
放課後はいつも戻って夕暮れを見に行くだけだったけど、今日は夕暮れを見れそうにない。活動の終了時間が五時ぐらいだから急いでいけたら見れると思うけど部活の後はとても疲れていそうだから無理そうだなぁ…。
「ふぅ…」
今日もいつもどおりになると思っていた。だけどまさかいつも通りにならない日がするなんて思わなかった。
…文芸部…そういえばこのクラスにも文芸部の部員がいるんだっけ。…挨拶ぐらいはしておこうかな。見学もしていないのにいきなり入部するって言われたらどんな反応をするのかな。確か名前は日和色(ひより しき)。という名前だったっけ…。日和さん…あぁ…来てる。小説でも書いているのだろうか、何か書いている。…邪魔してしまうのは悪いけど挨拶ぐらいは…しないと。
「あの…日和…さん」
「ん?…あぁ…えっと君は…あぁ、日影さんだっけ」
「はい…そうです」
「それで何の用?」
「…あの…今日から…文芸部に入部することになりました…なので…よ、よろしく…お願いします…」
「へぇ〜…。…え?」
凄い困惑の目を僕に向けてきた。そりゃあ見学もしていないし、僕自身小説に興味すらないやつがどうしていきなり入部するとか言い出すのか。疑問でしかないだろう。訳がわからないだろう。
「え、いきなりどうしたの」
「ただ…やりたくなっただけです…はい…」
「それなら見学してからでいいのに…まぁいいや。じゃあ、よろしくね」
なんだろう、正論を言われたような気がする。見学してからやればよかった…と今更思っている。まぁ、見学しても恐らく入ると思うし、いいか。
「それでは…」
授業が全て終わると僕は新しい日常を送ることになるかもしれない。僕は朝のホームルームが始まる前に窓を見た。まだ日陰に立っているが…僕が日当に当たることが出来るのだろうか。
眩しかったはずの日は少しだけ馴染めたような気がする。
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