【バカエッセイ】「世界中のこどもたちが」の歌詞における隠された真実



 「世界中のこどもたちが」という歌を読者諸君はご存知であろうか。以下に歌詞を提示する。



 世界中の こどもたちが

 いちどに 笑ったら

 空も 笑うだろう

 ラララ 海も 笑うだろう


 世界中の こどもたちが

 いちどに 泣いたら

 空も 泣くだろう

 ラララ 海も 泣くだろう


 ひろげよう ぼくらの夢を

 とどけよう ぼくらの声を

 さかせよう ぼくらの花を

 世界に 虹を かけよう


 世界中の こどもたちが

 いちどに 歌ったら

 空も 歌うだろう

 ラララ 海も 歌うだろう

(作詞:新沢としひこ 作曲:中川ひろたか)



 さて、この歌詞に関する不可解性について3つほど提示する。


 一、世界中のこどもたちが笑う実現性


 二、空、海、の擬人法的表現


 三、虹の本当の意味



 順番に見ていこう。

 

 

 一、世界中のこどもたちが笑う実現性


 タイトルに、そして何度も繰り返されるフレーズが「世界中のこどもたちが」というテクスト上では「主語」にあたるワード(動詞は 笑う 泣く 歌う と変化するが)に注目する。


 深く吟味するまでもなく「世界中のこどもたち」が同時並行的に笑・哀・歌を表現することは不可能であり、ちょっと賢い幼稚園児ですらもニヒルに口元を上げながらしぶしぶ口を開けていることに違いない。


 手元のデータで調べてみると、18歳未満の総人口が約23億3077万4000人とある(UNICEF「世界子供白書2019)。例えば、各国政府の呼びかけによって同じ時刻同じ動画を視聴するように誘導し、思わず笑みがこぼれてしまうような動画を流せば上記の歌詞が現実に成立するといえる。


 が、動画を気ままに観れる環境で生活を営んでいない子どもたちも数多くいるわけであって、そもそもこんな法案を国連で採決するならば必ずロシアや中国がここぞとばかりに拒否権を行使するであろう。よって、実現可能性は限りなく低い。


 ここで問題になってくるのは、なぜ作詞者は「世界中のこどもたち」というあまりにも壮大な主語を選んだのかである。幼気いたいけな子どもたちなら騙せるとでも思っていたのだろうか。いや、そんなことはない。近頃のガキはインターネットという悪魔の道具によって様々な情報を親の知らないうちに取り入れ、知識を吸収している。サンタクロースの正体などとっくの昔に露見されていることだろう。


 (余談だが、まだ純朴だった頃の私は『サンタはどの家庭にでも侵入できる→侵入できるのは逮捕されないくらい偉いから→総理大臣→安倍さんがサンタ!!!』 という演繹法を用いた素晴らしい論説を繰り広げていたのだった)


 私が思うに、「世界中のこどもたち」は「地球上の人間社会に生きる18歳未満の少年少女」を指してはいない、つまり比喩で別の「何か」を本当は表現しているのではないか。


 と、ここでは結論を出さずに、次の議題へと移る。



二、空、海、の擬人法的表現


 先ほどまで推論してきた「世界中のこどもたち」が笑・哀・歌をしたら、引きずられるように同じ感情を表していくのが「空」と「海」である。もちろん、上三つの動作は表情筋を持っている人間特有の表現技法であり、広義の範疇でいえば野生動物も「鳴き声」を使って感情を示すことは可能である。


 だがしかし、大地と一体化して自然そのものといえる空と海が笑ったり泣いたり歌ったりすることはありえない。ホラーである。THIS MANのような顔が空にぼんやり浮かんでハハハと笑っているものなら、この世界が夢だと確信して傍にあるナイフで首を掻っ切ることだろう。


 比喩的表現、もっといえば擬人法を扱っていることはいいようもない事実だが、果たして何を示唆しているのだろうか。


 古来、日本の文化では雨模様を哀愁の涙、「空が泣いている」と表現することがある(雨=哀の等式)。逆説的に考えれば晴れ=笑うという等式が成り立つ。


 同じように海についても考えてみよう。「海が泣く」とは海にとって悪いこと(注意すべきは海に住む海洋生物ではなく、海そのものに悪影響を及ぼす事象)であるが、考えられるのは海面上昇、海洋汚染といった環境問題に違いない。「海が笑う」とはその逆、美しい透き通った海の姿を表現しているはずだ。


 以下の表を見てほしい。




 

 |世界中の  |  

 |  こども | 空 | 海

――――――――――――――

笑|      | 晴れ |美しい姿

――――――――――――――

泣|       | 雨  |海面上昇

――――――――――――――

歌|       |     |

 



 もうお分かりであろうが、「世界中のこどもたち」は環境問題を背後に隠した歌であることが見て取れる。この曲の発表が2003年で、世界全体の温室効果ガス(CO2)の削減を目標に掲げた京都議定書が発効した1997年にほど近く、人々の間でも環境保護が周知されてきた時期であった。


 ここで先ほど横に置いておいた議題、「世界中のこども」とは何を指しているのか、について言及したい。他の項目は「空=晴れる」「海=美しい海」と立てられ、まるで幼気な子どものように能天気な等式であるとイメージが付けられないだろうか。気象の様相は晴天だけでなく、雨や曇り、雪もあるのに(乾燥地域は一年中降水量がほとんどないが、『世界的』の文言に適さないため外れ値とみなし、ここでは無視する)。つまり、「世界中のこども」が笑う=「子どものような純粋無垢な精神」と定義できる。


 同じように、「泣く」パターンも見ていこう。子どもが泣く、子どもではなくなる、子どもには衝撃の強い大人の事実、といったあたりか。世界の大人は平気で二酸化炭素を放出するし、ゴミを海に捨てるし、地球を汚しているという事実を知った無垢な子どもが嘆き悲しむ姿をイメージしていただければ良い。なんとも、将来捻くれそうな子どもだろうか。よって、「世界中のこども」が泣く=「汚い大人の真実」とでも表現できるだろう。


 

 三、虹の本当の意味


 

 論に入る前に、もう一度表を以下に提示しておく。



 |世界中の    |  

 |  こども   | 空 | 海

――――――――――――――

笑| 子どものような |晴れ |美しい

 | 純粋無垢な精神 |   | 姿

――――――――――――――

泣| 汚い大人の真実 | 雨 |海面上昇

――――――――――――――

歌|        |    |

 




 短い本曲の唯一メロディが変わる部分(Bメロといったところか)であるが、とても興味深い意味が隠されているたので、ここで論述する。


 ひろげよう~とどけよう~さかせよう~を紐解く前に、「世界に虹をかけよう」という一文に注目していきたい。


 前にちょろっと述べた通り、世界にはほとんど雨の降らない地域も存在する。砂漠気候や寒帯の氷雪気候といった地域であるが、虹というのは雨上がりの空気中に存在する水滴が太陽光と発射して、つくられるものだ。まさか作詞者がそのような地域を横に省いて「これが世界です」と差し出すわけではあるまい。


 「世界に虹をかけれる」状況は、容易に想像がつける。つまり、世界中どの地域においても降水が観測できればいいというわけだ。それは「空」がずっと「泣いている」ことでもあり、「汚い大人の精神」が世界を席巻してしまったとも考えられる。


 もう一度、分かりやすくいおう。地球があくどい大人の手により、異常気象が世界各国で発生してしまった未来を、この一文は指し示している。

 

 となれば、その前の三つの文の意味内容もおのずと明らかになっていく。「ひろげよう ぼくらの夢を」は地球環境の悪化を鑑みずに、科学技術の発展を無理やり進め、「とどけよう ぼくらの声を」は先進国が発展途上国を事実上支配下に置きグローバル規模で幅を利かせ、「さかせよう ぼくらの花を」は先進国の身勝手を影響力の小さい国々に無理やり植え付ける。なんとも後味の悪い歌詞であった。


 さあ、そしてラスト四行の意味も解いていく。


「世界中のこどもたちがいちどに歌ったら、空も海も歌う」

 空も海も「悪い大人」の手に落ち、むちで叩けば鳴くような洗脳状態に陥ってしまった光景が思い浮かぶだろうか。人間の傲慢な態度が空と海、そして地球環境を陥れることを「世界中のこどもたち」は示唆していたのである。



 |世界中の   |  

 |  こども   | 空 | 海

――――――――――――――

笑| 子どものような |晴れ |美しい

 | 純粋無垢な精神 |   |  姿

――――――――――――――

泣| 汚い大人の真実 | 雨 |海面上昇

――――――――――――――

歌| 世界を牛耳る  |洗脳 |洗脳

 |     支配者 |状態 | 状態

 


 上がまとめの表である。


 結論をもう一度提示すると、「世界中のこどもたち」とは「空が晴れ」、「海が美しい」という希望を持った子どもが環境汚染(によって引き起こされる異常気象の中の「豪雨」や「海面上昇」)を進んで行う汚い大人たちに失望、そして先進国の支配者は発展途上国を経済的に支配下に置いて世界を牛耳り、地球上の環境をも支配した気でいる傲慢な人間共を暗喩し、この曲を歌う未来ある子どもたちへのメッセージであると受け取れる。



 以上を持って、論説を終了する。

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