第23話 愛情こもったお弁当 ※桃井美羽視点
私、
元々料理をするのは大好きだし、得意だけど、私が今勉強しているのは‴お弁当の作り方‴だ。
二年生になってから約一ヶ月、私は幼馴染である
たかがお弁当、されどお弁当。
そんなお弁当にどうしてそこまで
でも、同級生の女子にお弁当を作ってもらえる男子って、すごく羨ましいって周りから思われると思う。
それに、晴の好きな人である
そして今日、ゴールデンウィーク明けの日。
この日は初めて晴にお弁当を食べてもらう日だ。
しかし、晴には私がお弁当を作ってきた、ということを伝えていない。
じゃあ晴がお弁当を持ってきちゃうじゃないか、って?
そんなのは知っている。でも、問題はない。
晴は休み明けの日は、いつも購買でパンを買っているんだよね。
前にどうして? って聞いたら、休み明けでお弁当を作るのが面倒だから、らしい。
そのため、晴が購買に行く前にお弁当を渡せば問題はないのだ。
こういうことはずっと一緒にいる幼馴染だからこそ気づけるから、晴が幼馴染でよかった、といつも思う。
そして、運命の時間――昼休みになった。
「晴〜! 今日もいつも通り購買?」
「うん、その予定」
さりげなく弁当を持ってきていないか確認する私、完璧。
「じゃあさ、よかったら私が作ったお弁当食べない?」
「「「……はぁぁぁあああ!?」」」
そう言いながら持っていたお弁当袋を見せると、晴だけでなく、クラス全員が騒ぎ始めた(予定通り)。
「え……いいのか?」
「うん。だって、このお弁当は晴のために作ってきたんだし」
「そ、そうなのか。ありがとう」
晴は周りの視線を気にしながら、遠慮がちにお弁当を受け取った。
相変わらずクラスにいる人は全員騒いでいる。
そして、柊木さんは「先を越された……!」と言いたげな顔でこちらを見ている。
ふっ……柊木さんも料理が得意なのは晴から聞いていたし、早めに勉強しておいてよかったよ。
先手必勝! 絶対に柊木さんには負けない……!
「晴! 早く食べてみて」
「わかった」
晴は私が一生懸命作った二段のお弁当を開けた。
一段目には大きめなおにぎりが四つ、二段目には色とりどりのおかずがたくさん詰まっている。
「すごいな……全部美味しいぞ……!」
「本当に? よかった〜!」
自分のお弁当はいつも自分で作ってるから、組み合わせはどんな感じに詰めればいいか分かるけど、男子にあげるお弁当は初めてだ。
本当に頑張ったし、大変だったんだよ〜。
どんなお弁当を作れば喜んでくれるのか、それにまた食べたいと思ってくれるのかをずっと考えてた。
今ここにあるお弁当こそが、私のこの一ヶ月の集大成。
柊木さんに対して、私はもう既に一歩出遅れてる。
それなら彼女より少しでも早く、アクションを起こさなければならない。
「……ちょっと桃井さん? お弁当はずるいと思うのだけど」
「え〜? 柊木さんこそ、いずれは晴に食べてもらう予定だったんじゃないの〜?」
図星を突かれたのか、「ギクッ……」と柊木さんから聞こえてくる。
本当によかったよ。
柊木さんのことを晴が教えてくれて。
そんな私の言葉を聞いた男子(晴を含める)は、目をぎらりと光らせて視線は私から柊木さんへとシフトした。
「九条の野郎に作るのなら、僕にも作ってください!」
「あいつには桃井さんが作るみたいだし、俺に!」
そんな男子たちの猛攻に一瞬戸惑った柊木さんだが、すぐに顔を引きつらせて冷酷姫モードになった。
「そもそも私はあなた達の名前を知らないのだけど? どうして私がそんな名前すら知らない人たちのために、お弁当を作らなきゃいけないのかしら。おバカさんにも程があるわ」
「「「おバカ、さん……」」」
柊木さんの冷酷姫モードは、女子の私からしてもすごく怖い。
でも彼女を好きな男子たちなら、こんな言葉で屈するわけがない!
「「「もう一回……! もう一回言ってー!」」」
え……嘘、罵られて喜んでるの……?
さすがにキモくない……?
柊木さんはいつも、こんな人たちに付き
ちょっと可哀想な気もするけど……
「柊木さん? 晴にお弁当を作るのは私の役目だから、割り込んで来ないで欲しいな〜。その辺の男子たちに作ってあげなよ〜」
「絶対に嫌だわ……ふふふっ、いい事考えた」
「……え?」
いい事考えた? どういうこと?
もしかして、この男子たちに毒入りのお弁当でも作ってあげるつもり?
さすがにそれはやりすぎな気もするけど……
そして、まだ昼休みで授業は二時間も残っているというのに、柊木さんは体調が悪いと言って早退した。
本当に何を考えているんだろう……
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