第11話 幼馴染と好きな人
誰もが感じる
確かに休み明けの月曜日は憂鬱でしかないが、俺は別の理由で憂鬱になっていた。
昨日、幼馴染である
元々日曜日は、俺は柊木さんと遊ぶ予定だった。
まず、俺との予定を延期させて、知らないイケメンと遊んでいるというのは、少し酷くないかと思う(俺も結局、美羽と遊んでたからお相子だけど)。
でも引っかかるのが、イケメンな彼氏がいるにも関わらず、俺に遊ぶ約束を持ちかけてきたことだ。
男嫌いな柊木さんが二股ということは、少し考え難い。
「本当に意味がわからん……」
「
昨日のことについて色々考えながら通学路を歩いていると、珍しく朝から元気な美羽に後ろから強い力で肩を叩かれた。
いつも朝は元気がなくて寝癖が酷い美羽だが、今日は珍しく元気で、寝癖はどこにもついていない。
なんだ、今日は雪でも降るのか?(現在春)
「おう、おはよ。珍しく朝から元気だな、何かあったのか?」
「別に何もないよ〜。今日から毎日晴と登校するために早く起きようと思ってね」
「……そうなのか。じゃあ、明日から迎えに行こうか?」
「うん! よろしく!」
「はいよ」
それからはいつもの通り、他愛のない話で盛り上がりながら学校に向かい、教室に着くと、もう見慣れた光景が目の前に広がってた。
教室の外で群がる他クラスの男子たち、そして教室の中でも群がっている同じクラスの男子たちが、一人の少女を囲んでいる。
この辺で群がる男子たちの目的はただ一つ。
それは、柊木瑞希を見ることである。
冷酷姫と呼ばれる柊木さんは、この学校で一番の美少女であり、恐らく学校一の有名人だ。
そんな柊木さん目当ての男子たちの会話が、嫌でも俺と美羽に聞こえてきた。
「誰かは知らないが、男のこと待ってるらしいぞ」
「男に対して冷酷な言葉を浴びせるあの冷酷姫が男待ち!? 一体誰なんだそいつは!」
「あの柊木さんに惚れられるとかどんなイケメンだよ! 畜生!」
そんな色々な言葉が聞こえてくる中、俺と美羽は教室に入った。
どうせ柊木さんが待っているのは、昨日のイケメンだろう。
でも、このクラスにはあんなイケメンいなかったはずだ。
あー! もう! 本当に誰なんだよあいつは!!
「あ、
「……はい?」
俺の名前を呼んだ主、それはまさかの人物、柊木瑞希だった。
そんな衝撃的な出来事により、教室にいた俺たちを含め全員、そして廊下に立っていた男子たちは大混乱に陥った。
「おいおい、なんであの冴えない顔の奴が!?」
「九条てめぇ! いつ抜け駆けしやがった!」
「お前は幼馴染の桃井さんとイチャイチャしてろ! 柊木さんには手を出すな!」
「「「そうだそうだー!」」」
いくら何でも酷すぎませんかね……
「……うるさい。ちょっと黙っててくれない?」
「「「すいませんでした!!」」」
その場にいた群衆を、嫌な顔一つ見せただけで一瞬にして黙らせる柊木さん。
その姿は‴冷酷姫‴と言うより、‴女王様‴だった。
「九条くん」
「……は、はい」
「昨日のことなんだけど、私と一緒にいた男子、あれ彼氏じゃなくて弟なの。誤解させてしまってごめんなさい」
そう言って、深々と頭を下げる柊木さん。
「え……そうなの?」
「ええ。実は弟に告白してきた女の子を諦めさせるために、彼女のフリをして欲しいって頼まれて、それで……」
「なるほど……」
もう一度深々と頭を下げて謝罪する柊木さんを見て、俺たち(特に美羽)も申し訳なくなってしまった。
「おい、美羽」
「ギクっ……!」
「柊木さん、ごめん。実はこっちも嘘をついてたんだ」
俺の一言により、きょとんとした柊木さんの顔はすぐに明るくなった。
「ごめんなさい……実は私と晴は恋人なんかじゃなくて……その、ただの幼馴染なんです……」
「そうなのね」
この一連の会話を終えて、よかったと安堵する俺。
そして、「はぁ……」と息を吐きながら目を瞑って胸に手を当てている柊木さん。
この二人の行動を見て、美羽は気づいてしまった。
‴冷酷姫と呼ばれている女の子、柊木瑞希は私の幼馴染である
そう、この二人は‴両思いである‴ため、何があっても絶対に近づけてはいけない。
「……まぁでも、いずれは晴と恋人になって、結婚もする予定だから、柊木さんが入る余地なんてないんだけどね〜」
昨日に引き続き、またしても美羽による爆弾発言がクラス中に響き渡る。
「「「けけけ、結婚……!?」」」
「ちょっ……美羽!? 急にどうしたんだ!」
「別に〜? いつも私たちがしている話をここでしているだけだよ〜?」
「俺はこんな話をお前と一度もした覚えがないぞ!?」
美羽の爆弾発言を聞いた柊木さんは、「ななななな……!」となを連発しながら、顔を赤く染めている。
静寂していたクラスの皆は、再び大混乱に陥った。
そして、爆弾を投下した張本人である美羽は、「えっへん!」と謎に胸を張っている。
なんなんだこの状況。何もかもが意味不明だ。
「も、桃井さん……? 一体何を言ってるのかしら。結婚? それは話が早すぎるんじゃない?」
「全然普通だよ〜。あと一年ちょっとあれば晴も結婚できるようになるし」
俺の誕生日は六月十五日だ。
ちなみに美羽の誕生日は四月十九日である。
確かに、あと一年と二ヶ月もしないうちに結婚できるように……って、違ーーーーーーう!!!!
「そうなの……まあ、私も六月に生まれたからあと一年ちょっとあれば結婚できるけどね」
おいおい、柊木さん、その情報をこんな所で開示していいのか。
この辺にいる群衆がすごい盛り上がってるじゃないか。
……って、なんで柊木さんは対抗してるの!?
「ぐぬぬ……」と睨み合ってる美羽と柊木さん。
幻覚なのかもしれないが、二人の背後には……
「おい、あれを見ろ!」
「な、なんだあれは!?」
どうやら俺だけでなく、周りにいた皆にも見えているらしい。
美羽の背後には、綺麗な白の羽を
柊木さんの背後には、漆黒の羽を纏って、
これぞ、まさに天使と悪魔の戦い。
しかし、その二人のいがみ合いは、始業のチャイムが鳴るまで続いたが、決着はつかなかった。
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