魅力的な義妹と幼馴染に「好きな人ができた」と伝えてみたら、なぜか急に俺を取り合い始めたんだが。
橘奏多
第1話 好きな人
俺、
名前は、
彼女は、容姿端麗、才色兼備で学校中で注目の的となっている、言わば高嶺の花だ。
手入れの行き届いた白百合色のストレートヘアーはさらさらとしていて、清楚さを感じさせる真っ白な肌は肌荒れを知らない滑らかさを保っている。
よって、男子からの人気はもちろんだが、女子からの人気も絶大である。
「いやー、柊木さんは今日も可愛いなー!」
「ほんとそれなー! でも、あの冷酷さには敵わないっしょ」
そう、柊木瑞希は高嶺の花であると同時に、‴冷酷姫‴と周りから呼ばれている。
このあだ名が付いたのは、高校に入学して間もない頃に起きた事件がきっかけだ。
※※※
入学式当日、一人の少女、柊木瑞希は注目を浴びていた。
柊木さんの容姿は、とても美しく、ファッションモデル顔負けのすらりとした華奢な体格をしている。
「なんだあの子、めっちゃ可愛い……」
「よかった……! この学校にしてよかった!」
このように、入学してすぐの男子たちは、柊木さんに一目惚れをしていた。
恥ずかしい話だが、かく言う俺もその一人だった。
そして、入学式の次の日、事件は起きた。
「あなたに一目惚れしました! 好きです! 付き合ってください!」
「……は? そもそも、あなた誰なの? 気安く私に話しかけないでくれる? 迷惑だわ。一応返事をしておくけれど、あなたみたいな豚に興味はないの。金輪際話しかけないで」
「え……す、すいません……」
一人の男子生徒が柊木さんに告白したのが、全ての始まりだ。
入学式の次の日に告白すること自体有り得ないが、柊木さんの振り方もかなり冷酷だった。
その日から柊木さんは色々な人に告白され、どんなに格好いい男子にも同じような反応を見せた。
そして付いたあだ名は‴冷酷姫‴。
その名の通り、告白してきた男子に対して冷酷な言葉を浴びせるお姫様だ。
※※※
今日は待ちに待った始業式で、俺は高校二年生になる。
そして、幾度となく神頼みしたクラス替え。
昨日は今日のクラス発表が楽しみで、ずっと寝れなかった。
――俺は、何としても柊木さんと同じクラスになってみせる!!
もちろん自分でクラスを決めることは出来ない。だが、神様は心優しい御方。そう信じている。
「どうか柊木さんと同じクラスにしてください。お願いします。お願いします。お願いします」
神頼みを心の中で延々としながら、掲示板に張り出された新しいクラス表を見ると、同じクラスの位置に俺と柊木さんの名前があった。
(…………よっしゃぁぁぁあああ!!!)
心の中で、大きな声で叫びながらガッツポーズ。
そして、再びクラス表を見ると、同じクラスにもう一つ、知っている名前があることに気づいた。
「……って、あいつも一緒なのか」
その名前は、
彼女とは、小学三年生からの付き合いで、今もお互いの家に行ったり来たりしている仲だ。
まあ、言わば幼馴染である。
「晴〜、おっはよ〜」
噂をすれば影がさす、とはまさにこの事だろう。
肩まで伸びた綺麗なダークブラウンの髪に、少し寝癖がついた状態でやって来たこの女の子こそ、先程噂をしていた桃井美羽その人である。
「おはよ……って、お前……始業式から遅刻って、本当に昔から変わらないな。朝どんだけ弱いんだよ」
「今日は夜更かししてたせいで起きれなかったの! それに、いつも晴が起こしに来てくれないからいけないんです〜」
「どうして、俺がお前を起こしに行かなきゃいかんのだ!」
「え〜〜〜! 晴のケチ!」
「はいはい。それより寝癖直してこい。待っててやるから」
「わかった〜」
「いや〜、また晴と一緒のクラスで本当によかったよ〜」
俺は寝癖をしっかりと直した美羽と一緒に、新しいクラスに向かっていた。
「それな〜。俺も美羽がいてくれて助かったわ。他に仲良いやつ一人もいなかったし」
「えへへ〜。じゃあ、クラスの中では私が晴を独り占めだ〜」
幸せそうに頬に手を当てながら笑う美羽は、まさに天使で、可愛すぎて直視することが出来なかった。
さすがにあの顔は反則だろ。心臓に悪すぎる。
そんなこんなで新しいクラスに着き、ドアを開けると、もう既にクラスのほとんどの生徒は自席に着席していた。
もちろん柊木さんも着席していて、早くもクラスの注目の的となっている。
遅れてきた俺たちは、気まずさを感じながら、自席の場所を確認し、それぞれ自席に向かった。
「知ってる人が美羽と柊木さんしかいない。そして男子に知っている人が一人もいないんだが……」
美羽や柊木さんと一緒のクラスになれてめっちゃ嬉しいけど、さすがに男友達が一人もいないのは辛い。
と言っても、柊木さんとは話したことがないし、多分認知すらされていないんだろうけど。
まずは勇気を出して男友達を作ろう……
柊木さんと仲良くなるのはそれからだ。
「な、なぁ! 俺、九条晴也。よろし……」
「晴〜! 暇だからお喋りしよ〜」
折角勇気を出して近くの男子に話しかけようとしたが、途中で俺の声は美羽の大きな声によって、完全にかき消された。
「あ、ああ……」
「元気ないみたいだけど、どしたの?」
何も気づいていないみたいだが、悪気は無さそうだし、怒る気にもなれなかった。
「いや、元気だよ。ちょっと眠いだけさ……」
「そう? ちゃんと夜は早く寝なきゃダメだよ?」
「お前だけには言われたくないわ!」
こうして、平和に新たな生活が幕を開けたのだった。
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