第18話
朝の通学時間、ユイは僕に聞いてきた。
「晴人、ファンクラブって何だ?」
「うーん、憧れの人を共有する団体かな?」
「そうか、やっぱりよく分からないな」
ユイは珍しくため息をついている。
「どうしたの? ユイ? 何かあったの?」
「実は、葉山が私のファンクラブを作ったので写真を撮らせてくれと言ってきたんだ」
「ええ!? 葉山さんが!? って、ユイのファンクラブ?」
「ああ」
ユイは頷くとぽつりと言った。
「……面倒な事は嫌だ」
「とりあえず、学校に行ってみよう」
「そうだな」
ユイと僕は学校につくと教室に入った。
「おはようございます、ユイちゃん、伊口君」
「おはよう、葉山!」
「おはよう、葉山さん」
僕たちが挨拶をすると、葉山さんはスマホのカメラをユイに向けた。
「ユイちゃん、朝の写真良い?」
「……まあ、かまわないぞ?」
ユイはあまり嬉しそうでは無いけれど、葉山さんの勢いに押されて写真を撮られていた。
「記念すべきファンクラブ通信第一号ですね」
葉山さんは嬉しそうに、会員制のSNSに画像をアップした。
「ユイのファンクラブって今、何人くらいいるの?」
「はい、今のところ60人くらいです」
「え、そんなに!?」
僕が驚くと、葉山さんは少し申し訳ないと言った表情で言った。
「そうですよね。まだ、少ないですよね」
「いや、逆だって!!」
学校内だけで60人もの人が、ユイのファンクラブに入ってるなんて僕は信じられなかった。
「写真も公開してるので、会員制なんですよ。一応、紹介制で限られた人しかファンクラブには入れないようにしているので、ユイさんにはご迷惑はかからないかと思います」
「うん、私は何も変わらないぞ?」
ユイは興味ないという様子で、授業の用意を始めている。
「あの、ユイのファンってどんな人が多いんですか? 葉山さん」
「そうですね。大人しい人もやんちゃな人もいますから。でも、みんないい人だと思いますよ」
僕はそうですか、とだけ返事をした。
僕だけじゃ無く、ユイも面倒なことだけは避けたいと思っているようだった。
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