第17話
バレンタインの翌日、ユイは上機嫌だった。
「なあ、晴人、今日はチョコレートが安く買えるらしいぞ?」
ユイはソワソワした様子で僕に言った。
「あ、そうか。バレンタインの売れ残りが売られてるかもね」
僕はユイにそう言うと、学校に出かける準備を続けた。
「ああ! なんか葉山が教えてくれたんだ。今日もチョコを買いに行くぞ!」
「その前にユイ、アルバイト先の人にチョコあげられたの?」
僕は心配していたことをユイに聞いた。
「あげたぞ! 私からチョコをもらえるとは思わなかったと感謝された!」
「そっか。よくできたね、ユイ」
僕はユイの頭を優しく撫でた。
「晴人は葉山からチョコレートを貰わなかったのか?」
「う……葉山さんからはユイへのチョコレートを預かっただけだよ」
「そうか、残念だったな、晴人」
僕はしょんぼりとしたままユイを見た。
「しかたない。私のチョコレートを分けてやろう!! 晴人には世話になっているからな」
ユイはそう言って台所では無く、玄関にあった袋から小さめのチョコレートを取り出して僕に渡した。
「ありがとう、ユイ」
「礼はいらん! 学校で何故が女子達がくれたチョコレートの残りだからな!」
僕はびっくりした。
「ユイ、友達からもチョコを貰ったの?」
「ああ。なんか、隣とか上の学年とか、下の学年とか、よく知らない奴からも貰った」
ユイは有名人になっていたんだな、と僕は驚いた。だけど、よく考えたら痴漢を退治したり、体育祭のリレーでは最下位から追い抜いてぶっちぎりで優勝したり、結構派手なことをしていた。
「食べないのか? 晴人」
「帰ってから食べるよ」
「そういえば、佐藤さんやアルバイトの人たちが、ホワイトデーを楽しみにするようにいってたけど、ホワイトデーって何だ?」
「バレンタインデーのお返しをする日だよ」
そう言いながら僕は、ユイのチョコレートのお返しを考えなくちゃいけないな、と思った。
「ユイ、誰からチョコレート貰ったか覚えてる?」
「覚えてないぞ」
胸を張って答えるユイの姿を見て、僕の胃が軽く痛んだ。
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