第14話
三学期が始まった。
ユイと僕は大きなおむすびを持って、学校に行った。
「今日は学食じゃないのか?」
「うん。いつも学食だと、お金が足り無くなっちゃうからね」
ユイと歩いていると、声をかけられた。
「おはよう、晴人くん、ユイちゃん」
「おはよう、葉山さん」
「おはよう、さくら!」
ユイはもう葉山さんのことを呼び捨てにしている。
葉山さんは少し笑って言った。
「ユイちゃんはいつも元気ね」
「おう! さくらも元気か?」
「そうですね。元気ですよ」
やっぱり葉山さんは可愛い。首をかしげたり、頷くたびにポニーテールが揺れて、ドキッとする。三人で教室に入り、みんなにも挨拶をした。
僕たちは席に着いた後、ユイの席の周りに集まった。
「なあ、晴人はさくらが好きなのか? よく見ているようだが」
「ちょ、ちょっと、ユイ!? 何を言い出すの!?」
僕が慌てると、葉山さんは照れたように微笑んでいった。
クラスの皆が聞き耳を立てているのが分かる。僕は焦った。
「伊口さんはお友達ですよ」
葉山さんが言った。
「……ですよね」
僕はちょっぴり落ち込みながらも、葉山さんの無邪気な笑顔に苦笑した。
「今日は授業は無いのか?」
ユイが僕に尋ねる。
「うん、冬休みの宿題の提出とか持って帰ってた物を片付けたりとかだけだね」
「そうか、つまらないな」
「ユイちゃんは授業好きなの?」
葉山さんが訊ねる。
「ああ、新しいことを覚えるのは楽しいからな!」
ユイはそう言うと、カバンの中から大きなおむすびを一つとりだして食べ始めた。
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