第13話 占い始めました
「せんぱーい、暇ですねー」
「そだなー」
「なんか面白いこと言ってくださーい」
「昔々あるところに……」
「あ、もういいです」
「振っといてひどくねぇかそれ」
流行りは変わりやすいとは聞くが、こんなにもとはな……。
昨日で神代の考えた期間限定パフェは終わりを迎えた。
売り上げも良く、お客さんにも好評だったため、親父も昨日はかなり機嫌がよかった。
が、通常運転に戻るとこの通り。まるで昨日までは夢だったのかと思う。
夢と思えば……、
「先輩……来週の花火……、一緒に行きませんか?」
あれも夢だったな。ほんとちくしょう。ちょっと上がっちまったじゃねぇか。
当の本人は暇すぎて、横でショートムービーの振り付けの練習をしている。家でやれ。
「そういえば先輩、暇って十回言ってみてください」
「暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇」
「そうですよね~」
「なぜ十回言わせたんだよ……」
ほんまなめとんのか。それにしても暇だ。やることも終わってるし……。
……あ、そういえば
「神代、確か占いが趣味って言ってたよな?」
「ん~そうですね。ふふふ~先輩、私の占いは凄いですよ! そこそこ
「そこそこ多いな……。今とか占えるの?」
「占えますよ。自家製タロットもありますし」
「え……それって自分で作るもんなの!?」
ふむ……まぁ、カフェで占いとか流行るかもしれんしな。
いや、気になってとかじゃないぞ? 俺はビジネスの観点から考えているだけであって……。
「ちょっとやってもらってもいいか?」
「了解です!」
そして、神代の占いの館が始まった。
決してさぼりではない。これも仕事だ。
***
「それではあなたの運勢を占いましょう……」
「いや、どっから持ってきたんだそのローブ……」
いつの間にか黒のローブを身にまとい、声も雰囲気作りのためかいつもより少し低い。……がちだこの人。
「取りあえず手始めに明日の運勢でも占ってもらおうかな」
「では、カードをお取りください……。あ、やっぱこのキャラ喉疲れるんで止めていいですか?」
「意思弱」
全然がちじゃなかった。
ツッコミながらもカードが伏せられる。
「それではいきましょう」
パラリとカードを捲る。
すると気難しそうな賢者のカードが姿を現した。
お、中々良いカード引いたんじゃないのか。賢そうだ。
「これは……先輩、明日怪我しますね」
「なんで!!!???」
「そーいう占いが出ました」
「いやいやいやいや!!??? 嘘つくなよ! めちゃくちゃ良さそうなカードじゃん!」
「これはローブで隠れていて見えませんが、度重なる戦争で怪我を我慢している賢者のカードです。プライドが高いので仲間に頼れないでいます。先輩みたいですね」
「うっせぇわ。……でも、それならどんな怪我を俺はしてしまうんだ……?」
「タンスに小指を打ったりとかじゃないですかね? 知らんけど」
「そこは適当だなおい……」
最初から期待はしてなかったが、インチキだろ、こいつの占い。
「もういいわ。次……じゃあ、金運とか占ってくれよ」
「では、同じく一枚どうぞ」
再びカードを捲る。
王様のタロットだ。これは良い効果だろ。
「全財産なくしますね」
「だから何で!!??」
「後の皇位継承で権力が息子ではなく弟の方へと移り、こちらの家系は乗っ取られます。そして財産がパーになるというストーリーが……」
「無駄に設定が凝ってんなぁ……」
「どんなもんです!」
「いや、褒めてないよ!?」
えっへんと胸を張る神代にやれやれとため息を吐く。
「じゃあ、あと健康運」
「では、一枚」
カードを捲る。
太陽のカードだ。
「これは、文句のつけようが……」
「風邪ひきます」
「だからどうしてだよ!!!!!!!!!!!!」
「右下の女性を見てください。これはさっきの賢者が唯一心を許した人……彼女にとって彼は太陽の存在でした……。しかし、先ほどの戦争で行方が不明に……後に太陽を失った彼女は気を病んでしまい……」
「長い長い長い!!! 長いわ!!! 長いし、あと無駄に設定がこまけえんだよ!! ボードゲームかこれ!! ボードゲームなのか!? それに全部悪い効果ばっかじゃねぇか!」
神代が続けようとするのに思わずツッコミを入れてしまう。
ろくな占いねえじゃねぇか。
「もうここまで来たらやけだが……、恋愛運とかは……?」
が、しかし何も言わない神代。何か考えているようだが……。
「……それは無理です」
「……は?」
「……なんか嫌です」
「え?」
ほっぺをぷくぅとし、そっぽを向く神代。
え、どうしたの急に。自信なくした? ちょっとあまりの結果で自信なくした?
「はい、ここまでです! 占いの館終了です! 仕事しますよ先輩!」
「お、おう……ま、暇つぶしにはなったわ。……でも、インチキ占い師だったけどな」
「あ、言いましたね! 私の占いは当たりますから!」
「そこそこだろ?」
「まぁ、そうですけど……」
「いや~ないない。もし当たったら、弟子入りするレベルだわ」
「もう! どんだけ信じていないんですか!」
お互い笑っていると、お客さんが店へと入ってきた。
業務再開だ。
あ、いやさぼってはいませんよ?
***
ピピピとアラームが鳴るのを止め、体を起こす。
今日は休日だが、だからこそ俺は早く起きて充実させたい派の人間だ。
「腹減った……って痛ああああああ!!!」
寝ぼけていた頭が覚めるように激痛が走る。タンスに小指を打ったらしい。
……嫌な予感がする。
「……まさかな」
***
街に出て、ショッピングも楽しんだし、そろそろ昼飯にするか……。
「ご注文はどうなさいますか?」
「ばりめちゃバーガーセットで」
「お会計六百五十円になります」
……! ない!
「あ、あの……財布忘れたみたいで……すいません」
さっきまであったのに! どこに落とした! いや、盗まれたか!?
「……」
***
「今日は散々な日だった……」
せっかくの休日が台無しだ……。優雅な休日のはずなのに……。
もう寝よう。帰って寝る。
「……ん?」
肌にツンとした感触。数秒もしない内に、さっきまで晴れていたのが嘘のように曇り……。
洪水のようにあふれ出す雨。傘はもちろんない。ずぶ濡れ確定だ。
「……」
……弟子入りしようかなぁ。
☆☆☆
どうも砂月です!
今回は久々の日常回でした!
真鳳の過去編を書いている時はかなりあれこれ考え更新が遅れてしまい、ごめんなさい! 文字数も多くなっちゃた!
そして、ここでいつもお読みいただいている皆様に感謝を。
本当にありがとうございます。
また、よろしければ☆や♡、ブクマなどよろしくお願いします。
ほら……そこをぽちっとするのです……。
ほんとクソモチベ上がります。上がってしまわれます。
では!
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