第6話 新人さん、いらっしゃい

 落ち着いたところで、席に着き向かい合う。


「では面接を始めましょう。どうも、この店で働いている皆川です。今日はよろしくお願いします」


 改めて見てみると、この子中々の美少女だ。

 だが、どこかで見たような気がする……。いや、気のせいだろうか。

 ……ってあんまりジロジロ見たら悪いな。

 いかんいかんと、もらった履歴書に軽く目を通す。


「……えっと、神代真鳳かみしろまおさん……。大戸高校一年生でアルバイトは未経験と……」

「よろしくお願いします!」


 俺と同じ高校……ということは学校でも後輩になるのか。


「特技は絵を書くことで趣味は占い…。へぇ~珍しい趣味だね」

「占いしましょうか!?」


 うわ、目めっちゃキラキラしてる。


「ん~。見たいけど……ちょっと今日は他に聞きたいこともあるし……いいかな」

「任せてください! この日のためにタロット持ってきましたから!」

「あの……話聞いてる?」

「あっ、間違えてノケモンカードを持ってきちゃいました……。……やりますか?」

「いや、しないから……」


 こりゃまた癖が強いのが来たな……。

 証明写真とかも思いっきりピースしちゃってるし。プリクラと勘違いしてんじゃないの? 可愛いからいいけど。


「じゃあ、次はこのアルバイトに申し込んだ理由とか聞いても良いかな?」

「それはですね……。前からアルバイトをするなら、絶対ここのカフェで働きたいと思っていたので……」


 おっと、志望動機は意外としっかりしてるじゃないか。

 てっきり賄いのケーキに釣られたのかと。


「そして、賄いのケーキがめちゃくちゃ美味しそうだったので!!!」


 さっきと同じぐらい目を輝かせる少女。

 絶対こっち本音だわ。十秒前の俺を殴りたい。


「あぁ……そう。そっか。それじゃあ、最後に自己PRとか聞いても良いかな?」

「これまでケーキはたくさん食べてきたので舌には自信あります!」


 ……腕だったら良かったのになぁ。


「あとは……どんな仕事でもしっかりと頑張ろうと思います!」


 きっぱりと言い張る彼女。その真剣な眼差しに嘘は含まれていないように見えた。

 まぁ、色々あったが根は良い子なのだろう。

 実際、癖はある子だがコミュ力は高そうだ。(俺とは違って)

 この子には俺や親父が持っていない『愛嬌』がある。お店的にも欲しい人材だろう。

 

「よし……。そんじゃあ……まぁ……合格。これからよろしくね。神代さん。親父にも俺から言っておくよ」

「え!? 本当ですか!!!! やったぁぁ! よろしくお願いします! !」


***


 ……最初から忙しい奴だったなそういえば。

 しかし、そこまで思い出して、あることに気付き、思わず顎に手をやる。


 ……あれ? あの時俺、下の名前言ったか?

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る