地下室の手記
読んだ本の内容を忘れるなんて事がある。
信じられないのだが、働くようになって読了した作品の半分は忘却へと帰してしまった。それほど数を読んだわけでもないのに(両手の指で足りるくらいじゃないだろうか)、どうにも曖昧。曖昧どころか喪失。読んだという結果しか覚えていない。
で、しばらく小説について書けずにいたのだけれど、最近久し振りに作品を購入し、たった今読み終えたので忘れない内に記そうと思う(現在夜の一時前。眠い)
俺は空想が好きで、昔からよく都合のいいストーリーを組み立てていた。アニメや漫画に自分を登場させて八面六臂の活躍をして一目置かれるみたいなメアリースー。恥ずかしい限りだが、俺は俺の中で空条承太郎であり孫悟空であり浦飯幽助であり流川楓でありドラクエの勇者でありクラウドでありリオンマグナスでありアムロレイだった。俺はやはり自尊心が高く、虫のいい奴だった。いや、今でも虫のいい奴である。恥知らず!
そんな俺が読んで身につまされたというか、一字追う毎にぐえーとダメージを受け死にそうな思いをしたのが、地下室の手記である。
地下室の手記。
地下室に引きこもった元小役人の独りよがりは独白によりストーリーが進む中編小説。論理的だが揺るぎない自尊心により破綻した思想が繰り広げられるものの、ツラツラと読み進めてしまう。
著者であるドストエフスキーの作品を紐解くのに需要な一冊であるとされているらしい。
これはね。もうアカン。ダメージがエグい。死ぬ。
本作は二部構成になっていて、一部はいいのよ。よくないんだけど、周りくどく身勝手で分かりにくい主張が飛び飛びで展開されていくだけ。小さなドグラマグラみたいな印象。まぁ読めるかなって感じ。これがずっと続くのかな〜なんて思ってた。甘かった。問題は二部。
二部は主人公のエピソードトークが始まる。
これがキツい。読んでて吐きそうになる。分かるー!ってなって、分かるが故にヤバい。共感性羞恥?よく分かんないけどそんな感じ。端的に説明すると、「俺を見ろ!」の一言に尽きる。自意識、嫉妬、羨望、嫌悪、承認欲求、自己顕示欲、あらゆるイキリパワーが発揮された行動に過去の自分の行いがフラッシュバックしてきて本当に本を叩きつけたい感情に駆られた。それで結果として地下に潜るってのがもう共感しかない。穴があったら入りたい。地でいくその姿勢にただただ憧れる。俺も誰もいないところに行きたいもん。世界は糞。
でもこの作品、読んでると不思議と肩の荷が降りるんだよね。なんか、「あ、視野狭くなってたわ」って感じにさせてくれる。久々の読書が要因かもしれんけど。
ともかく、地下室の手記。悶えたい方にはおすすめです。
ちなみにこの作品は、カラメルカラムが提供しているスマートフォン向けゲーム。
ALTER EGOにて紹介されている。
当該ゲームは読書を通してエスという女性の人格に触れていく作品になっている。こちらも未プレイで興味がある人は是非。
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