斜陽

これは夏に着る着物であろう。夏まで生きていようと思った。


太宰治、斜陽の一節である。

随分消極的な生きる理由だが、本来、生き死になんてのはそこまで大きな問題じゃないのかもしれない。気に入らないが、死は生の延長線上にあるなんて言葉に納得してしまう時もある。


人生というのはまったく困難だ。産まれたくもないのに無理やり腹から出され、四苦八苦の中息も絶え絶えの毎日を死ぬまで過ごさなければならないんだから。おまけに世間一般で死は禁忌とされているものだから楽に死ぬ事すら許されない。例え治る見込みのない重病、重症人においてもチューブに繋がれスパゲティ症候群に苛まれながら生かされ続けるのだ。難儀な世の中だよ。


それでも人は生きなければならない。生きる上では、人の助けなどあてにしてはならない。

どうあっても人生は自分だけのものなのだ。差し伸べられた手を握るのは構わないが、ハナから誰かに頼ろうなんていう虫のいい事は考えず、どうやって生きるか、或いは死ぬかを考えていかねばならないと思う(人に助けられっぱなしの俺が偉そうに何を書いているんだと自己嫌悪している。世の中の優しい人々ありがとうございます)。斜陽は、まさしくそんな事が書かれているように思う。



斜陽。

没落貴族となったかず子とその母親は家を引き払って別荘で暮らすようになる。

かず子は不満であったが、敬愛する母と一緒ならばどこでも生きていけると考えており、母が死ねば自身も命を絶つと公言していた。

その内に弟の直治が戦争から帰国したのだが東京で荒んだ生活を送るようになり、かず子の心を乱す要因となった。しかし、弟を介して上原という男と出会い、かず子は恋に落ちる。

母親が体調を崩す事が多くなり、不安と苦しみの中、かず子は上原に恋文を送るも返事はなく、不安が募り、憧れが膨張していく。そしてある日、母親の様態が急変し……




こうやって見ると簡単なんだけど、各登場人物の詳細を書くとそれだけでゲンナリしちゃうんだよね。まずかず子はバツイチで精神不安定。時代的なものもあるから仕方ないけど、働き方もしらず不用意で、火事とか起こしちゃうくらいの不用心。母親は天真爛漫で楽観的に振る舞うけどかず子と直治が心配で堪らない上に病気になる。直治は麻薬中毒者で金を溶かすような遊びをする放蕩者、あるいは不良。上原は妻子持ちだけどかず子に唾つけて最終的に飲んだくれてボロボロのなっている。


ご覧の通り四者四様の地獄絵図。誰もが救いを求めながらも誰も救ってくれないという無常感。なんとも業の深い事だ。目も当てられない。

でも、こんな話だけど文体はめっちゃ綺麗。お前らもうちょっとなんとかしろよ思うより先に「なんと健気な!」って気持ちが訪れるし、直治の手前勝手な理論にも唸ってしまったりする。なんだか登場人物の感情がそのまま伝わってくるような感じがして、胸が痛く、物語の中なのに他人事じゃない感が迫ってきて心臓が握られるような気持が湧き上がってやばい。文学ってこういうものなんだなぁと思わずにはいられない。そりゃ売れるよ。凄い。


同作は斜陽の主人公かず子は当初人に頼りっぱなしで、当人もそれを自覚もしていたけど、最終的に母や弟、そして恋人のような関係である上原との間に起こる事象によって強く生きる決意を固めて物語は締めとなるんだけど、最後のかず子は無頼となる気まんまんで、デカダンス的な思想のを伴う気高さを見せるんだ。この最後がね、いいんですよ。特に上原に送った手紙の最後ね。MCにこんな意味が出てきますかと笑わずにはいられなかった。俺はこういう女の強さに弱い。あんな気概、俺には持てないだろうなぁ……

最初に書いた一文と矛盾するけど、きっとこれから先も、俺は人に助けられながら生きていくんだろう。情けないというか、頼りないというか。せめて平均年収分くらい稼げればいいんだけどね。いやぁ難しい難しい。



自分一人で生きていける人って凄いよね。そのメンタルもバイタリティ、俺のために使ってくれるっている人いませんか? 月二十万でいいです。断腸の思いで我慢します。でもできたら六十ください。酒代、飲代に使います。お問い合わせはTwitterまで。

それでは、待ってます。


MC(マネー・カモン)

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