潮騒

困った事に作家別に書くようなネタがなくなってしまった。

計二十作。この程度打ち止めとはなんと読書力の低い事か。これで評論じみた駄文を書いているんだから天井知らずの恥知らずだよ俺は。クソウケる。


でも本って読まなくなるとどんどん存在が遠くなるよね。映画とかもそうなんだけど、能動的かつ時間がかかるから重い腰が上がらない。新しい作家を試してみようとしてもつい知ってる作者の作品や、なんなら読んだ事のある小説を広げちゃったりする。何度も何度もドラクエ3やFF7をプレイするのと同じだ。



そんな安心感があるのが三島由紀夫の潮騒である。


潮騒。

主人公の新治が、突如現れた初江に一目惚れし、なんやかんやあって互いに意識していくというストーリー。



この作品、一部では三島らしくないと言われているらしい。

確かにドロドロとした印象はあまりなく取っつきやすい。王道な筋道に若き男女の恋心。二人の恋路を阻む嫌な奴や気のいいおばさん達。なんというか、青春! 恋愛! 甘酸っぱい! って感じがする。文章も綺麗だし展開も上手い事目が離せないように進んでいくから苦がなく、純文学の入門にも奨められる作品だと思う。


でも、三島を知ると、「あぁ……」と察してしまう事も多分あるように思う。

俺も昔一回目を通しただけだからあまり詳しくはないし見当違いなのかもしれないけど(というかほとんどそんな感じでこれまで書いてきたんだけども)、潮騒には三島の肉体への羨望や、美しい恋愛に対するコンプレックスが反映されているような感じがする。


作中、つぶさに表現される女の肉感。艶めか強い身体の描写。赤面してしまうような恋模様。

どれも迸る、熱い生命の象徴である。ひたすらに死を夢見て、歪んだ性趣向を露わにしている仮面の告白とはまるで対になっているようだ。

ただ、お門違いだったら大変恥ずかしく申し訳ないんだが、いずれも三島の持つ精神が文字となって紡がれた作品のような気がしてならない。生と死の両極に位置する両作品。その挟間で考える作者。心がどう動くかは、本人次第。なんとも覚束ず、心許ない。裏があるから表もあるみたいな、そんなベタで月並みな、アホな哲学めいた説法もどきな言葉が俺の足りない頭に浮かぶ。


潮騒について、三島がどのような想いで書いていたかは知る由もない。調べれば出るだろうけど今日は眠いのでやめておく。でも俺の中でこの作品は、三島の生に対する羨望が描かれたものように思う。いいよね男女の恋愛。ときめきたいね。


あ、ちなみに三島由紀夫、結婚して子供もいたんだって。最近知ったよ。悉く無知だな俺は。

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