こゝろ
明治天皇の崩御とこゝろの関連性について君の意見を聞きたいんだけど。
紳士のお国エゲレスでは、ジャパニーズに向かってそんないけすかない質問をしてくる輩がいるらしい。
正直「知らんがな」と切って捨てたいところだが、馬鹿正直に「うるせーバカ」なんて言おうものなら「やれやれ。どうやら僕は猿に話しかけてしまったようだ。どれ、バナナを買ってあげよう」などとまったく素敵なブリティッシュジョークが飛んでくる事間違いなしという話だ。聖書とシェークスピアの事しか話題のない国の人たちはどうも他国の文化について興味深々なようである。
その夏目漱石のこゝろは三部構成となっているが、基本は”私”と”先生”の話と、”先生”の過去について書かれた話となっている。
大まかな流れとして、海水浴に来ていた私が先生と出会い色々と話すようになる。私は先生の過去について詮索し続け、とうとう「その時がきたら話す」との言質を取り帰省するのだった。
その後、私はなんやかんやあって先生から手紙をもらい、汽車の中でそれを読むのが後半部分となっている。教科書に掲載されている部分はこの手紙を読むところだ。
ブリティッシュのお友達はともかくとして、小説を語るうえでこゝろが外せないのは確かである。歴史的背景や息詰まってしまう空気感の中で綴られる出会いと別れ。そして過去。どこを切り取っても名文に違いなく、読むたびに教養がインプット、アップデートされていく。
教科書掲載分である後半ではKとのやり取りや先生の独白が見事という他なく、学習の中で強烈な印象を受けは人間は数多くいるだろう。魔法棒によって固まってしまったとか覚悟ならない事もないとか、場面場面で高い効果を発揮する文章を的確にぶち込んでくるのだからそら記憶にも残る。
俺はこの作品を読むまで、漱石の事が好きじゃなかった。
ベタだし、なんかカッチリしていて退屈な作家みたいな印象があったからだ。
でも実際漱石って結構面白い人間らしくて笑えるエピソードも結構あるらしいんだよね。病院で腹温める用に出されたこんにゃく食べるとか。
そんなお茶目な人間から文学における最終兵器的な作品が出てくるとかマジでやめてほしい。俺は太宰とか三島が好きなんだけど、多分数値化したら二人とも漱石というか、こゝろと戦える作品はないように思える。殊、腹の中にある暗澹とした感情や気持ちの表現は筆舌に尽くし難い感性が光っていて真似したくてもできない領域。比べるのも烏滸がましいが、俺は当然勝てない。そもそも文章力が足元にも及ばないのに、センスの面でもボロ負けじゃ話にならないだろう。読めば読む程希望が潰えていく。しかも面白いから一度読みだすと止まらないんだわ。勘弁してくれ。
ちなみに『坊ちゃん』だったら大丈夫だろうと思っていたがこれも無理だった。コメディとして完成度が高いし学と共用も遺憾なく発揮されてる。解決してるようでなにも好転していないラストも日本文学的で大変素敵だ。同作についてもいつか別の日に書きたい。
まぁしかし色々書いたけど、やっぱり日本の小説はこゝろだよなぁと思うよ。浅い読書経験しかないからまるで見当違いかもしれないえけど。
そうなると、各国の代表作品を一つ決めるとすると何が挙がるだろうね。これこそ! って思うものがあったら教えていただけると嬉しい。読書の参考にする。読む時間があるかどうかは知らないけれど……
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