老人と海

この世は素晴らしい、戦う価値がある

映画『セブン』で知ったこの言葉はヘミングウェイが残したものだ。


ヘミングウェイは子供の時分にボクシングや釣りを習ったりして過ごしたそうで、後に赤十字の一員として第一次世界大戦へと赴き重傷を負ったそうだ。

その後、記者として働いきつつ小説を書き始めたという。


そんなヘミングウェイの大ヒット作が老人と海である。


舞台はキューバ。漁師の老人、サンチャゴと巨大カジキの死闘を描いた作品。

物語の中では人間の生命力が遺憾なく表現されている。


作中、サンチャゴは若かりし日の記憶を辿っては勇気を得たり知恵を得たりする。多くの経験と出会いがサンチャゴの力となり、読者は「人生経験豊富なのっていいな!」 みたいな感情が湧きあがる事うけあい。プロレスを見た次の日にブレーンバスターとかコブラツイストを試してみたくなるような気持と似たエネルギーがなだれ込んでくる。



俺はこの作品を読むまでアメリカ文学にろくに触れた事がなかった。キングとかスタインベックとか挑戦してみたけどいずれも読破できず、辛うじて栞を外せたのグレート・ギャッツビーくらいなものであった。

そんなわけで、はてさてどんなものかと思い表紙を開いてみると、素晴らしいエンターテインメントの世界がそこにはあった。

まるで映画の脚本を読んでいるかのような広大で、いい意味で大味なストーリー。読みやすく入ってきやすい文章。そしてロマン。生き様。美学。「男の子ってこういうの好きなんでしょ?」と言われたら間違いなくYESと答えるTHE男ワールド。活字という名のスペクタクルが脳に流入し、塊となって所狭しと暴れまわるのである。


あと、詳細は省くけど最後もいいんですよこれが。死闘の果てに待ち受ける結果がこれか。というような哀愁を誘う結末。けれど、サンチャゴはそれでいいと、いや、そんなものだろうと風に達観しているというか、受け入れるんですよ。いやぁこれがグッとくる。男ってこういうもんだねと思わず胸が熱くなるよ。正反対の生き方している俺にとってみればまさに憧れる姿勢で、多分ヘミングウェイの価値観が現れているんだと思う(そんなヘミングウェイも晩年は自殺しちゃうんだけどね……)。



そんな素晴らしい作品を書いたヘミングウェイなんだけど、彼は一貫してシンプルな文体で作品を書いていたそうだ。時に難解な作品を書き上げた作家に向かって「難しい文章書けばいいと思ってる?」と煽ったりしたんだって。

そういう人柄に惹かれるのと同時に、ヘミングウェイはあまり言葉を知らない俺にとって希望を与えてくれる。小説は難しくなくてもいいんだと、書くときに勇気が湧いてくるんだ。


俺の小説は矮小でひねくれたものが多いけど、いつか、ヘミングウェイのような雄々しい作品も書けたらなと思う。まぁその前に、真っ当なものを創るところから始めないといけないんけどね……


いつの日か、書いた作品が本になったらいいなぁ……

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