魔王

おっぱっぴーという古い言葉がある。

とあるお笑い芸人がネタのセンテンスを締める際に使う言葉なのだが、どうやら卑猥な意味らしく地上波では放送コードに引っかかるため、無理やり誤魔化しオーシャンパシフィックピースと偽っていたそうだ。


しかし、どちらにしても初めて聞けば意味不明な単語であり、「え? なんて?」と頭を捻るに違いない。音だけで強烈な語感を持つワード。おっぱっぴー。中々どうして侮れない言霊がある。


さて、ここで皆さん考えていただきたい。ビジネスの最中や授業中。誰かが突然「おっぱっぴー」と叫んだらどう思うか。俺ならそいつに病院をすすめる。良識のある人間なら誰でもそうすると思う。意味はどうあれ突然のおっぱっぴーは社会的にまずいのである。

気に入らない奴にそんな言葉を言わせられたら。二十四時間三百六十五日。発生の権限の自分が握っていたとすれば、それは強力な武器になるし、また、身を滅ぼしかねない恐ろしい呪いにもなるだろう。魔王とは、つまりそういう話である。



ある日他人に任意の言葉を言わせる事ができるようになった主人公の安藤は、能力を試す内に命を狙われ、日本が魔王に支配されつつあるのではないかと思うようになる。


要約するともの凄く突飛だが、こんな話なのだから仕方がない。説明不足は認める。


この主人公、能力を使って色々やるんだけど、個人的にはとある人物に巨乳の女子高生が好き(うろ覚え)みたいな事言わせるシーンが馬鹿馬鹿しくて面白かった。女子高生と巨乳も結構な力を持つワードだよね。これも突然言ったら多分社会的に死ぬので公の場で用いる時は注意していただきたい。どうでもいいんだけど。


この作品、ラストがちょっと消化不良気味な話なので人を選ぶんだよね。なんというか、社会問題を一歩引いた目で見ているような、傍観者であるはずだった人間が力に目覚めて厄介な事が起こるんだけど、そこにカタルシスはなく、延々とモヤモヤが続く。みたいな内容。

作中の主人公は色々行動を起こすんだけどそれは能力を得たからで、元々は世界を救うとか正そうみたいな思想は持っていない。ただ世の中にある理不尽や不条理を悲しむだけの一般人に過ぎず、だからこそ力を活用できず何も成し得ず、結果としてあぁなってしまったのかもしれないなと、これを書きながら思った。つまるところ、「下手こいた」だ。人間、身の丈にあった生き方が一番だよね。無力な俺は明日も出勤して、安い金でその日暮らしができる事に満足しよう。


 転職して-な……



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