支離滅裂だけど理路整然。そんな日常、アリですか?

第1話

 例えば、ガードレールの擦り傷。

 例えば、足元の折れた草花。


 そんな現象を起こしたのは一体誰なのか!?何故そんなことになったのか?

 なんて(当事者には悪いけど)些細なコトをイチイチ気にして夜眠れない人っていないハズ。…なんだけど、どうやら「そんな」想定外の考えを持つ人がいるらしい。しかも、今、僕の目の前に。


弓弦がそんなことを考えながら、半ば呆然としているうちに、そんな人=ヒカリはスカートが翻ることも、枯葉が服に付くことも。誰かが綺麗に結えたであろう髪が乱れることも厭わずに、あろうことか歩道の街路樹に意気揚々と登りはじめた。


「え、ちょ…。ヒカリ危ないよ!降りてきて」

しばしその奇行を見送った後、我に帰った弓弦は、慌てて街路樹に背を向け、誰かに下から覗き込まれないように慎重に立ち位置を選びつつ、背後のヒカリにすぐに降りるよう促すが、反応は、なし。


 うわー、もう!なんなのこの子!大声を出して注目集めるわけにもいかないし、どーするんだよコレ!

大通り沿いの、自転車も通る広い歩道で、ガサゴソと街路樹を登る女子高生と、その前で辺りを伺いボソボソと何かを呟いている制服男子。どう見ても、怪しい。オマケに通常の会社員なら帰宅の途に着く午後7時!人通りはピークといってもおかしくない。唯一の救いは、近くにならないと顔が判別できないことだろうか。

 秋めく季節の逢魔時にこれほど感謝したことがあるだろうか?いやない!

などど自問自答し、歩道を歩く人のまるで不審者を見るような視線に耐えながら弓弦は天を仰いだ。

 はやく!はやく降りてきてくれー!!!


「ママー、あのお兄ちゃんたち何してるの?」

「しっ!指差してはいけません」

なんてありがちな親子の会話も聞こえて来る…気がする。

 幻聴であって欲しいよ…心から


「あったー!」

祈りが届いたのか、はたまた心配していたことが現実になったと言うべきか。突然、歓喜の声が聞こえたかと思うと、バキバキという生木が裂けるかの様な破壊音と共にヒカリが滑落し…。声に振り返った弓弦の上に、見事に着地を決めた。


「見つけたよー!コレ!ホラ弓弦見てみて!」

「ぐっ…」

 あ、脚をバタバタさせるんじゃあない…!

「あれ?弓弦…なんで下にいんの?」

 人の上に乗ったままツンツンしないで…っ

「いっ…いいから、はやく…どいて…」


途切れ途切れながらも、必死の思いをなんとかヒカリに伝え、漸くその体重から解放される。

 マジで息止まるかと思った…。

本人の名誉のために付け加えるが、決してヒカリはふくよかな方ではない。単に、弓弦があまり背が高い方でも、鍛えられている方でもないだけの話である。そんな弓弦が開放感を味わうように2〜3回深呼吸し、制服の汚れをはたき落としながら、さっきから何かをじっと見つめているヒカリに目を遣ると、その手の中に鈍く光るモノが見えた。


「ヒカリ、それ…?」

「あ!そうそう!コレが犯人よ」

 なんのっ?

一体なんのことなのか。全く心当たりのない話を振られた弓弦の疑問を他所に、得意気に顎をクイッと上げて、ヒカリはその手の中にある〝犯人〟について滔々と語り始めるのだった。

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支離滅裂だけど理路整然。そんな日常、アリですか? @Rey_m

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