後輩と出会った日

今でも簡単に思い出せる、美海碧みうみあおいと初めてあった日のことを。


まだ桜が綺麗に待っている時期うちの学校に新1年生が入学してきた。入学式を終えて俺たち在校生の始業式も終わり、1週間が過ぎたある朝。新しい担任や新しいクラスにも少し慣れた頃に俺の下駄箱に1枚の紙が入っていた。『放課後、タイミングを見計らって1ー3に来てください。』と、書かれている。タイミングを見計らってってなんか適当だな……表にも裏にも名前は書いてないと。


……なんか昔の事思い出して嫌になる。でもあの時とは違う。


「あれ、しゅうそれ何持ってんの?」


「ちょっとこれ見てくれ、そして感想をくれ」


手に持ってた手紙を渡す。新しいクラスになってから気軽に話せる相手なんて限られてる。容姿良し、勉学上位、そしてサッカー部の副部長でもある2次元から飛び出してきたのか!とツッコミがしたくなる男で俺と保育園からの仲の舞子伊吹まいこいぶきである。


「ふ〜ん……これってやっぱラブレター的なあれなんじゃない?字も女の子っぽいし」


「なるほど……じゃあ行くの辞めよう。告白なんてろくなもんじゃない。伊吹も忘れたわけじゃないだろ?」


「忘れてるわけじゃないけど」


あんな事忘れるわけが無い。俺は中学の時に女子に虐められた。手紙で呼び出されて嘘の告白をされた。俺はただただ嬉しくて告白の返事をした。もちろんYesの方だ。するとぞろぞろと他の女子たちが出てきて俺の事を笑ってきた。なんであの時俺はあんな事されたのかわかんなかったし今当時のことを思い出しても心当たりがない。……あの時のことを思い出すだけで頭が痛くなってくる。


中学校生活も最後の方だったから不登校とかにはならずに済んだけどもう会いたくなかったから家を出て伊吹と同じこの進学校を受験した。


そんな事があったから今でも俺は女子とは距離を置いている。だから俺に告白なんてするやつはいないはず!


「ただ萩のことが好きなだけなんじゃない?」


「な訳あるかよ」


「そうかな、萩って勉強も運動もできる方じゃん、運動に至っては俺よりできるし。顔も普通にかっこいいと思うけどね何より優しいしね」


「なに、俺に気があるのか?」


そんな話を少し笑いながらテンポよくする。どんだけ俺の事褒めるんだよ……なんかすごい恥ずかしいんだけど。


「でも1ー3って言うのが気になるね、差出人さしだしにんはもしかしたら今年入学して来た1年生なんじゃない?」


「1年生だったらもっと告白なんてないだろ」


もしほんとに1年生が差出人だったとしたらまだ俺の事を知って1週間程度。そんな奴に告白しようと思う奴がいるか?否!伊吹みたいな容姿ならともかく俺だし。


「でも行くだけ言ってあげれば?この子ずっと待つことになったら可哀想じゃない?」


「……いや、それはそうだけど」


もし本当にこれがそういうたぐいの呼び出しだったら、俺が来るのをずっと待ち続けるのだろうか?まだ夕方になると少し風邪が冷たくなってくるしそんな中とぼとぼと歩くのを想像すると少し心が傷んできた。やっぱり少しは様子を見に行った方がいいか?

あの時みたいになったら……それはその時考えよう。


* * *


学校の中にチャイムが鳴り響いて、一日の終わりを告げた。やっと一日が終わり、放課後友達とどこかに寄りながら帰ろうとする人、部活に行こーぜと部活仲間を誘う人、さっさと帰ろうする人で別れている。俺も席を立ち上がろうとすると俺の方に1人の男子生徒が近ずいて来る。もちろん伊吹なんだけど


「結局行くことにしたのか?」


「とりあえず様子だけは見てこようかと……人がいなかったらすぐ帰るよ」


多分待ってる人なんていないと思うけど一応ね。俺が行かないでその子が体調でも崩したら嫌だし


「やっぱ萩は優しいね、じゃあ明日詳しく聞かせてね」


「話す事無いかもしれないけどな」


「まぁまぁ絶対いるって!」


「そうだといいけど」


「じゃあ部活行ってくるわ」


「頑張ってな」


じゃっと言って教室から出ていった。

……なんで伊吹は色んな人から告白されてるのになんで誰とも付き合おうとしないんだ?伊吹と付き合いたい女子なんて沢山いるだろうに。いつも俺と話してるし……もしかして好きな人がいるとかか?だとしたら応援するしかないな。あの時伊吹が俺の事助けてくれた変わりに俺も伊吹に見合うやつと絶対にくっつけてやろ


っとそろそろ俺も行かないとだな。1ー3に行くために階段を下がる。窓から外を見ると帰ってるの人やグラウンドで部活の準備をしてる人達で溢れている。


あぁ、なんかもう帰りたくなってきた。選択間違えたか……でもそんなことを考えてももう遅い。


もう1ー3の教室近くまで来てしまってるし、でもここまで来るのに1年生とは1回もあってない。多分みんな帰るか体験入部にでも言っているんだろう。


「……ここか」


少し息を整えて教室の中をちらっと見ると確かに女子生徒が一人立っている。

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