リバースストーリー2−7【些細な二人きりの旅7】
※極力描写を抑えましたが、朝に更新は出来なかった(笑)
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◇些細な二人きりの旅7◇
ここでちょっとした補足を。
【カレントール】をドーム型にして少しの時間、苦情が入った。
現在【カレントール】を仕切っているあの
そいつはあーだこーだ言いながら、この不思議な現象で金を取ろうとしてきた。
観光客は俺たちを含め少数しか居ない。つまり今直ぐの金策にはならないのだ。
それなのに、それはもう見事なまでのゲス顔で金銭要求だよ。
結果を言えば、その男は街の人たちからも毛嫌いされていたようで、夜景のように輝く眠らない町となって喜ぶ住人からすれば邪魔者だ。
だから、その男は追放された……俺たちは見ていただけで何もしてない。
因果応報という言葉がしっくり来たよ。もしかしたら、俺たちが何もしなくても、結果的にあの男は追い出されて、カミュは自由になったのではないかと……ちょっと思っちゃったよな。
「……ふぅ〜〜、これで解決かな」
「うん、【カレントール】はもともと大きい町ではないけど、この球体型の防壁は見どころもあるし、人は来るんじゃないかしら」
そうなればいいな。
塔の村のライバル……は言い過ぎだけど、物珍しいのは本当だ。
それに、魔物除けとかも付けたし、実は結構な金額がかかっている。
だからそれを町の人に説明した時……めっちゃお礼言われた。
それは予想外。文句ならともかく、まさか感謝されるとは。
「さ、さてと。それじゃあ……シャワーでも浴びてこようかなーー」
し、しまった。めちゃくちゃ棒読みに!!
「う、うん。お先にどうぞ……準備、しておくから」
「!!……は、はい!」
なんの!?準備!?心の!?か、身体のか!?
ガチャン、バタン!
「は、はぁ……はぁ……俺の脳内妄想がキモすぎるっ……」
シャワールームの扉を締めてへたり込む。
馬鹿な考えに、おかしくなったのかと思った……いや、おかしいのは否定できないが。
冷静にシャワーを浴びる。
何も無い可能性だってあるし、もしかしたらの可能性も。
だから入念に洗っておこう、そうしよう。
そして十数分、俺が戻ると。
「あ、ミオ。はい、準備できたよ?」
「あーうん」
そうとも。知ってた知ってた。
そうだよな、そんなに上手くいくわけ無い。
準備……食事だよな、分かってたさ。うぅ……
二人で対面に座り、商店で買ってきた名産の【アルバ肉】(鹿肉)を食す。
味しないよ?もう喉すぐ渇くし、ミーティアから視線が外せない。
もう何も無いと分かっていても、やっぱり男の馬鹿な心というか、期待していた自分がアホみたいに感じてさ。
「ふぅー、ふふっ。美味しかったわね」
「うん。美味かった」
笑顔でそう言ってくれるが、内心は複雑だ。
苦節十六年、前世から数えたら四十六年だってさ、アホらしい。
「それじゃあ、私も……シャワー浴びてくるわね。先に寝ててもいいから」
「分かった、ゆっくりな」
シャワールームに向かうミーティアの背を確認して、俺はベッドに横たわる。
腹が膨れて考えもまとまらないし……寝ちまうか。
それにしても、小旅行といいつつ三日間は忙しかったな。
【カレントール】を見れたのはデカかったし、カミュという有能な人材とも出会えた。仲間になるとは、まだ分からないけど。
「……ふぁぁ〜〜ぁ」
あーあ、本当に眠くなってきた。
ウトウトと、ミーティアが浴びるシャワーの水音だけが薄っすらと聞こえる。
時間もそろそろいい感じ、今日は魔力も結構使用したから、眠れるな……皮肉なことに。
音が止んだ。
扉が開き、湯上がりの湿気が部屋に入ってくる。
「……」
俺は若干のふて寝だ。
もうミーティアも着替えて、後は隣のベッドで就寝。
冒険者学生時代と同じだな……悲しい。
フッ……と明かりが消される。
小さな光だけが残り、マジで寝るんだなぁと実感。
しかし、そんな俺が横になるベッドが、不意に軋んだ。
ギィ……と体重が掛けられて。
「え?」
顔を上げて確認すると、そこには。
「……どう、かしら。その……準備、してきたんだけど」
「え、あ……へ?」
小さな明かりに照らされる女神。
見慣れない妖艶なランジェリーを身に纏い、髪を下ろし、頬を染める。
透けている……何がとは言わないが、透けているんだ!
ゴクリと、分かりやすく喉が鳴った。
「ねぇ、ミオ……私だって、色々と考えてるんだよ?」
「う、うん。ですよね」
寝たままの俺の頬に手を這わせ、ミーティアは艶っぽい表情で接近する。
ああ、いい匂いがする。
光に照らされる青い髪が、乱反射するように
「初めてだし、暗くてもいいよね?」
「あ、うん」
ギシィ……と、ベッドのスプリング。
一人分の場所に、二人分の体重が掛かった重みだ。
「綺麗だ、めちゃくちゃ綺麗だよ、ティア……」
「私、本音を言えば……ずっとこうしたかったの」
ミーティアは俺の胸に倒れる。
胸と胸がくっつき、心臓が爆発しそうだ……あのシャーロット女王と会ったときよりバクバクしている気がするんだが。
ミーティアは俺の手を取り、ふにょんと。
その柔らかすぎる二つの乳房へと導く。
「……んっ」
ブツン――と、そこで理性は敗北した。
「ティアっ!!」
「きゃっ……ミ、ミオ……」
体勢の逆転。
今度はミーティアを下に、俺が覆い被さる。
下着が乱れ、露わになるミーティアの身体。
上も、下も、準備出来ていると。
「……」
キスをする。
優しく
なるべく優しくしないと……カッコ悪い真似はできない。
「――いいよ。仲良し……しよ?」
その言葉を聞いた瞬間。
俺は獣になった。
◇
チュンチュン……鳥の綺麗な鳴き声だ。
しかし、昨夜のミーティアのほうが綺麗な声だった。
「……これが、大人の気分か」
隣にはミーティアがすぅすぅと寝息を立ててる。
気持ちよさそうに、俺の腕を取ってだ。
「ふっ。世界が変わった」
なんと単純な事か。
人を愛すとは素晴らしい。
そう、素晴らしいのだ。
「ん……ぁ、おはよ、ミオ」
「ああ、おはようティア」
髪を撫でると、くすぐったそうに目を細める。
疲れたよなきっと。俺に合わせてくれて、気付けば数時間。
初めてなのに無理させたかもと、心配もしたけど……「我慢しないで、ミオが好きなだけ――私を愛して、何度でもっ」。
そう言われたら、俺はもう爆発。
好きな人と結ばれた。前世では叶わなかった卒業に、十六歳で至ったのだ。
「昨日は、ありがと」
「私も。気持ち……よかったし」
顔を隠しながら、そう言ってくれる。
朝起きて隣りにいてくれて、しかもそんな、男がやる気になる言葉をくれるなんて……もう、俺は絶対にミーティアを悲しませたくない。
例え困難が訪れようとも、決して彼女を離さない。
「くぅ〜〜〜〜!ティアぁぁぁぁぁ!」
「あ!いゃんっ!……も、もう!ミオったら……あんっ」
今日ここに、ミオ・スクルーズが大人になったその日に。
誓う。生涯を賭けて、この子と添い遂げると……
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