リバースストーリー2−6【些細な二人きりの旅6】
◇些細な二人きりの旅6◇
町の人は、誰も関心を持たなかった。
だがむしろ、それはありがたかった。いきなり襲われても困るしな。
「――【
『――【
【
せり上がって行くように、特製の建材……コンクリートに似せて作った物が隆起していく。
「もっと、もっとだ!!」
『【
流石に範囲が範囲だ、魔力消費もそれなりにある。
だけど余裕が持てる。作業の前にミーティアに言われた
「……今日の夜、期待しててね」と。あはははははははははっ!!
『格好のいい事を言っても、下心がまるで隠せていませんが』
「なんとでも言うがいい!!今の俺は、魔王も素手で倒せるのだぁぁぁぁ!!」
所要時間は五分。
真っ暗ですよ【カレントール】。
「よし、次は【
『はいはい』
呆れてんじゃねぇよ!俺の男としてのレベルアップがかかってんの!!
持ってきた大量の【
それを、ノールックで投げまくる。天井めがけて、一心不乱に投げまくる。
数百は持ってきたから時間は掛かると思ったが、ミーティアの事を考えていたらいつの間にか終わってた。
「ぜはぁ、ぜはぁ……やったったぞ、後は魔力を注ぐだけだ」
『……普通にダサいです、性欲の塊め』
仕方ないだろう。
こちとら異世界生活十六年、もうすぐ十七歳だぞ。
前世では三十年女っ気なしの魔法使い。自分から避けていたとは言え、俺も男。
今世は絶対に……魔法使いにはならないと決意している。
あ、そういえば、初めて目撃した家族以外のおっぱいはミーティアだった。
『――キモイわよ』
「ぐっ!しゃあなしだ!男の子だもの!!」
そして、一つ一つの石に魔力を込めて回る。
端から、徐々に光を放ち始める石……【カレントール】は、眠らない町へと変わったんだ。勿論、酸素問題とかも織り込み済みだ。
そうこうしているうちに……作業も大詰め。
「――おわっ……たぁぁぁぁぁぁ!」
下心の勝利。ダッセ……けどまぁいい。
スケベ心が世界を救う物語だってあるんだ、少しくらい異世界を楽しんだって良いじゃない。
地上に降りると、流石に町の人たちも外に出て周囲を見渡していた。
文句……出るだろうか。
『多少は出るでしょう。全てを納得させるのは不可能ですので、そういった百の一は無視で構いません』
結構言うなお前。
そういう意見も大事だって言う人だっているぞ?
『そういった一の意見を取り入れれば、残りの九十九が反発します。ならば始めから、一は無視です。ただし、その一が正しい場合を除きますが』
「……だな。難しいよ、実際」
「――ミオ!」
「……ミオさん」
はっ!!ミミ、ミーティア……
「よっ、終わったよ。これで簡単に襲われはしないし灯りも設置した、空気も取り入れられるし、物珍しさで観光客も来ると思うぞ?」
「本当に……凄い、まるで星空だわ」
ドーム天井を見上げてミーティアが感嘆の声を漏らす。
建物の中にいるのに、って意味合いだろうな。
「……あの、ミオさん」
「どしたカミュ、何かあったか?」
感情の読み取れない複雑そうな顔をして、カミュは俺に視線を向ける。
まさか余計な事をしたかな?でも、これでこの子は自由になれる。
「……いえ、その……ありがとう、ございます」
深々と頭を下げる。
そして数秒、戻った表情は……笑顔だった。
「いいさ。俺たちが勝手にしたことだし、もし【カレントール】の誰かが咎めるようなことを言ってきたら、とっちめてやる。カミュをこの場所に縛る理由なんて、無いんだからな。なぁティア」
「うん!勿論よ」
これで防衛だけならいっちょ前になった。
【カレントール】の住人たちは、【ギルド】が運営を放棄していることも知っているはず。カミュが戦闘をしてきてくれたありがたさを知ると同時に、自分たちでも何かをやらないといけないことを知ってくれればいいんだが。
「よしっ。それじゃあ宿に戻るかっ」
「そ、そうね……うん。そうよね?」
何故に疑問形?
それとも、やっぱり嫌なのかな……と、暗い気持ちになりそうになる。
「……ミオさんミーティアさん、私は……一度故郷に帰ります。しばらく帰っていないので、見てみたくて」
「あ、ああ。いいんじゃないか?」
「そうね!」
つまり、二人きりに戻る訳だ。
これはやはりチャンス。男を上げる、一世一代の。
「……本当に感謝しています。このままだったら私は……この場所で骨を埋める可能性もありました。夢も、諦めなければと思っていたので……なので、必ずミオさんとミーティアさんのもとに馳せ参じます」
「お!?」
「……ええ、待ってるわ」
カミュはそう言うと、笑顔で【ギルド】に戻って行った。
荷物をまとめて、北東の小さな町【ポルキアノ】へ帰るそうだ。
その後は、まぁ期待はしないでおこう……カミュの自由だからな。
だけど願うなら、この将来有能な人材は仲間にしたいところだ。
「さて、それじゃあ……」
「うん。宿に戻りましょうか」
そっと手を繋ぎ、俺たちは町の様子を見ながら、束の間の休息を取った。
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