11−105【新世界で8】



◇新世界で8◇


 かつての皇族の子孫……それがクロスヴァーデン家。

 どこの国のどこの皇族かは知らないが、ミーティアの珍しい青い髪は、その証明だとライグザール大臣は言う。


「いやしかし、君には感謝だよミオ・スクルーズ」


「なにがだっ!」


 両手を広げ、アリベルディ・ライグザールは口端をぐにゃりと曲げて笑う。

 俺に感謝だって?一体どれに!?紫月しづきを別世界へ送った事か!?


「この【王都カルセダ】には、くさびがあってな。この世界に様々な種族を招いた王の側近が、この地に封印を施したのだよ」


「封印?」


 俺はシャロを見るが、フルフルと横に首を振るう。

 初耳、まったく知らないと、そんな顔だ。


「ははは、その小娘は勿論……数百年前の歴代の王たちも知らないだろうさ。愚かにもな。そしてその封印は……ある種族を封じた空間だ」


 もうシャロを陛下と呼ぶこともしないか……


「空間――まさかっ!」


 ハッ――とする。

 壊れたのは、なにも城だけじゃない。

 地下もだし、この周辺そのものもだ。

 その封印が、俺と紫月しづきの【破壊はかい】と【滅壊めっかい】によって壊されていたら。


「その通りだ!!君とあの女王のおかげで……四千年の封印が解呪された!」


 目を見開き、大口を開けて。

 拳銃をしまった逆の懐から、何かを取り出す。


 それは、宝珠オーブ

 白い……【オリジン・オーブ】だ。


「――【オリジン・オーブ】だと!?」


「そう!黒と対極、しかし一対で生まれたもう一つの原初オリジン!封印のきっかけを作りし天使の――再誕!!」


 天使の再誕。

 それは、この世界に天使が存在していたという確証を持つ人物だけが口に出来る。

 【女神ウィンスタリア】が元・天使だが、存在自体がまれなんだ、信じる者の方が少ない。


 ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴ……


「じ、地震……?」


 だがその振動は、地面からではない。

 肌がチリリとする。これは魔力の反応だ。そしてその反応は、周辺周囲全て。


「封印は、空間自体……見えない結界なようなものか!」


「さぁ……蘇るのだ!!かつて召喚王・・・が招き、【雪落の天使】が封じた種族!!――精霊よぉぉぉぉぉぉ!!」


「……精霊、だと」


 思い出す。

 エルフの里【フェンディルフォート】で、【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】から見えた映像を。【精霊エルミナ】の言葉を。


『――私は風樹の精霊……エルミナ。私の“石”、【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】を使用した誰か……私の姿が見えていますか?見えているのなら、正しい使い方をして欲しい……――この“石”は、私の大切な人からの贈り物……人知を超えた力を持つ、神秘の“石”です。使い方によっては一騎当千の力を授け、間違えれば……その身を悪に堕とす事でしょう。私の友も、“石”の力に魅入られ……悪に身を堕としました。そうならない為に、最後に残った私は……世界中に“石”を封じたのです。その時・・・が来るまで、私たち精霊は眠りに就いています……私たち精霊が起きなくてもいい時代が続く事を願い、この“石”に残します……彼の力が、どうか良き心の持ち主に渡りますように――』


 その時・・・

 まさか、今がそうだっていうのか。

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