11−93【無限永劫1】



無限永劫インフィニット・エタニティ1◇


 もしもこの状況を間近に見ている人物がいたとしたら、ただの力のぶつかり合いだと言っただろう。

 ミオ・スクルーズとシャーロット・エレノアール・リードンセルク……武邑たけむらみお仙道せんどう紫月しづき


 前世からの因縁を持つ二人の邂逅かいこうは、出会い頭の衝突事故のように、お互いの持てる魔力(神力)で激突した。

 結果は……ミオ・スクルーズの負け。


 原初の女神であったオウロヴェリアであるシャーロット・エレノアール・リードンセルクの神力は異常値だった。

 【主神レネスグリエイト】が最初に創り出し、そして一度も降臨することなく蓄えられていた力は、他の女神の数倍。

 これは、神格を得た能力を有するミオ・スクルーズでも追いつけない数値だったのだ。


 しかしミオ・スクルーズは、持てる能力を統合すると言う方法で賭けに出る。

 自分の最初の能力――【無限むげん】に、似た用途の能力を組み合わせていくことで、力を増幅させようと考えたのだ。

 【反転はんてん】や【哀傷あいしょう】、【零無れいぶ】などは用途が違うため統合は見送ったが、【極光きょっこう】や【煉華れんげ】といった能力は一つになれる。


 その中間能力というべき能力が――【無限永劫インフィニット・エタニティ】。


「……消し飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!」


 たった一つの能力と、幾つもの能力を一つにした力。

 二つの力のぶつかり合いは、バトルフィールドとなったリードンセルク城を崩壊させていく。

 足場に壁面、天井に装飾。人がいれば、その者も巻き添えで命を失っただろう。


「いける!このまま……うおっ!?」


 ガクン……と、ミオが沈んだ。

 足場が消えたのだ。

 それでも翳す手をシャーロットに向けたまま、落下する。

 シャーロットは首を横に振りながら、「いやいや」と涙を流して神力を放出。


 彼女はまだ、【女神オウロヴェリア】としての感情に追いつけていない。

 仙道せんどう紫月しづきという少女の歪んでしまった感情と、生まれたての女神の感情が、一つになれていない。

 ミオからすれば、それは最初で最後のチャンスだった。


「【無限永劫インフィニット・エタニティ】!全力でぇぇぇぇぇ!!」


 我儘な子供が暴れるように力を放出するシャーロット。

 その振りまかれた全ての力を、ミオは神化した能力で相殺する。

 シャーロットが超強力な個だとすれば、ミオの力はまさしく無限だ。


「もう……出てくるなぁぁぁぁ!!」


「――なっ!!」


 シャーロットが腕を振った。

 今まで翳していただけの力を、動かしたのだ。


 そしてそれは、感情の終結。


 空間が歪む。


「……キヒ……キヒヒ……」


 その視線に、歪む口端に。

 乗せられる感情に。


 ドサッ――と、ミオは地面に落ちた。

 歪んだ空間は、リードンセルク城を完全に消滅させ、そこは一面の荒れ地となっていた。


「――ぐっ。あの子は……」


 ミオは見上げる。

 宙に浮き、狂ったように笑う彼女を。

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