11−92【澪と紫月の巡り5】



みお紫月しづきの巡り5◇


 ボキン……と、【カラドボルグ】が折れた。

 押し負けたんだ、全力の【無限むげん】と【破壊はかい】を込めた一撃が。


 俺は折れた剣身部分を、伸縮自在の【シヴァ】で補う。

 【無限むげん】で強度を高め、形成も【カラドボルグ】と同じに。

 しかし二度目は出来ない。チートと言えど、武器能力は壊れると、再顕現に時間がかかるからだ。


「こりゃあこの城、もう再現無理かも……」


 何故なら、詳細データを取得する前に崩壊し始めたから。

 ウィズがいたら記録してくれてただろうけど。


「なんで……なんでそんな呑気に笑えるのよ……武邑たけむらみお!!」


 俺、笑ってんのか。

 そうか……だって、楽しいもんな。


「へっ、俺は内心、これを求めてたんだろうさ。本来の武邑たけむらみおは……異世界に転生して、能力をわんさか搭載の主人公。ヒロインが沢山出てきてハーレム系、一撃で敵を倒すチート……それが理想の異世界転生譚なんだろうさ!」


「それがなんなのよ!私の邪魔をしたくせに!!」


 シャーロットは神力を増幅させて俺に向ける。

 だけど、あの時の悪意の声の方が……なんだか強かった気もする。

 どうしてだ、直接会った方が弱いっていうのか?


「ぐっ!きちぃ〜……でもなぁ!俺は、君を怒ってなんかない!恨みもない!」


「そんな訳ない!!私は……お前を殺した!!そしてまた、殺す!!」


 もう話を聞く気はないんだろう。

 俺だって、説得できるとは思ってないさ。

 しかし力は拮抗どころか、完全に押し負けてる。

 それなら言葉を尽くすという……時間稼ぎも良いところだが。


(……準備は出来てるんだろ……シャロ!)


『……はい!』


 この第二謁見場に入る前、俺はある能力にシャロの意識を【譲渡じょうと】した。話をして、直接戦って、それで済むなら必要はないと高をくくっていたが。


(全力でこの場を相殺する!!城は完全に崩壊するだろうけど、その隙にシャロは意識をシャーロットに侵入させるんだ!)


『任せてください、わたくしは……彼女を』


 ブツン――と途切れる。

 【譲渡じょうと】が終わったんだ。

 だから後は……色々な所に振っていたリソースを……【零無れいぶ】に戻す!!


「もう殺されたくねぇよ!そして、殺させもしたくない!!俺が目指すのはもう……呑気な異世界スローライフなんだよぉぉぉぉぉ!!」


 【カラドボルグ】と【シヴァ】が一体化した大剣。

 その中に内包された全魔力を【焔煌えんこう】で爆発させる。


 そうする事で発生した散る魔力の火花一つ一つを、【無限むげん】で操作し。

 煌めく【極光きょっこう】の光と燃える【煉華れんげ】、地を走る【紫電しでん】に【電極でんきょく】。


 【滅壊めっかい】に対抗するには、全能力を賭すしかないと判断した。

 その中で、一番重要なのは【譲渡じょうと】……俺が、俺だけの能力を創り出す為のファクター。


「今持てる、最適解の能力を一つに!!」


 ベースは当然、【無限むげん】だ。

 俺の始まり、俺の全てを統合するにはうってつけに決まってる。


 名をつけるのなら……【無限永劫むげんえいごう】。


「限界を越えろ!!――【無限永劫インフィニット・エタニティ】!!」


 せめて、【滅壊めっかい】だけでも相殺してやる!

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